第136話  Wolgang Dauners Et Cetera 『Et Cetera 』 (1971)

今夜の一曲  Lady Blue

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<なんじゃこりゃ三題>

この世に、なんじゃこりゃ的なアルバムというのはあまたあるが、こいつをその筆頭にあげてもクレームを喰らうことはないでしょう(笑)。まずはウォルフガング・ダウナー(Wolfgang Dauner)のEt Cetera。

鳥肌立つファズ・サウンドからサイケな混沌に持ち込みつつ、冒頭のテーマに落ち着くオープナー。うさん臭い語りを切り裂いて汚れなきチャーチ・クワイヤーが浮き沈みする短いシークエンス。幽玄なメロトロンに繊細なアコギが絡む官能チューン。

B面の大曲は一聴するとエスニックなアプローチですが、延々とシタールが響いても意図してオリエンタルにはならず、ミステリアスな浮遊感のあるフリー・ジャズ的な展開。さらには、毒を喰らわば皿までのノリでエレクトロニクスが響きわたる無調の曲・・・


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セカンドの『Knirsch』(1972)となると、ジョン・ハイズマン(Jon Hiseman)とラリー・コリエル(Larry Coryell)を配して気を吐きました。ある意味、代表作とも言える出来とされてますが、彼らは、別に巨匠を迎えなくとも勝負できる、才覚のある非凡なユニットだったと思います。

Wolfgang Dauner - Synthesizer, Piano, Clavinet, Clavichord, Electronics, Percussion, Trumpet, Flute
Sigi Schwab - Guitar, Harp, Sitar, Banjo, Lute, Veena, Sarangi, Tambura, Psaltery, Flute, Balafon, Kalimba, Electronics
Eberhard Weber - Bass, Cello
Roland Wittich - Percussion
Fred Braceful - Percussion, Vocals, Bongos




さて、シグロ(Psiglo)を皮切りに、ウルグアイものを探していて見つけたウーゴとオズヴァルド(Hugo y Osvaldo)。最初に聞いたのが「Poema De Las Cinco Rosas」(5本の薔薇の詩?)こいつは妙ちくりんなボッサ・サイケデリアでハマりました。『La Bossa Nova de Hugo y Osvaldo』(1969)収録です。

浮遊感のあるドラムスに気だるいヴォーカルが乗ります。時折り交じるやる気のないコーラスが病的に素晴らしい。ぴろぴろしたオルガンがたなびいたかと思いきや、突如としてリズム・セクションを乗っ取ったりする。この病気ぶりは特筆ものだなぁ。


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ウーゴとオズヴァルドは、最初にどれを聴くかで印象はガラリ違ってきます。「Amaneciendo」などはソフト・ボッサの名曲ですね。ビートルズあり、バカラック(Burt Bacharach)ありで愉快なアルバムなんだけど、一笑に付せない魅力がありますよ。

ウーゴとオズヴァルドはウルグアイのビート・バンド、ロス・シェイカーズ(Los Shakaers)の中心メンバーでした。ビートルズに代表される60sポップスをお手本にした歌唱スタイルを模倣する中で、着実に実力を蓄えていったのです。

ビート・バンドから、独特の浮遊感を持ったサイケ&ソフト・ボッサ・デュオへ。確かに「Samba Doble」はキラーでした。でも、もっと驚いたのは、その後またスタイルをガラリ変えたことです。Opaでジャズやフュージョンに急接近。"Goldwings" "Magic Time"はスグレモノでしたよ。




最後に取り上げるのはジャン・ピエール・ミルーズ(Jean Pierre Mirouze)の手がけたOSTです。チープでカオスなサイケ映画『ル・マリアージュ・コレクティフ(集団結婚)』(Le Mariage Collectif)(フランス・デンマーク合作)(1971)がそれです。

ジャン・ピエール・ミルーズは60s後半のフランスの人気番組『ディム・ダム・ドム』(Dim Dam Dom)のショーのサウンド担当でした。映画の製作に当たったエルベ・ラマール(Hervé Lamarre)がディム・ダム・ドムのチームに音楽製作を依頼してきたことからミルーズに声がかかりました。


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ミルーズがオルガン奏者のジャン・ピエール・サバール(Jean-Pierre Sabar)を含めた演奏者をかき集め、1週間で9曲を書き上げました。ワールド・ミュージックを含めてジャンルレスな作曲に造詣の深かったミルーズにとっては、この程度の仕事はお茶の子さいさいだったのでしょう。

こいつが厄介なのは、7インチの数枚程度のアセテートだけしか存在しなかったことに尽きます。なぜテスト・プレスのみ?理由は単純。映画がアホすぎて興行的にこけたから。倒産した楽曲管理会社のゴミの山から2010年7月に見つかったアセテート。本アルバムは、そこからの盤起こしってのは偽らざる話らしい。


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フランスのこのジャンルはとにかくディープ。一時期、私はフランスのカルト領域にどっぷりでしたが、これはまだまだ大人しい部類でしょうか(笑)。


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第116話 Ramses 『La Leyla』 (1976) Germany

