予告

ロキシー・ミュージックを追い出されたブラアン・イーノと、乞われてロキシーに招かれたエディ・ジョブソン。

その二人が奇妙に共演したアルバムがありますね。

その二人を招いた立役者は・・・

そして、相変わらずエキセントリックなロバート・ワイアットが、オープニングで素敵によれまくる・・・
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テーマ : 洋楽ロック
ジャンル : 音楽

第117話 Ramases 『Space Hymns』 (宇宙賛歌) (1971)

今夜の一曲  Earth People


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<その2>ラマセス(Ramases)の巻


こちらは英国のグループ1971年作。邦盤にはRamases(ラマセス)と表記されています。

Ramasesという語ですが、辞書には載っていません。自称「ファラオの生まれ変わり」という事なので、本来はドイツのグループが引用したRamsesのスペリングの方が正確な表記と言えそうです。

ただし、Ramsesという語には変異体があり、Rameses、Ramesses、Raamsesなどがそれです。古代エジプト語がギリシャ語経由で英語に入ってきた関係で、様々な表記体が混在しているようです。Ramasesは辞書には載っていませんが、彼らは敢えて自らのアイデンディティとして、独自の表記体を作りだしたのではないでしょうか。


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ヴァーティゴ(Vertigo Records)からのリリース。しかも、ジャケット・デザインがロジャー・ディーン(Roger Dean)!と聞くだけで、コレクター垂涎のアイテム。おまけに、オリジナルは6面開き(six - panel fold out)の変形ジャケ(96cm×64cm)、とくれば卒倒ものですね。

このバンドは夫婦のデュオで、グレアム・ボンド(Graham Bond)とダイアン・スチュワート(Diane Stewart)並みにぶっ飛びのカップルです。

驚き情報なのは、バックバンドがホットレッグス(Hotlegs)。つまり、ケビン・ゴドレー(Kevin Godley)、グレアム・グールドマン(Graham Gouldman)、ロル・クレム(Lol Creme)、エリック・スチュワート(Eric Stewart)組。


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彼らは、直後に改名して10ccへと変態を遂げます。ホットレッグスに加えて、クレジットによると、夫のマーティン・ラファエル(Ramases)と、奥方のドロシー(Dorothy / Selket / Seleka)がVo担当。

そのサウンドを一言で形容するのは困難。「Acid Folk meets 10cc」と言いたい所ですが、これホントに10cc?という感じの謎めいた音に終始します。ある時には催眠的なトランス・ミュージック。ある時にはいかにもサブカルなヒッピー・フォーク。

かと思えば、メロウサイケや呪術的なマントラかコーランを思わせる詠唱。はたまたジーザス・フォークって感じに化けまくる。シタールが鳴り響いたかと思えば、ムーグがごにょごにょする曲もある。


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それにしても、ホットレッグスの才能豊かなこと。彼らは当時ムーディ・ブルース(The Moody Blues)のツアー・サポートにも入ったし、マインドベンダーズ(Mindbenders)がバックアップしたウェイン・フォンタナ(Wayne Fontana)ともコラボしているし、ニール・セダカ(Neil Sedaka)の『ソリテア』(Solitaire)でもプレイしながら共同プロデュースに当たっています。

彼らにとっては、ラマセスのために一肌脱ぎ、かくもいかがわしいアングラな音を紡ぎ上げるのはお茶の子さいさいの事だったでしょう。

そもそもラマセスの実態も正体不明でうさんくさい。首謀者はラマセス(Ramases)こと、マーティン・ラファエル(Martin Raphael)。しかし、これも変名のようで、本名はバーリントン・フロスト(Barrington Frost)という説もあります。


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彼は軍の体育指導員としてキャリアをスタートし、昼はセントラル・ヒーティングのエンジニア、夜はジャズ・シンガーで食いぶちを稼いでました。

そんなある日、彼に「おまえはファラオの生まれ変わりだ。」という御神託が降りたのです。奇しくも彼の妻も、同じく時を超えて生まれ変わった古代エジプトの女神である事が判明しました。

かくして彼は、宇宙の真理を人類に伝えるための伝導活動に専心します。1968年にはCBSからRamases & Selket名義で『Crazy One / Mind's Eye』をリリース。サウンドは、表面的にはアラビア音楽の域を出ない印象。CBSもよくぞリリースしたものですね。


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これは商業的には失敗。続く二枚目のシングルも敢えなく撃沈。でも、それにめげることなく、1971年にはとうとう(※)ハーヴェイ・リスバーグ(Harvey Lisberg)のメガネにかなってヴァーティゴとの契約を取り付けました。

