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第90話  U.K. 『Danger Money』 (1979) U.K.

今夜の一曲 Rendezvous 6:02


90 (5)


◆以下の設問に答えよ◆

問題1;ロックのバンド編成にバイオリンが導入されるようになった背景は何か?
問題2;ロック界におけるバイオリンの巨匠(マエストロ)を挙げなさい。 
問題3;ロック界において、バイオリニストであることの長所は何か?
問題4;ロック界に初めてバイオリンを導入したのは誰か?
問題5;ロック史におけるイースト・オブ・エデンの業績を評価せよ。
(各20点 計100点)

 1979年6月、UKの初来日コンサートに、私は脳天を打ち抜かれた。彼らは既にトリオ編成になっていたにも関わらず、その圧倒的な音の洪水はダイナミックそのもの。三人の強烈なアンサンブルは無敵艦隊の勢い。中でもエディ・ジョブソンは、キーボードとバイオリンを持ち替え、聴衆へのアピール度は200%だった。

 彼は既に、カーヴド・エア(Curved Air)、ロキシー・ミュージック(Roxy Music)、マザーズ・オブ・インヴェンション(The Mothers of Invention)等におけるパフォーマンスで、その実力は実証済み。ライブで彼の奏でる奔流のような音はイマジナティヴで、存在感に満ちていた。同時にバイオリンの魅力を真の意味で体感したのも、これが初めてだった。

90 (2)


 実際に私が音楽メディア上(ようするにレコード)で初めてロック・バイオリニストに接したのは、デヴィッド・クロス(David Cross)、続いてダリル・ウェイ(Darryl Way)だった。その直後にエディ・ジョブソン(Eddie Jobson)の洗礼を受ける。

 何しろ私は、同時代的にロックを聞くラッキーを知らない世代。キング・クリムゾンの『太陽と戦慄』(Larks' Tongues In Aspic)(1973)も、UKの『憂国の四士』(UK)(1978)も、カーヴド・エアの『ファンタスマゴリア』(Phantasmagoria)(1972)も、ダリル・ウェイズ・ウルフの『サチュレーション・ポイント(飽和点)』(Saturation Point)(1973)も、ウェイのソロ作『コンサート・フォア・エレクトリック・バイオリン』(Concerto For Electric Violin)(1978)も、時系列を無視してほぼ同時に聞いている。

 ロック・バンドの楽器編成にバイオリンが含まれていない時代からロックを追っていれば、ロック・バイオリンの登場には、地動説が天動説にとって替わるような革命的な感慨もあったのかも(笑)。


90 (6)


 時間の前後の脈絡のないところでロック・バイオリンを聞いてきた私には、バイオリンの存在はあまりに自然。時間の軸でなく、個人や環境の必然とか偶然という、いわば運命的な出会いに頼っていたら、まともな評価はできませんね。

 思い返してみると、エディとダリルとクロスあたりが私にとっての「バイオリニスト御三家」だったのかもしれません。
※御三家;江戸時代、徳川将軍家を補佐する最有力の「尾張・紀伊・水戸」の三家 (>_<)

 やがて、多くのバイオリニストと赤い糸で結ばれます(笑)。マハヴィシュヌ・オーケストラ(The Mahavishnu Orchestra)のジェリー・グッドマン(Jerry Goodman)とジャン・リュック・ポンティ(Jean-Luc Ponty)。グッドマンとくれば、フロック(The Flock)を忘れてはいけません。


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 ヴァン・ダー・グラフ・ジェネレーター(Van Der Graaf Generator)の暗黒の沼に引きずり込まれたのはグレアム・スミス(Graham Smith)でした。スミスとくれば、ストリング・ドリヴン・シング(String Driven Thing)ですね。また、ジェントル・ジャイアント(Gentle Giant)を語るならレイ・シャルマン(Ray Shulman)。

 ホークウィンド(Hawkwind)のサイモン・ハウス(Simon House)という大御所を忘れたら百叩きの刑でしょう。彼なくしてハイ・タイド(High Tide)やサード・イヤー・バンド(Third Ear Band)は語れません。また、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)の『Stage』(1978)『Lodger』(ロジャー・間借人)(1979)、ジャパン(Japan)の『Tin Drum』(錻力の太鼓)(1981)にも力を貸しています。