今夜の一曲  Devil Inside


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<その1>ラムゼス(Ramses)の巻


世の中にはよく似た名前のアーチストがたくさんいますね。バッハと言っても、ヨハン・セバスチャン・バッハ(Johann Sebastian Bach)ばかりじゃなく、J.S.の長男、対位法の巨匠ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ(Wilhelm Friedemann Bach)だっていますし。

ロックの世界でも、サーカスなどはメル・コリンズ(Mel Collins)のCircusもあれば、『One Plus...』のCirkusもありましたね。

私が随分長い間勘違いしていたのが、フォーカル・ポイントでした。Focal Point、Folkal Point,、あなたはどちらのサウンドがお好みでしょうか(笑)。

さて、今回取り上げるのは、これまたマイナーなグループではありますが、ラムゼス(ラムセス?)(Ramses)です。そして、次回取り上げる予定のアーチストがラマセス(Ramases)です。う~ん、なんのこっちゃ。あ、そう言えば、売れなかったスーパー・グループ、ラマタム(Ramatam)ってのもありました。


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さて、それでは、まずはラムゼス(Ramses)の出番です。当時、中古盤屋にカットアウト盤がごろごろしていてました。ジャケも素敵にダサい。なかなか食指が動かなかった。ダマされたと思って買ってみて、針を降ろして(死語)びっくり。食わず嫌いは損である。

ドイツで1976年にスカイ・レコード(Sky Records)からリリースされたラムゼスのデビュー作。日本ではポリドールから発売(邦題『アメリカン・ドリーム』)されています。帯のキャッチ・コピーは「ヨーロッパで群を抜く実力と人気。今、アメリカ、日本へ上陸開始」とある!う~む。

曲傾向はバラエティーに富むが、ジェネシス(Genesis)やキャメル(Camel)、ユーライア・ヒープ(Uriah Heep)、アイアン・バタフライ(Iron Butterfly)、イエス(Yes)と言った影響も指摘できる。


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ミーハー発言が許されるならば、ムーグ、ハモンドオルガン、ソリーナなどのヴィンテージ・キーボード群(1976年だから当たり前か・・・)が、これでもかとフィーチャーされるところが涙を誘う。

基本はブルージーなヘヴィ・ロックなのだが、そこにダイナミックなギターと壮大なキーボードの波が交互に現れては消え、ファンタジックなストーリーを紡ぎ始めると彼らの独壇場だ。時にファラオの呪いにかけられるような催眠的なアプローチもある。

そう、グループ名の由来は、古代エジプト第19王朝のファラオ、ラムセスⅡ世。1972年のグループ結成当時、グループ名はRamses IIだった。その後、スカイと契約を結ぶに当たって、グループ名をRamsesと変更している。


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このアルバムは1週間で集中的にレコーディングされた。プロデュースはコニー・プランク(Conny Plank)と、ジェーン(Jane)のプロデューサーだったクラウス・ヘス(Klaus Hess)が共同で作業している。

ドイツ本国のバンドと比較するならば、エロイ(Eloy)やジェーンを意識したサウンドとも言えるだろうか。

レコーディング・メンバーのうち、実はオリジナル・メンバーは二人だけ。Voのヘルベルト・ナート(Herbert Natho)と、Bのハンス・クリンカマー(Hans D. Klinkhammer)の二人がそれ。

バンドにとって転機になったのは、サウンドの要となったKeyのヴィンフリート(Winfried)とGのノルベルト(Norbert)のランホルスト(Langhorst)兄弟のバンド加入だった。そしてDsのラインハルト・シュローター(Reinhard Schröter)が脇を固める。


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バンドは1978年には同メンバーで同傾向の『Eternity Rise』をリリース。その後ヴォーカリストのヘルベルト・ナート(Herbert Natho)は、体調を崩してバンドを去ることになる。

ところで、ラムゼスのオリジナルのドイツ・スカイ盤(Sky002)とUS & Candaの※アンヌイ・コエプティス(Annuit Coeptis)盤(AC-1002)とでは、B面1曲目が違うのです。いずれの曲も演奏と曲のランニング・ライムは一緒。でも、タイトルと歌詞が違う。(※ラテン語でundertakings「仕事・事業」の意味か)

曲のタイトルは、原盤が「War」、US盤が「Noise」。Warはベトナム反戦歌でした。それで、アメリカ側のレコード会社に拒否られたとのこと。やむなく急きょ、歌詞をさし変えてレコーディングし直したというわけ。


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でも、反戦歌なんてザラな時代。何故・・・? 恐らく、彼らが米国の国内アーチストではなかったという事と、アメリカ市場に打って出ようとする新参者のバンドには、ふさわしくなかろう、という売り手側の判断もあったのでしょう。マネージメント側にとっては、金(かね)の前では「沈黙は金(きん)」なのでしょうか。

「War」の歌詞は、何の大義で戦うのかも知らされない兵士の虚無を歌い上げています。彼らは理由もわからず、単に「ビッグ・ボス」のために戦っている・・・という歌。

ところが、歌詞が差し替えられた「Noise」では、TVやラジオ、ジェット機などの都会の騒音に夜も眠れないと嘆き、悪臭や、目に余る大気と水質の汚染に恨み節。そして、静けさと平穏が欲しい・・・と歌っているのです。