※ハーヴェイはハーマンズ・ハーミッツ(Herman’s Hermits)、10ccの創設者グレアム・グールドマンを発掘したミュージック・マネージャー。他にマネージメントを担当したアーチストと言えば、バークレイ・ジェームス・ハーヴェスト(Barclay James Harvest)やサッド・カフェ(Sad Café)、ゴードン・ギルトラップ(Gordon Giltrap)などがあります。

かくして、ラマセスは待望のアルバムをリリースするという快挙を達成。まぁ、よくわからんヤツはヴァーティゴに任せとけって事なのか知りませんが、いかにも売れそうもないデュオと、よくぞ契約したものです・・・と、まぁ、これは賛辞ですけどね。


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しかも、あのロジャー・ディーンの意欲的な六面開きの変形ジャケ。英国本国だけでなく、スペインなど、ヨーロッパでもライナーを母国語に翻訳したりしてリリースしていたようです。勿論、日本でもリリース。リスクの多い中、ここまで大胆に莫大な金をかけた販促に出たわけで、これは七不思議の域です。

このアルバム、どれ程のセールスがあったのでしょう。1975年にはセカンド『Glass Top Coffin』までリリースしています。ただ、ラマセスの思うようなプロダクションではなかったようで、後付けのストリングスやコーラス、及びラマセスの意図を無視したスリーヴ・デザインには不満たらたらだったようです。

さて、本アルバム『Space Hymns』(宇宙聖歌)には、謎めいた賛美歌が一杯詰まっていますが、率直に書けば、ファラオとジーザスとシタールの関係は思いっきり不明です。


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10ccのグレアム・グールドマンは、後のインタビューでこう答えています。「全てはRamasesとSelketの考え出したこと。僕らは雰囲気を楽しんでただけ。」光陰矢のごとし。まぁ、今となっては、デュオとの間にあった化学反応の不可思議は、アングラ・ロック界のミステリーのひとつとなりました。

10cc(ホットレッグス)がバックバンドを担当するに至った経緯は、はっきり分かりませんが、レコーディングが行われたマンチェスターにあるストロベリー・スタジオ(Strawberry Studios)、ここのオーナーは10ccだったようです。

ラマセスこと、マーティン・ラファエルは1978年、心を病んで自ら命を絶っています。しかし、その事実は1990年代初期まで明らかにされませんでした。また、ラマセスが残した貴重な音源の大半は、残された奥方、シェルケットの新しい旦那によって焼却処分の憂き目にあってしまいました。

そんなわけで、2014年、突如としてリリースされた6枚組コンピ盤は驚きをもって迎えられました。奇跡はまさに、起こるためにあるんですね。


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Ramases and Sel - vocals
Eric Stewart - lead guitar & Moog synthesizer
Lol Creme - lead guitar & Moog synthetizer
Kevin Godley - drums & flutes
Graham Gouldman - guitar & bass guitar
Martin Raphael - sitar




<第116話 ラムゼスの巻 Ramses 『La Leyla』 Germany 1976へ>

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ジャンル : 音楽

第116話 Ramses 『La Leyla』 (1976) Germany

今夜の一曲  Devil Inside


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<その1>ラムゼス(Ramses)の巻


世の中にはよく似た名前のアーチストがたくさんいますね。バッハと言っても、ヨハン・セバスチャン・バッハ(Johann Sebastian Bach)ばかりじゃなく、J.S.の長男、対位法の巨匠ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ(Wilhelm Friedemann Bach)だっていますし。

ロックの世界でも、サーカスなどはメル・コリンズ(Mel Collins)のCircusもあれば、『One Plus...』のCirkusもありましたね。

私が随分長い間勘違いしていたのが、フォーカル・ポイントでした。Focal Point、Folkal Point,、あなたはどちらのサウンドがお好みでしょうか(笑)。

さて、今回取り上げるのは、これまたマイナーなグループではありますが、ラムゼス(ラムセス?)(Ramses)です。そして、次回取り上げる予定のアーチストがラマセス(Ramases)です。う~ん、なんのこっちゃ。あ、そう言えば、売れなかったスーパー・グループ、ラマタム(Ramatam)ってのもありました。


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さて、それでは、まずはラムゼス(Ramses)の出番です。当時、中古盤屋にカットアウト盤がごろごろしていてました。ジャケも素敵にダサい。なかなか食指が動かなかった。ダマされたと思って買ってみて、針を降ろして(死語)びっくり。食わず嫌いは損である。

ドイツで1976年にスカイ・レコード(Sky Records)からリリースされたラムゼスのデビュー作。日本ではポリドールから発売(邦題『アメリカン・ドリーム』)されています。帯のキャッチ・コピーは「ヨーロッパで群を抜く実力と人気。今、アメリカ、日本へ上陸開始」とある!う~む。