 スティーヴ・ハーレイ&コックニー・レベル(Steve Harley & Cockney Rebel)のオリジナル・メンバーにはジョン・クロッカー(John Crocker)が名を連ねています。彼の存在なくして「悲しみのセバスチャン(Sebastian)」「ジュディ・ティーン(Judy Teen)」「ミスター・ソフト(Mr. Soft)」「メイク・ミー・スマイル(Make Me Smile - Come Up and See Me)」のような名曲は生まれなかったでしょう。


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 ソフト・マシーンならリック・サンダース(Ric Sanders)。彼は後に。ジョン・エサリッジ(John Etheridge)と組んだセカンド・ヴィジョン(2nd Vision)の『First Steps』(1980)、デイヴィッド・スワォブリック(David Swarbrick)無きあとのフェアポート・コンヴェンション(Fairport Convention)にとっても欠かせない存在になります。スティーライ・スパン(Steeleye Span)にはティム・ハート(Tim Hart)の名演が光ってましたね。

 意外なところでは、ジェスロ・タル(Jethro Tull)の代表作の一つ『Thick As A Brick』(1972)でも、イアン・アンダーソン(Ian Anderson)自らが、バイオリンの腕前を披露していました。ゴング(Gong)の『Shamal』(砂の迷宮)(1976)にはジョルジュ・ピンチェフスキー(Jorge Pinchevsky)が助っ人。

 米国のディキシー・ドレッグス(Dixie Dregs)のアレン・スローン(Allen Sloan, M.D)や、英国のディキシー・ミッドナイト・ランナーズ(Dexy's Midnight Runners)の三人のバイオリニスト(Helen O'Hara / Steve Brennan / Roger MacDuff )も異色のプレイが際だってました。


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 英米以外に目を向けると、これまたマニア心をくすぐるアーチストが目白押し。フランスならマグマ(Magma)とのコラボや、ザオ(Zao)、ゴング(Pierre Moerlen's Gong)に貢献したディディエ・ロックウッド(Didier Lockwood)。エマニュエル・ブーズ(Emmanuel Booz)の傑作『Dans Quel État J'erre』(彷徨の歌)(1979)にはロックウッドに加え、ピエール・ブランシャール(Pierre Blanchard)が強力に協力(日本語って美しいなぁ!)。

 トランジット・エクスプレス(Trransit Express)と言えば、デビッド・ローズ(David Rose)。ズーの『Zoo』(1969)や、ヴァンゲリス(Vangelis)の『The Dragon』(1971)『Hypothesis』(1971)を盛り立てたミシェル・リポーシュ(Michel Ripoche)。アトール(Atoll)の『夢魔』(L'Araignée-Mal)(1975)でお馴染み、リシャール・オベール(Richard Aubert)など。

 プラネット・ゴング(Planet Gong)には、英国人グラハム・クラーク(Graham Clark)の名前があります。


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 イタリアならPFMでお馴染み、マウロ・パガーニ(Mauro Pagani)とか、ルチオ・ファッブリ(Lucio Fabbri)が筆頭。アルティ・エ・メスティエリ(Arti + Mestieri)とくればジョヴァンニ・ヴィリアール(Giovanni Vigliar)ですね。

 さて、この調子で他の国々にスポットライトを当てていくと、夜が明けてしまいます(笑)。

 バイオリン以外にも、ヴィオラならヴェルヴェット・アンダーグラウンド(Velvet Underground)のジョン・ケール(John Cale)とか、キャラヴァン(Caravan)のジェフ・リチャードソン(Geoff Richardson)の名前がすぐに浮かんできます。これはこれで、結構面白いテーマになりますね。


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 さて、この設問は正答率100%だったようなので、そろそろ次の設問に移りましょうか。


Eddie Jobson - keyboards, electric violin
John Wetton - lead vocals, bass, guitar
Terry Bozzio - drums, percussion





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テーマ : プログレ
ジャンル : 音楽

第89話  The Beatles  『Revolver』 (1966) U.K.