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そしてコーラスの「War, everywhere, everywhere Look around man!」のWarが、Noiseにすげ替えられて、「Noise, everywhere, everywhere Look around man!」となっています。ベトナム・ネタは使えなくても、環境問題ネタで勝負。転んでもタダでは起きないというわけでしょうか。

さて、締めくくりに、このバンド名の発音について。日本ではラムゼス、或いはラムセスと呼称されるのが一般的です。英語では、Ramsesはファラオの名前にちなめば、ram-seez(ラムスィーズ)と発音されるようです。

何故、こんな話をしたのかと言うと、実は英国にロジャー・ディーン(Roger Dean)のジャケットで知られる、ラマゼス(Ramases)というバンドが存在するからです。さて、次回はその謎めいた強烈なカルト・バンド、ラマゼスについて取り上げてみたいと思います。




Hans D. Klinkhammer - bass
Norbert Langhorst - guitars
Winfried Langhorst - keyboards, vocals
Herbert Natho - vocals
Reinhard Schröter - drums, percussion

<第117話 ラマセスの巻 Ramases 『Space Hymns』 U.K. 1971へ>

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第115話 Frob 『Frob』 (1976) Germany

今夜の一曲  Spaces


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1976年に1000枚のみ、ひっそりとリリースされていたクラウト・ジャズ・ロック。プロデュースの甘さやアレンジの弱さをを味方につけたような、不思議感あふれる音像。まさに時代の異端児。セールス的に撃沈したとはいえ、闇に葬り去るにはあまりに惜しい。ソリッドなギターと陰りのあるオルガン・プレイが際立つ力作。

オープナーの「Wassertropfen」はいきなりキャッチー。ドイツ語のタイトルは「水のしずく」という意味らしい。灼け付くようなギターが主導する挨拶代わりの一曲。アイソトープ(Isotope)、時にマハビシュヌ(The Mahavishnu Orchestra)を思い出させるが、アルバム通すと、曲傾向は結構クロス・ジャンルだ。


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フロブ(Frob)の唯一作は1976年製ということで、多くの先達を教科書とした余裕も感じられる。初期ニュークリアス(Nucleus)やソフト・マシーン(Soft Machine)みたいな手触りもある。そうかと思えば健康優良児のキャメル(Camel)も好きだし、極悪非道のエンブリオ(Embryo)だって好きですよ、みたいなオーラを発していて面白おかしい。毒も薬もすべてが栄養ドリンクになる世界だね。

曲名を見ると英語・ドイツ語・フランス語が入り乱れている。その理由はメンバー構成にあると見た。バンドはドイツで1973年に結成されている。そこにフランス出身でドイツで音楽学校の教員をしていたフィリップ・カイヤ(Philippe Caillat)(g)が加わる。フロブ(Frob)のギグを見て参加を決めたとか。


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フィリップがバンドに加入したのが1975年。かくして、フランス勢1、ドイツ勢3の混成部隊。レコーディングはフィリップの友人のスタジオ(Studio Guy Simon)のある、南仏モンペリエで行われた。

1976年にプライベート・レーベル、ムジークラーデン(Musikladen)(英語ではMusic Storeの意味)から秘かに限定リリースされていた、いわゆる幻の作品。自分はGarden Of Delightsのカタログ#104で初めて知りました(2004年)。


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popsikeのオークションのセールス・トークを読んでみると、ハード・サイケ・フュージョンとか、プログ・インスト・インプロ大爆発(※)だなんてぶち上げてますね。アウト・オブ・フォーカス(Out Of Focus)やエレクトリック・サンドウィッチ(Electric Sandwich)のファンは見逃せない!とも。イセベルグ(Iceberg)風とかユッカ・トローネン(Jukka Tolonen)風と捉えるレコ評もありました。まぁ、色んなとらえ方があるもんだ。

※Hard Psychedelic Fusion, a Progressive Instrumental Improvisational Fireworks!

いずれにしても、このアルバムがもし、1971年製のピルツ(Piltz)盤だったなら、恐らくクラウトの超レアリティーだったんじゃないかという想像は面白いですよね。


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一言でいえば、フロブ(Frob)は、フィリップによるギター・フロントのジャズ・ロック。そこに絡むペーター・シュミッツ(Peter Schmits)のオルガンが、これまた捨てがたい。K.D.リヒター(K.D. Richter)のベースと、ピーター・マイフェルツ(Peter Meuffels)のドラムスのリズム陣も絶妙。サウンドがカンタベリーにたそがれると、もうそれだけで、このバンドの全てを許しちゃいますね。


Philippe Caillat / guitar
Peter Meuffels / drums
K.D. Richter / bass
Peter Schmits / keyboards


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第93話  Don "Sugarcane" Harris, Jean-Luc Ponty, Nipso Brantner & Michał Urbaniak  『New Violin Summit』 (1972) Germany