曲傾向はバラエティーに富むが、ジェネシス(Genesis)やキャメル(Camel)、ユーライア・ヒープ(Uriah Heep)、アイアン・バタフライ(Iron Butterfly)、イエス(Yes)と言った影響も指摘できる。


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ミーハー発言が許されるならば、ムーグ、ハモンドオルガン、ソリーナなどのヴィンテージ・キーボード群(1976年だから当たり前か・・・)が、これでもかとフィーチャーされるところが涙を誘う。

基本はブルージーなヘヴィ・ロックなのだが、そこにダイナミックなギターと壮大なキーボードの波が交互に現れては消え、ファンタジックなストーリーを紡ぎ始めると彼らの独壇場だ。時にファラオの呪いにかけられるような催眠的なアプローチもある。

そう、グループ名の由来は、古代エジプト第19王朝のファラオ、ラムセスⅡ世。1972年のグループ結成当時、グループ名はRamses IIだった。その後、スカイと契約を結ぶに当たって、グループ名をRamsesと変更している。


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このアルバムは1週間で集中的にレコーディングされた。プロデュースはコニー・プランク(Conny Plank)と、ジェーン(Jane)のプロデューサーだったクラウス・ヘス(Klaus Hess)が共同で作業している。

ドイツ本国のバンドと比較するならば、エロイ(Eloy)やジェーンを意識したサウンドとも言えるだろうか。

レコーディング・メンバーのうち、実はオリジナル・メンバーは二人だけ。Voのヘルベルト・ナート(Herbert Natho)と、Bのハンス・クリンカマー(Hans D. Klinkhammer)の二人がそれ。

バンドにとって転機になったのは、サウンドの要となったKeyのヴィンフリート(Winfried)とGのノルベルト(Norbert)のランホルスト(Langhorst)兄弟のバンド加入だった。そしてDsのラインハルト・シュローター(Reinhard Schröter)が脇を固める。


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バンドは1978年には同メンバーで同傾向の『Eternity Rise』をリリース。その後ヴォーカリストのヘルベルト・ナート(Herbert Natho)は、体調を崩してバンドを去ることになる。

ところで、ラムゼスのオリジナルのドイツ・スカイ盤(Sky002)とUS & Candaの※アンヌイ・コエプティス(Annuit Coeptis)盤(AC-1002)とでは、B面1曲目が違うのです。いずれの曲も演奏と曲のランニング・ライムは一緒。でも、タイトルと歌詞が違う。(※ラテン語でundertakings「仕事・事業」の意味か)

曲のタイトルは、原盤が「War」、US盤が「Noise」。Warはベトナム反戦歌でした。それで、アメリカ側のレコード会社に拒否られたとのこと。やむなく急きょ、歌詞をさし変えてレコーディングし直したというわけ。


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でも、反戦歌なんてザラな時代。何故・・・? 恐らく、彼らが米国の国内アーチストではなかったという事と、アメリカ市場に打って出ようとする新参者のバンドには、ふさわしくなかろう、という売り手側の判断もあったのでしょう。マネージメント側にとっては、金(かね)の前では「沈黙は金(きん)」なのでしょうか。

「War」の歌詞は、何の大義で戦うのかも知らされない兵士の虚無を歌い上げています。彼らは理由もわからず、単に「ビッグ・ボス」のために戦っている・・・という歌。

ところが、歌詞が差し替えられた「Noise」では、TVやラジオ、ジェット機などの都会の騒音に夜も眠れないと嘆き、悪臭や、目に余る大気と水質の汚染に恨み節。そして、静けさと平穏が欲しい・・・と歌っているのです。


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そしてコーラスの「War, everywhere, everywhere Look around man!」のWarが、Noiseにすげ替えられて、「Noise, everywhere, everywhere Look around man!」となっています。ベトナム・ネタは使えなくても、環境問題ネタで勝負。転んでもタダでは起きないというわけでしょうか。

さて、締めくくりに、このバンド名の発音について。日本ではラムゼス、或いはラムセスと呼称されるのが一般的です。英語では、Ramsesはファラオの名前にちなめば、ram-seez(ラムスィーズ)と発音されるようです。

何故、こんな話をしたのかと言うと、実は英国にロジャー・ディーン(Roger Dean)のジャケットで知られる、ラマゼス(Ramases)というバンドが存在するからです。さて、次回はその謎めいた強烈なカルト・バンド、ラマゼスについて取り上げてみたいと思います。




Hans D. Klinkhammer - bass
Norbert Langhorst - guitars
Winfried Langhorst - keyboards, vocals
Herbert Natho - vocals
Reinhard Schröter - drums, percussion

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 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

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