今夜の一曲 Eleanor Rigby


89 (7)


◆以下の設問に答えよ◆

問題1;ロックのバンド編成にバイオリンが導入されるようになった背景は何か?
問題2;ロック界におけるバイオリンの巨匠(マエストロ)を挙げなさい。 
問題3;ロック界において、バイオリニストであることの長所は何か?
問題4;ロック界に初めてバイオリンを導入したのは誰か?
問題5;ロック史におけるイースト・オブ・エデンの業績を評価せよ。
(各20点 計100点)


 ロック・バンドの編成は、ベース・ドラムス・ギター・ピアノというのが初期のロックの定番でした。やがて、サウンドの手詰まり感を解消しようとして、音のフロンティアを開拓する動きが生まれます。他ジャンル、他文化圏の楽器を積極的に登用しようとする動きがそれです。

 たとえばそれは、ジャズやクラシックのカテゴリーに分類される楽器や奏法であったり、南米・アフリカ・西アジアの打楽器や弦楽器などの民族楽器であったりします。ハープシコードやティンバレス、シタール、タブラと言った楽器がその代表例でしょうか。

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 こうした流れはビートルズ・サウンドを追ってみると一目瞭然でしょう。これまでもビートルズは『Help!』(四人はアイドル)(Jul. 1965)の「悲しみはぶっとばせ」(You've Got To Hide Your Love Away)で、セッション・ミュージシャンを起用しています。フルーティストのジョニー・スコット(Johnnie Scott)でした。

 当然ながら、自然に弦楽器への需要も生まれました。ポール・マッカートニー(Paul McCartney)が14歳の時に失った亡き母メアリーに捧げた「イエスタデイ」(Yesterday)が初出です。ジョージ・マーティン(George Martin)は、Violin2本、Viola1本、Cello1本の弦楽四重奏のスコアを書き、この曲は爆発的なヒットを記録しました。

 『Rubber Soul』(Dec.1965)でその動きは深化し、「Norwegian Wood」(ノルウェーの森)にはシタールが導入されます。弦楽器だけでなく、故郷リヴァプールへの思いを綴った「In My Life」ではジョージ・マーティンによるバロック調のピアノ・ソロが聴けます。

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 『Revolver』(Aug.1966)においてこうしたチャレンジは加速し、「Elearnor Rigby」でジョージ・マーティンはViolin4本、Viola2本、Cello2本の弦楽八重奏のスコアを用意しました。二番煎じ感を回避するため、レガートな「Yeserday」に対し、スタッカートな緊迫ムードで曲想を描きあげました。

 ジョージ・マーティンが自伝『All You Need Is Ears』で語っているように「Eleanor Rigby」と「Tomorrow Never Knows」の二曲が、その後のビートルズ・サウンドを方向づけました。折しも呼応するように、フラワー・パワーやヒッピー・ムーヴメントが胎動し始めていました。

 他ジャンルとの融合は『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』(Jun.1967)でピークに達します。一例を挙げると、ボードヴィル調の「When I'm Sixty-Four」ではクラシック畑のミュージシャンを起用し、クラリネット2本、バスクラ1本をオーバーダブ。

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 ※ジョージ・マーティンは自伝の中で「三人のクラリネット奏者はいかにも場違いな感じで、まるでウェムブレー・サッカー・スタジアムの真ん中で、レフリーとラインマンだけがポツンと立っているような光景だった」と語っています。

 シングル曲「Penny Lane」(Feb.1967)は、コンサートでバッハ(Johann Sebastian Bach)のブランデンブルク協奏曲(The Brandenburg Concertos)を聴いたポール・マッカートニーが、ピッコロ・トランペットの音色をリクエスト。かくしてロンドン交響楽団(LSO)のデヴィッド・メイソン(David Mason)が駆り出されます。

 ※メイソンはその他にも「A Day in the Life」「Magical Mystery Tour」「All You Need Is Love」「It's All Too Much」にも貢献しています。

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 「Within You Without You」では、インド音楽協会のメンバーがシタールやタブラ、タンブーラ、スワマンダルといった楽器でバッキングを担当。インドの弦楽器ディルルーバのイメージでミステリアスにスラーするストリングスのスコアも書かれました。

 「Being for the Benefit of Mr. Kite!」ではウーリッツァとハモンドをぶつけたり、古いヴィクトリア朝のスチーム・オルガンのレコード(Souza / The Washington Post March?)を録音したテープを切り刻んで放り投げては適当につなぎ合わせ、サーカス風の音響効果を得ています。

 「A Day in the Life」では42人のオケを起用します(予算の関係で90人のフルオケ案は却下)。しかもフリーキーにクレッシェンドした後、フォルテッシモで突如としてカット・アウト。その後に続くグランド・ピアノ2台+アップライト・ピアノ1台のE majorコードの打鍵を重ねて作った大団円。