今夜の一曲  Valium


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◆以下の設問に答えよ◆

問題1;ロックのバンド編成にバイオリンが導入されるようになった背景は何か?
問題2;ロック界におけるバイオリンの巨匠(マエストロ)を挙げなさい。 
問題3;ロック界において、バイオリニストであることの長所は何か?
問題4;ロック界に初めてバイオリンを導入したのは誰か?
問題5;ロック史におけるイースト・オブ・エデンの業績を評価せよ。
(各20点 計100点)

<前編>

 まぜっ返すようですがね、正直なところ問題4の答は、あってないようなものでしょう(笑)。その理由は、ロックの範疇(はんちゅう)を定義づけることが難しいからです。音楽のジャンル分けなんて、そんなものでしょう。

 あるバンドがバイオリニストをメンバーに据えているからと言って、そのバンドが果たしてロック・バンドなのかどうか、グレイ・ゾーンの場合もあるでしょうし。それに、アルバム内の曲想にバラエティがあれば、ロックっぽい曲にバイオリン演奏がなくて、他ジャンル臭ぷんぷんの曲でバイオリン演奏が聴ける、といったケースもあるでしょう。

 これまで例に挙げてきたバイオリンの巨匠たちは、意図したわけではないにせよ、ほとんどが1970年代に活躍したアーチストでした。もっと時代を遡ってみると、ロック系のどんなアーチストがバイオリンを使ってきたのでしょうか。


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 第89話The Beatles『Revolver』(1966)で触れましたが、バッキングとしてのストリングスの導入はビートルズの「Yesterday」(1965)まで遡ります。でも、これはロックと言うより、あくまでも室内楽タッチのラヴ・バラード。

 「Eleanor Rigby」(1966)にしても、弦楽器が楽曲をリードするというより、サポートの意味合いが強かったですね。以降、ロック・バンドがオーケストラ・パートの一部としてストリングスを起用する例も、枚挙にいとまがありません。

 ただ、純粋なロックの文脈の中、積極的なリード楽器としては・・・と考えると先駆者が誰だったのかは気になるところです。

 当然、バイオリニストを起用した他ジャンルの音楽はいくらでもあります。たとえば、ケイジャン、ブルーグラス、ジャズ、カントリー、ブルース、ケルト音楽などなど。


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 ジャズにおけるバイオリンの歴史も長い長い。ロック人から見たジャズ・バイオリニスト筆頭の一角はジャン・リュック・ポンティ(Jean-Luc Ponty)あたりでしょうが、彼も60年代初期から息の長い活動をしていますよ。

 ジャズ・バイオリニストと言われて頭に浮かぶのは、やはりステファン・グラッペリ(Stephane Grappelli)あたり? 他にも、巨匠と言われたのが、スヴェン・アスムッセン(Svend Asmussen)、ジョー・ヴェヌーティ(Joe Venuti)、スタッフ・スミス(Stuff Smith)あたりかな。

 個人的に好きなのは、もっと新しいところでノエル・ポインター(Noel Pointer)だったりする。渋いところでは、ジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt)と共演したクラシック→ジャズ畑のミッシェル・ワーロップ(Michel Warlop)も忘れられません。

 デューク・エリントン(Dule Ellington)が企画した『Jazz Violin Session』(1963)がスポットを当てたのはStephane Grappelli、Svend Asmussen、そしてペット兼務のRay Nance。


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 そんな流れもあってか1966年9月、スイスのバーゼル公演を捉えた『Violin Summit』では、エリントンの「 It Don't Mean A Thing」が熱演されました。Stephane Grappelliを中心に、Stuff Smith、Svend Asmussen、Jean-Luc Pontyが一同に会した名演の興奮を、余すこと無く伝えてくれる名盤。ちなみにピアノはケニー・ドリュー(Kenny Drew)さま。

 忘れてはならないのが、ロック・サイドから語るに燦然と煌めく『New Violin Summit』。1971年11月、ドイツのベルリンにおける公演収録となっています。こわ~いメンバーが揃ってますよ。

 Jean Luc Ponty、Michal Urbaniak、Don "Sugarcane"”Harris、Nipso Brantnerの四人のバイオリニスト+Robert Wyatt(ds)、Terje Rypdal(g)、Neville Whitehead(b)、Wolfgang Dauner(key, SE)。

 ※ロバート・ワイアット「ステージではドラムがとんでもない所に置かれていて、バイオリンの音が聞こえなかった。悪夢だよ。」(Wrong Movements; A Robert Wyatt Historyより)


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 しっかし、考えてもみれば、ワイアットはソフツを脱けてアヴァン・サイケの真骨頂『End of an Ear』(1971)のリリース直後。同作にはホワイトヘッドも参加していたし、ダウナーはユーロ・アヴァン・サークルにどっぷり。このリズム陣+αをバックに四人のバイオリニストを配するクソ度胸ある人物って一体、何者・・・?