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 極めつけはB面最後に刻まれたレコード針の遊び溝(ランナウト・グルーヴ)。ヤム・タム・ティム・ティンみたいな戯れ言が刻まれて逆回転をかけられる。おまけにポールの「犬にしか聴こえない音を入れよう」という素っ頓狂な発案にジョージ・マーティンは「2万Hzくらいの音を入れてみよう」と同意。警察犬用の犬笛の音をレコーディングします。

 さて、本題に戻りましょう。ビートルズの場合、「Yesterday」や「Eleanor Rigby」の段階では、弦楽器はバッキングのための適用にとどまっていました。しかし、これが先鞭をつける形で、様々なチャレンジに花が咲くことになります。

 ビートルズの例からわかるように、ロックというのは貪欲な胃袋の持ち主です。新たな実験に燃えたり、通常の編成に他ジャンルと見なされる楽器を次々に導入していったのは、どん欲に守備範囲を広げようとするロックの習性そのものだったのかもしれません。

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 確かに企画倒れに終わったり、実験のための実験を重ねた末に炎上することも少なくなかったでしょう。けれども、失敗を恐れぬしたたかさが、こうしてロックを進化させてきたのです。

 バイオリンに対するニーズもこうした流れの中にあります。先に述べた果敢なチャレンジに勇を奮って、バイオリンはエレキ・ギターや電子鍵盤類、管楽器と肩を並べるリード楽器として運用されるようになります。そのために必要な熟成の時間はさほど必要ではありませんでした。

 それでは皆さんには合格解答を示していただきましたので、問題2に進みましょうか(笑)。



Paul McCartney – Lead and harmony vocals
John Lennon – Harmony vocal
George Harrison – Harmony vocal
Tony Gilbert – Violin
Sidney Sax – Violin
John Sharpe – Violin
Juergen Hess – Violin
Stephen Shingles – Viola
John Underwood – Viola
Derek Simpson – Cello
Norman Jones – Cello
Peter Halling - Cello

テーマ : 洋楽ロック
ジャンル : 音楽

第88話  East Of Eden 『Mercator Projected』 (1969) U.K.

今夜の一曲 Bathers 「水浴する人びと」


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 ジャン・リュック・ポンティ(Jean-Luc Ponty)のパリ公演を目の当たりにして、胸を射抜かれるような感銘を受けた男がここにいる。イースト・オブ・エデンの立役者デイヴ・アーバス(Dave Arbus)だ。

 East Of Edenの結成は1967年に遡る。英国西部の港湾都市ブリストル(Bristol)出身の彼らは、1968年にロンドンに拠点を移し、デッカ(Decca)傘下のデラム・レーベル(Deram)と契約を取りつける。その過程においてグループの方向性を決定づけたのが、ジャン・リュック・ポンティとの出会いだった。

 1969年『Mercator Projected』(世界の投影)をリリース。アーバスの理想の音のイメージが形になったデビュー作であった。Mercator Projectionとは「メルカトル図法」を意味し、それを図案化したデビッド・ウェッジベリー(David Wedgbury)の秀逸なアートワークが素晴らしい。

 裏ジャケに目を転じると、古代エジプト風の装束に身を包んだメンバーが写真に収まっていて、これがまた怪しすぎる。彼らのサウンドを敢えてビジュアル化すれば、まぁこんな感じなのか。そのサウンドは、いわゆるサイケデリック・ロックに分類される。


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 でも、本質的にはブルース・ベースの食材をオリエンタル風味に仕上げたって感じでしょう。ただ、あくまでも西欧から見たオリエンタル趣味なので、ちょっとフィルターかかってますね。もっと限定的に中東フレーバーと言ってもよさそう。

 これがSE、サウンド・コラージュ、サイケ定番のアレンジや音像処理により、ここにロック・サイケデリアの花がぽつんと咲いた。サウンド・イメージとしてはジャズやブルース、ヘヴィ・ロックの形を借りたサイケ・ロックという表現も当たらずとも遠からずや。

 今夜の一曲「Bathers」(水浴する人びと)は、ニコルソン(Geoff Nicholson)のメランコリックなヴォーカルが魅力の一つですが、ドリーミーなヴァイオリンや、波打つようなオルガンの起伏がエキゾチック。アーバスはこのアルバムでマルチ・インストゥルメンタリストの才を存分に発揮。担当楽器は、ヴァイオリン、フルート、バグパイプ、リコーダー、サックスなどと実に絵になっています。

 アーバスのクレジットにはPerformer(Lavatory)というのもある。これって、ひょっとしてアレでしょうか。曲間で水洗トイレの「ジャー」って音のSEが挿入される・・・アーバス氏が厠(かわや)で何やらコトを為したのでしょうか。これも中東の風吹く、神聖なる秘儀の一つかもしれません。


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 スティーヴ・ヨーク(b)の活動をよーく(-_-;)調べて見るとGraham Bond Organization, Manfred Mann Chapter Three, Vinegar Joe などなど。

 East Of Edenの『世界の投影』は攻撃的な曲でさえ、アグレッシヴさとは無縁の虚脱に支配されています。目を引くようなインタープレイがあるわけではありません。なのに、アルバム全体を包む尋常ならぬフニャけた空気は、他の追随を許さぬ存在感です。

 翌1970年、セカンド・アルバムに当たる『Snafu』(錯乱)がリリースされます。アーバス、ケインズ、ニコルソンの布陣はそのままながら、ベーシストとドラマーがあっさり交代。サウンドはアヴァン・ジャズに転身。ミンガス(Charles Mingus)を素材にしたり、テープ・ループ回したり、新しいチャレンジに身を焦がした記録が、英国ロック史の一隅を彩る。

 ジェフ・ブリットン(ds)が、後にPaul McCartneyの『Venus And Mars』(1975)でドラムスを叩いていることを知ってぶ(り)っ飛んだ(-_-;)。しかも三曲のみ。あっという間にWingsを脱退してJoe Englishが後任を務めている。


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 彼らは「Jig-A-Jig」を1971年4月にシングル・リリース。実はこれがUKチャートの7位に浮上。ただし、その内容はサイケ・ファンが見て見ぬふりしたくなるアーシーで素敵すぎるトラッド。

 猫の目のように変わりゆくEast Of Edenのサウンド。一体、彼らがやりたかった事は何でしょうか。この後、ケインズもニコルソンもグループを脱退。サウンドを大きく変えたサード以降はEMI傘下のハーヴェスト(Harvest)に移籍してのリリース。しかし、人気に火がつくことはなく、ついにはアーバスも背を向ける・・・

 その後East Of Edenは、比較的人気のあったヨーロッパに活動の場を移し、リリースもヨーロッパ発とします。1996年には再編されて話題となったようですが、往年の輝きは望むべくもありません。時代の申し子は、その時代その時代で気を吐いてこそ、ひときわ輝きを見せるのですから。


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Dave Arbus /Electric violin, Flute, Bagpipe, Recorders, Saxophones
Ron Caines / Soprano & Alto saxophones (acoustic & amplified), Organ, Vocals
Dave Dufont / Percussions
Geoff Nicholson / Guitars, Vocals
Steve York / Bass guitar, Harmonica, Indian thumb piano

テーマ : サイケデリック
ジャンル : 音楽

第87話  Rod Stewart 『Fly Me to the Moon』 (2010) U.K.

今夜の一曲 My Foolish Heart(愚かなり我が心)


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 ロッド・スチュワートの歌で「My Foolish Heart」を紹介するのは邪道かもしれません。しかし彼の歌は実に渋くて味わい深い。この『Fly Me To The Moon - The Great American Songbook Volume V』収録時、彼は65歳だったんだ。

 この曲は1949年の同名のアメリカ映画『愚かなり我が心』の主題歌です。監督はマーク・ロブソン(Mark Robson)、主演が時の銀幕スターであるスーザン・ヘイワード(Susan Hayward)とダナ・アンドリュース(Dana Andrews)でした。

 映画のあらすじはネタバレ・サイトも一杯あるので、そちらをご覧頂くこととして、このテーマ曲について少々・・・


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 第86話で、ビル・エヴァンス(Bill Evans Trio)のヴィレッジ・バンガード(Village Vanguard)における好演を紹介しましたが、実はこの曲を楽しむにはオリジナルの歌詞がカギになります。

 恋の予感に打ち震える女心。その予感が本物なのかどうか悩む女性。迷う彼女の心をよそに、いつものように白く輝く夜の月。この恋に懸けていいのか、それとも・・・。

 「大人ですね~」などと茶化してはいけません。映画の中のヒロインであるエロイーズ(Eloise)にとっては、火傷ではすまない恋の駆け引きですから。

 原曲は作詞がネッド・ワシントン(Ned Washington)、作曲がビクター・ヤング(Victor Young)となっています。「My Foolish Heart」は、映画中でマーサ・ミアーズ(Martha Mears)によって歌われました。翌1950年になると、数多くのカバー曲が雨後のタケノコ状態。