 しかもだよ、一見まともそうに見えるポンティですら、フリー・ジャズ作『Open Strings』(1971)をレコーディングしたばかり。こうした符牒を考え合わせれば、鬼が出るか、蛇が出るか、悪霊に取り憑かれるか、魔性の者に魅入られるかだ。

 ジャズ+サイケ+アヴァンギャルドの地獄の闇鍋がぐらぐら煮え立つような、そんなイベントに、そもそも誰が金を注ぎ込むのか。今では考えられないような悪しき良き時代だぜ。

 実は、仕掛け人はヨアヒム・ベレント(Joachim E. Brendt)。MPS-BASFレコードのプロデューサだった人。この男がイベントを企画し、一手に人選を担った。四人のバイオリニストに声をかけ、サポートのメンバー集めに狂走した。


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 そんな流れでワイアットに白羽の矢が立つ。リピダルにしても、透明感あふれる栄光のECM時代前夜だった。当時はまだまだ熱にうなされるように、サイケ発、ジャズ・ロックとフリー・ジャズの狭間を行き来していた。

 ベレントの気まぐれはワイアットらにとっては魅力的なオファーと映り、イベントに向けてメンバーたちを突き動かす。10月末から本番の11月7日にかけて、ワイアットはハリス、ダウナー、ホワイトヘッドらと、ドイツ短期ツアーに出る。たとえば、11月4日にはハリス、ダウナー、ホワイトヘッド、ワイアット、リピダル(フォルカー・クリーゲル?)らと怪しいギグに走っている。

 抜け目ないベレントのおかげで、こうして二枚組アルバムとしての記録が残っているんでしょう。何はともあれ、感謝・感謝ですね。

 さてさて、ジャズに限らず様々なカテゴリーで重宝されてきたバイオリンの音色。当然ポップスにも流用されていきます。その勢いに乗って、ロック・サイドでもバイオリニストに熱いラヴ・コールが送られるようになっていく。


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 テクノロジーの進化はバイオリンのエレクトリック化とも呼応し、それはとりもなおさずロックの大音響に対抗するための追い風になりました。同時に、PAに通す前にエフェクターをかますのも容易になり、フェイザー、ワウ、リヴァーブ、ファズ、ディストーションなどの音の加工のみならず、ボリューム・ペダルとも連動してメリハリのある音宇宙が出現したのです。

 そんなわけで(どんなわけで?)次回はいよいよ問題4<中編>に突入ですよ。期待しないで待って頂ければ、僥倖(ぎょうこう)に巡り会うかもですよ・・・(笑)


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Don 'Sugar Cane' Harris - Violin
Jean-Luc Ponty - Violin
Michal Urbaniak - Violin
Nipso Brantner - Violin
Neville Whitehead - Bass
Robert Wyatt - Drums
Terje Rypdal - Guitar
Wolfgang Dauner - Keyboards



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第61話  Marion Maerz 『I Go To Sleep』 (1967) Germany

今夜の一曲  I GoTo Sleep


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 レイ・デイヴィス(Ray Davies)のこの曲のカバーは数多くあれど、これは変わり種。ドイツのガールズ・ポップ・シンガーのマリオン・マヤッツ(Marion Maerz)によるカバー。

 それにしても、このプロデュースがラリー・ペイジ(Larry Page)だとは気づかなかった。なるほど、キンクス(The Kinks)・トロッグス(The Troggs)つながりで納得。しかも、ドイツのみならず、英国でもシングル・リリースされてたとはね。ドイツ人女性としては、初めてビート・クラブ(Radio Bremen's Beatclub)で歌ったんだって。




 マリオンは1964年ハノーヴァー(Hannover)で、ペプシ・コーラ(Pepsi Cola)主催のタレント・コンテストで発掘されました。4曲歌ってコンテストの結果は第二位だったものの、ポリドールからレコーディング契約をオファーされます。1965年、彼女は本名のマリオン・リターシャイト(Marion Litterscheid) 名義で、二枚のシングルをリリースしますが、不発に終わります。

 契約を失ったマリオンですが、作曲家クリスチャン・ブルーン(Christian Bruhn)と作詞家ギュンター・ローズ(Günter Loose)との出会いが縁で、ハンサ・レーベル(Hansa)との契約に成功。Marionの名前で「Er ist wieder da」をリリース。これが全独6位のヒットを記録し、トップ10に10週ランクされました。オーストリアではチャート第2位の大ヒット。


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 ポール・マッカートニーの「マリオンの曲が好きだ」と言うコメントが知られています。特に「Er ist wieder da」のB面の「Blau, blau, blau」がポールのお気に入りだったようです。

 しかし、マリオンの絶頂は余りに短く、その後は大きなヒットに恵まれません。そんな中、1967年にレイ・デイヴィスの書いた「I Go To Sleep」を英独でリリース。チャートを賑わすことはありませんでしたが、このシングルは今では立派なコレクターズ・アイテム。


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 その後も意欲的に活動を続けますが、マリオンは与えられた歌を歌わされることに嫌気がさしていたそうです。1970年代に入り、マリオンはMarion Maerzの名前で再起を図ります。

 そしてリリースされたのが、バート・バカラック(Burt Bacharach)&ハル・デイヴィッド(Hal David)のカバー集『Singt Burt Bacharach』(バート・バカラック・ソングブック)(1971)。マリオン・フリークにとってはマスト・アイテムでしょうが、さほど話題になりませんでした。