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 1950年2月、ゴードン・ジェンキンス(Gordon Jenkins)がビルボード(US Billboard)第3位。3月にはビリー・エクスタイン(Billy Eckstine)が第6位、5月にはマーガレット・ホワイティング(Margaret Whiting)が第17位。前に続けとばかりにカバー曲が怒濤のごとし。

 大ヒットの花火が連続して打ち上がり、この曲はスタンダードのタイトルを得ます。かくして「My Foolish Heart」は一世を風靡。ビル・エヴァンスの名演も『Waltz For Debby』(1961)のオープニングを飾ります。

 スタンダード曲の楽しみは、それをカバーするアーチストの歌唱を比べられる点です。オリジナルはオリジナルで尊重しつつ、お気に入りのアーチストを新たに見つけ出す楽しみは宝探しに似てわくわくします。また自分の好きなアーチストがそれをカバーしていれば、そのセンスを楽しむこともできます。

 この曲に限っても、名唱名演は星の数。原曲の面影をとどめていない名作(迷作)、快作(怪作)まで多々。私的にはキース・ジャレット、カーメン・マックレエ、メル・トーメあたりはハズせませんね。


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 それ以外にもトニー・ベネット、ジョン・マクラフリン、ロバータ・フラック、オスカー・ピーターソン、レスリー・ゴーア、レイ・ブラウン、カーリー・サイモン、ロン・カーター、アストラッド・ジルベルト、スタン・ゲッツ、ナラ・レオン、エセル・エニス・・・

 さて、J.D.サリンジャー(Jerome David Salinger)は、自著『九つの物語』(Nine Stories)収録の短編(Uncle Wiggily in Connecticut)の映画化に伴い、その映画版『My Foolish Heart』の出来ばえに相当落胆したようです。自分の意図とは別の解釈がなされた事に傷ついたとか。以後、自作の映画化をかたくなに拒むようになります。

 映画は忘れ去れた存在とされながらも、逆に高評価を与える人もいます。興味ある方はウェブ上で探してみるのも一興でしょう。


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 最後になりましたが、ロッド・スチュワートの「My Foolish Heart」。歌詞が男性バージョンになっています。とは言ってもこれは難しい話ではなく、オリジナルの"His lips"を"Her lips"に差し替えて歌っただけのことです。

 かつてロッドは、ヒョウ柄服のブロンド・ビューティに迫られるインパクトあるアルバム・ジャケットで勝負に打って出ました。そんな彼が重ねた齢を活かし、スタンダードの名曲をしみじみと歌い上げていきます。
※『Blondes Have More Fun』(スーパースターはブロンドがお好き)(1978)

 さすがにこれはヒットしましたね。柳の下のドジョウ狙いか、出るわ出るわ続編のオンパレード・・・(笑)。

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 ロッドも妙に内省的。大人になったものです。なのに私は・・・!?いいえ、私は十分に大人だと自負してますがね。ん? 自負はあっても自覚が足りん? ほっといてくれ。


テーマ : 洋楽ロック
ジャンル : 音楽

第86話  Bill Evans Trio 『Waltz For Debby』 (1961) U.S.

今夜の一曲 My Foolish Heart (愚かなり我が心)

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 ビル・エヴァンスが左利きとは知らなかった。もっとも「左利きだからやはり〇〇なんだ」という結論ありきではありません。

 以前、エロール・ガーナー(Erroll Garner)の「ミスティ」(Misty)を取り上げた時、「ガーナーが左利きである事が独特の奏法を産んだ」という指摘を紹介しました。ビル・エヴァンスのジャズ・ピアニストとしての評価にも、彼が左利きであった事に触れたものが見受けられます。

 一般的に、左利きの人は右脳が発達していると言われます。右脳はいわゆる「芸術脳」で、五感を含めて物事を感覚的に捉えることを得意とするため、左利きの人は、音楽や絵画・空間の認知などの刺激に反応しやすいようです。

 一方、右利きの人は左脳が発達していると言われます。左脳は論理脳で、言語や解析などを得意とします。しかし、これをもって全ての人間の活動をくくるのは無謀であって、先入観や偏見に結びつきかねない発想でしょう。