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 プロデューサの ジークフリート・ロッホ(Siegfried E. Loch)の選曲した全12曲、全てドイツ語の訳詞をつけて興味深い仕上がりです。著名な訳詞家のミヒャエル・クンツ(Michael Kunze)を招き、アレンジャーとして、クラウス・ドルディンガー(Klaus Doldinger)のコンボでジャズ・オルガンを弾いていたイングフリート・ホフマン(Ingfried Hoffmann)を起用します。

 バカラックの秀逸なメロに乗るマリオンの魅惑的な歌唱にとろけそうになります。が、やはりバカラックやディオンヌ・ワーウィック(Dionne Warwick)の個性に負けてる。当たり前だけど・・・


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 その後、マリオンは子育て(娘マーシャMashaは、後に歌手デビュー)のために音楽の世界から身を引きます。しかし、後のインタビューを読むと、その決断を決して後悔していないようです。

 マリオンは70年代末に復帰して「Es War Nur Der Sommerwind」(1978)をヒットさせました。歌手、そして女優のマリオンは、インタビューの時点(March 2003)では、ハンブルクでバセット・ハウンドのポール(Paul)と悠々自適の生活のようです。

 ドイツのガールズ・ポップはフランスやイタリアなどに比べて、あまり紹介されてこなかったので、色々とヤブをつついてみると、予想もしなかったような宝石が飛び出します。時には、ヤブをつついてヘビが出ることもありますが(笑)。


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 とりわけ面白いのは、1989年にベルリンの壁が打ち砕かれるまでの東ドイツ(GDR)の存在。当時のドイツ民主共和国(東ドイツ)がどのように西側を意識していたかがほの見えて、興味は尽きません。私が好きなのは、イナ・マーテル(Ina Martell)とか ブリギット・アーレンス(Brigitte Ahrens)。

 ブリギットがアミーガ(Amiga)に残した初期の三枚は、とりわけレアで東独ギャル・ポップ・シーンのコレクターズ・アイテムです。

 まぁ、このあたりを探っていくと、泥沼状態ですね(笑)

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<第60話 The Kinks - I Go To Sleep へ>

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第56話  Embryo 『Opal』 (1970) Germany

今夜の一曲  Opal


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 何と言ってもゴム風船ツキの変態ジャケですね。オークション見ると、「Perfect Baloon付き」のブツがある。半世紀ほど前の風船が「パーフェクト」であろうはずなかろうと思うのだが、マニア諸氏は、こういうセリフにメロメロである。

 伝え聞くに、1980年代はじめにして、既にこの愛すべき風船君は劣化してしなびたり、くっ付いたり割れてしまっていた。私は、見た事も触れたこともありません。まさに伝説です。

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 風船のないやつは、1990年以降、コンスタントに再発のレールに乗ります。友人はイタリアのMateriali Sonoli盤(1990)で手に入れたと言いますが、私はドイツのThink Progressive盤(1997)でようやく手に入れた新参者です。

 興味深いことに、実のところ風船はエンブリオの『オパール』だけじゃなかったらしい。バルーンの特典付きはオール(Ohr)創設期の以下の5作品と思われます。

OMM 56 000 - Floh De Cologne - Fließbandbabys Beat-Show (1970)
OMM 56 001 - Limbus 4 - Mandalas (1970)
OMM 56 002 - Bernd Witthüser - Lieder Von Vampiren, Nonnen Und Toten (1970)
OMM 56 003 - Embryo - Opal (1970)
OMM 56 004 - Tangerine Dream - Electronic Meditation (1970)

 ってことは、仕掛け人はレーベル側なわけね。「さあ、レーベル創設祭で盛り上げようぜっ!」ていうノリか。で、ゲートフォールド・カバーにスロットつけてバルーン付きにしたようだ。実にお馬鹿で楽しい話じゃござんせんか。

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 風船君のカラー・バリエーションはピンクだけじゃなかったとのこと。風船のデザインやテキストにもバリがあったのか、バルーンに「Macht Das Auf」(The Power Is On?)と書いてあったという話も漏れ聞こえてくる。

 いずれにせよ、Ohrのジャーマン・カルト・バンドというだけで卒倒する人もいるでしょう。プロデュースも、あのロルフ・ウルリッヒ・カイザー(Rolf-Ulrich Kaiser)だし。

 この『オパール』、レコードに針落としてみると(死語)、いかにもドロドロした混沌とした香りが危険すぎる。アシッド・ジャズ・ロックって言うのか、サイケデリック・プログ・ジャズって言うのか、どう表現したってあらゆる形容詞を拒否する勢いだ。

 デビュー盤『Opal』(1970)のタイトル曲が今夜の一曲。こいつは二日間で怒濤のようなレコーディングだったと言う。いい意味でも悪い意味でも、時代の空気を閉じ込めたフリーキーな味付け。ここには、後年のようなアフロ・エスニック色はない。

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 リーダーのクリスチャン・ブルヒャルトはマル・ウォルドロン(Mal Waldron)のカルテット出身。アモン・デュール(Amon Düül)の創設メンバーでもあり、フリークス・コミューン出身だった。

 音から漂う匂いはAmon Düül IIの『Phallus Dei』(1969)と限りなく双生児。それもそのはず、クリスチャンは同年Amon Düül IIと袂を分かっている。ここではLudwig Drumsを叩いている。