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 左利きの人は全人口の約1割と言われ、彼らは右利きの文化に適応しようとするので、右手を使う頻度も多くなります。それで脳幹が発達し、器用さに結びつくと指摘する識者もいます。その一方でこうした仮説を否定する学説が存在するのも確か。

 そしてまた、こうした右脳-左脳という対立概念で人間の思考や行動を分類すること自体がナンセンスだ、という意見すらある。いずれにせよ、芸術・文化のカテゴリーにおいて、天才と目される人物が左利きだったりすると、いきおいその事実だけがクローズアップされるのも確かですね。

 それでは、左利きの天才肌のアーチストと言うと、どんな人を思い浮かべますか。ちょっと調べてみるだけで、膨大な偉人たちが検索エンジンにヒットします。

 マッコイ・タイナ-、ウィントン・マルサリス、ボブ・ディラン、ジミ・ヘンドリクス、ポール・マッカートニー、パガニーニ、ベートーベン、ラフマニノフ、ショパン、モーツァルト、シューマン、プロコフィエフ、ジョン・セバスチャン・バッハ、ラヴェル、ドビュッシー、グレン・グールド、ピカソ、ミケランジェロ、ダ・ヴィンチ、アレキサンダー大王、ナポレオン、ジャンヌ・ダルク、ニュートン・・・そして勿論、我がビル・エヴァンス。


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 けれども、偉業を成した人物の中で左利きの人物を挙げてみた・・・という程度の事であって、左利きの人に天才肌の人物が多いという結論ではないんですけどね。

 さて、エヴァンスの「My Foolish Heart」は『Waltz For Debby』(1961)収録曲です。第一期トリオのメンバーはスコット・ラファロ(Scott LaFaro)(b)、ポール・モチアン(Paul Motian)(ds)。

 エヴァンスはマイルス・デイビスのグループを脱退後、自ら率いるトリオにふさわしいクリエイティブな音を求めていました。そんな中、彼が出会った天才肌のベーシストがラファロ。

 ラファロが持ち込んだベースの概念は、単にリズム隊の一員としてリズムをキープするのみならず、ドラムスやピアノとのインター・プレイを通じて、ジャズの新しい地平を開こうとするものでした。エヴァンスは、ラファロによって活性化され、トリオとしてのダイナミズムを得たとも言えます。


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 それだけの才能に溢れていたからこそ、「My Foolish Heart」のようなスタンダードを演らせても、饒舌になりすぎず、選りすぐった音で聴く者の心を揺さぶるのでしょう。

 悲しいことに、ラファロはヴィレッジ・ヴァンガード公演の最終日(1961年6月25日)の11日後(7月6日)、25歳の若さで交通事故死します。

※最終日の公演はマチネ2回、夜に3回の計5セット。これがライヴ・レコーディングされた。
※7月6日1:45A.M.。友人宅からの帰路、ラファロの乗ったクライスラーはR20で路傍の大木に激突、即死。
※ヴィレッジ・ヴァンガード公演は『Sunday At The Village Vanguard』『Waltz For Debby』の二枚のアルバムとなった。
※アルバムが捉えているのはトリオの演奏だけではない。アルコールが入ったグラスが鳴る音、客席の話し声や騒音、そしてそれら全てがあの音楽に必要なサウンドだった。<参考;『ビル・エヴァンスについてのいくつかの事柄』中山康樹(河出書房新書)>

 ファンのみならず、エヴァンスの心痛はいかほどだったろう。しばらくはピアノに触れる事もなかったそうです。魂の抜けたような日々の後、気を取り直して再スタート。


ScottLaFaro.jpg


 ここに紹介する動画は、1965年3月、第二期ビル・エヴァンス・トリオのJazz 625(Humphrey Lyttelton)公演。ラファロを継いだベーシストはオリン・キープニューズ(Orrin Keepnews)紹介のチャック・イスラエルズ(Chuck Israels)、ドラムスがラリー・バンカー(Larry Bunker)。なかなか濃厚な演奏が楽しめます。

 エヴァンスは、あたかも新しいインスピレーションを得たかのように、オリジナル・レコーディングを越える勢いの好演に終始します。エヴァンスの名演を引き立てるチャックの清廉なベース・ラインも、ラリーの妖艶なブラシ・ワークも心に染み入りますね。


Bill Evans - piano
Scott LaFaro - bass
Paul Motian - drums



テーマ : JAZZ
ジャンル : 音楽

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ticca

Author:ticca
 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

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