 加えて七変化する泥沼Gretch Guitarのジョン・ケリー(後にTen Years Afterへ)。変てこなブカブカSaxと Fluteにエドガー・ホフマン、Fender Bassにラルフ・フィッシャー。以上がバンド・メンバー。

 ゲスト陣も一癖も二癖ある連中ばかり。Violin(Motocello)が、後にBetweenに参加するロベルト・ディトレー、BassにAmon Düül IIのローター・マイト(ボーナス・トラックのみ参加)、BongosにPopol Vuhのホルガー・トルッチ、Vocalにベッツィ・アレー。思わずニヤリでしょうか。

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 それにしても、サイケ・フリークスたちのコミューンは、こうやって互いに日常的に出入りしつつ、底なし沼のジャムに陶酔していたのでしょうか。
 
 この奇天烈サウンドを快感に思うか、それとも居心地悪く感じるのかが、ノーマルとアブノーマルを分ける踏み絵でしょうか。突き抜ける爽快感を感じる御仁は、立派なアシッド・フリークだと太鼓判を押して差し上げます。

 今宵はやはり『Opal』(1970)『Phallus Dei』(1969)『Psychedelic Underground』(1969)、地獄の三連発で眠りにつきましょう。心地よい悪夢に包まれて快眠間違いなし。毒を食らわば皿までですよ。

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Christian Burchard / drums, vocals
Ralph Fischer / bass, vocals
Edgar Hofmann / saxophone, flute, percussion
John Kelly / guitar, vocals

+ plus
Bettsy Alleh / vocals
Roberto Detrée / motocello
Lothar Meid / bass
Holger Trülsch / bongos

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第47話  Exmagma 『Exmagma』 (1973) Germany

今夜の一曲  The First Tune


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 中古盤屋でよく見かけたのが、彼らのセカンド『GOLDBALL』(1974)。当時はあのジャケに引いてしまって、全く食指が動きませんでした。しかも、勝手にマグマ人脈のバンドだと勘違いしてました。

 カンタベリー風のオルガンやファズ・ベースが暴れたり、フリーキーなサックスやエレクトロニクスが渦巻くサイケ&エクスペリメンタル・ジャズ3人組。彼らのファースト『EXMAGMA』(1973)は、A面がスタジオ録音、B面がライブ録音になっています。

 キーボードのトーマス・バロフ(Thomas Balluff)はソウル・バンド出身。ベース、ギター、サックスのアンディ・ゴールドナー(Andy Goldner)はR&B出身。そして、デトロイト生まれで、50年代末にドイツに渡ったアフリカ系米国軍人ジャズ・ドラマー、フレッド・ブレイスフル(Fred Braceful)。

 フレッドは、鬼才ヴォルフガング・ダウナー(Wolfgang Dauner)とEt Ceteraを組み、『Fur』(Calig)(1969)、『Output』(ECM)(1970)、『The Call』(Schwann AMS Studio)(1971)などのコラボ作を残しています。エクスマグマのブレインはフレッドなのかもしれません。

 バンド結成に当たり、彼らは当初、マグマ(MAGMA)を名乗りました。けれども、フランスに同名バンドがいると知り、名前をエクスマグマ(EXMAGMA)に変えています。<参考;Progarchive>


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 エクスマグマのセカンド『GOLDBALL』は、フランスのマイナー・レーベルのユリュス(Urus)から、ひっそりとリリースされました。レコーディングはコニー・プランク(Conny Plank)のスタジオです。そんなわけで、コレクターたちの間では、当初、彼らがドイツ出身という発想は全くなく、まさに正体不明のバンドでした。

 ユリュスに作品を残した理由は、恐らく1973年のフランス・ツアーで聴衆のウケがよかったので、二年間にわたって同国に滞在していたことに関連しているのでしょう。

 ちなみに、ユリュス(Urus)/ディジュンクタ(Disjuncta)は、1972年から1976年までの短期間に存在したフランスのレーベルです。ディジュンクタはエルドン(Heldon)のリシャール・ピナス(Richard Pinhas)によって設立され、その後継レーベルがユリュスというわけです。ピナスがコブラ・レーベル(Cobra)と契約することに伴って、ユリュスは閉鎖されます。

 ユリュス/ディジュンクタのカタログには、スキゾー(Schizo)、エルドン(Heldon)、アラン・ルノー(Alain Renaud)、ザオ(Zao)、NYLらの名前が並んでいます。レーベル側のとらえ方としては、エクスマグマを「ジャジーな実験バンド」と捉えていたことがわかりますね。


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 1975年、彼らのサード『EXMAGMA 3』が企画されます。けれども、二枚組のコンセプトはユリュス側の都合によって、シングルLPに削られてしまいます。その方針は、バンドにとって受け入れがたいものでした。結果、お蔵入り。2006年にリリースされるまでは、その存在が人に知られる事はありませんでした。

 結成当時、農家の牛小屋でジャムってバンド構想を深めたそうです。日夜、牛小屋から聞こえたきたのがあの音だった・・・なんて恐いですね。地元の方は、一体どう感じていたのでしょうか。(笑)


Thomas Balluff / organ, electric piano, clavinett-c effects
Fred Braceful / sonor drums, percussion extraordinaire
Andy Goldner / fretless electric bass, electric guitar, alto sax, tape recorder


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ジャンル : 音楽

第34話  Brainstorm 『Second Smile』 (1973) Germany

今夜の一曲  Hirnwind


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 『リザード』期のクリムゾンの雰囲気を漂わせるオープニング曲「ヒルンヴィント」。歪んだ音を響かせるオルガンのドローンからSEを差し挟み、アシッド・フォークかと思わせながら『YS』みたいな金属質のインタープレイになだれ込む。

 デビュー作『スマイル・ア・ホワイル』(Smile A While)(1972)に比べると、成熟度を増した2nd『セカンド・スマイル』(Second Smile)は、彼らのスタジオ録音最終作となりました。

 カンタベリー臭やザッパのキング・コング臭(『Uncle Meat』1969)があったりと、大御所たちの影響はそこかしこですが、これがまた捨てがたい。

 キーマンはSax & Guitarを担当するオーラント・シェーファー(Roland Schaeffer)ですが、Flute & Bassのライナー・ボーデンゾーン(Rainer Bodensohn)、Keyboardのエディ・フォン・オヴァーハイト(Eddy von Overheidt)なくして成り立たない音の洪水が快感すぎる。

 公正を期した発言をさせて頂ければですね、"Marilyn Monroe" やボーナス曲は、聴いてもあまり居心地良くありません。後者 "You're the One" は前作の "You Are What's Gonna Make It Last" の焼き直しですが、LP未収という価値以外に意味がない気がします。でも、それを割り引いて余りあるプログ・ジャズの名盤と申せましょう。

 このアルバム、Garden Of Delightsの玉石混交のカタログの中では、かなり面白い。実のところ、本作の存在について知ったのは、ガーデン・オブ・ディライツが精力的にKrautrockを発掘し始めた2000年になってからでした。

 もともと彼らのルーツは、オーラント、エディ、ヨアヒム・コインツァー(Joachim Koinzer)の三人が所属したスクールバンドです。

  それがファッション・ピンク(FASHION PINK)に発展します。バンドの名前から想像できるように、ピンク・フロイド臭のあるブルース・ロックがレパートリーでした。

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 彼らはインターコートINTERCORD傘下にあるプログレ専門のシュピゲライ(SPIEGELEI)とアルバム二枚だけの契約を結びます。バンド名をファッション・プリック(FASHION PRICK)にしたかったのですが却下され、レーベル側の意向でブレインストーム(BRAINSTORM)に決定しました。

 そこで発売されたおぞましいジャケット(?)のデビュー作(1972)は泣かず飛ばず。ちなみにベーシストがいなかったため、ベース・パートはオーラントと、ライナーが埋めています。

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 そのベーシストの不在を補って、第二作をリリース(1973)。新加入のベーシストは元ジャッズ・ギャラリー(JUD'S GALLERY)のエノー・ダノーフ(Enno Dernov)でした。

 『Second Smile』リリース直後の野外コンサートの音源(Bremen's College of Technology)がCD化(Radio Bremen)されています(『Bremen 1973』)。その後ドラマーが入れ替わってからのラジオ放送音源(SWF)も発掘されました(『Last Smile』)。

 しかしその後、シュピゲライとの契約更改はなされず、主要メンバーが次々と脱退。バンドも消滅の運命を辿りました。オーラントはグルグル(Guru Guru)へ。『Tango Fango』(1976)以降のアルバムに、その名前がクレジットされています。

 オーラントは、それ以外にもアネクソス・クァム(Annexus Quam)『Osmose』(1970)、ブルゼルマシーヌ(Bröselmaschine)の『Peter Bursch und die Bröselmaschine』(1975)、エンブリオ(Embryo)の『Turn Peace』(1989)『Ibn Battuta』(1994)と言ったアルバムに貢献しています。

 何が主流で何が傍流か、よくわからないクラウトロック・シーン。まだまだ私の知らない世界が潜んでいそうでワクワクします(笑)。

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Rainer Bodensohn / flutes, bass
Eddy Von Overheidt / organ, e-piano, clavinette, lead vocals
Enno Dernov / Fenderbass, guitar
Roland Schaeffer / soprano and tenor sax, clarinet, acoustic and electric guitars, vocals, double-bass
Joachim Koinzer / drums, Transylvanian fold-up-conga




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第1話 Prosper 『Broken Door』 (1975) Germany

今夜の一曲 Broken Door


Prosper - Broken Door


 限定500枚で自主制作されたと言うProsper。ドイツ発1975年のjazz rock作品だが、これが侮れない。mellotronの響きが哀愁を誘います。

 Garden Of Delightsの再発シリーズで、その存在を知ったカルト・バンド。クラウト・ロックは奥が深いことを思い知った一枚・・・

Evert Brettschneider / guitars
Fritz A. Fey / guitars, vocals
Ernst Müller / keyboards
Mathias Geisen / bass
Friedhelm Misiejuk / drums, percussion











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Author:ticca
 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

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