第94話 It's a Beautiful Day 『It's A Beautiful Day』 (1969) U.S.

今夜の一曲  Bombay Calling


bombay (3)


◆以下の設問に答えよ◆

問題1;ロックのバンド編成にバイオリンが導入されるようになった背景は何か?
問題2;ロック界におけるバイオリンの巨匠(マエストロ)を挙げなさい。 
問題3;ロック界において、バイオリニストであることの長所は何か?
問題4;ロック界に初めてバイオリンを導入したのは誰か?
問題5;ロック史におけるイースト・オブ・エデンの業績を評価せよ。
(各20点 計100点)

<中編>

 さて、ロックにバイオリンを導入した先駆者は誰だったか、でしたね。イースト・オブ・エデンの『世界の投影』のリリースが1969年2月。ですから、それ以前のロックのカタログで、バイオリンがフィーチャーされているアルバムを調べてみましょう。

 実は、1969年2月リリースというのは、ロック・バイオリンの歴史の中では、タイム・ライン的にはかなり早い印象です。ですから、私の頭の中にあったいくつかのアーチストはこの時点で予選落ちです。

 たとえば、ブルース系のバイオリニスト、パパ・ジョン・クリーチ(Papa John Creach)が参加したジェファーソン・エアプレイン(Jefferson Airplane)や、ホット・ツナ(Hot Tuna)。ホット・ツナはヨーマ・カウコネン(Jorma Kaukonen)、ジャック・キャサディ(Jack Casady)らが結成したバンドですが、パパ・ジョンのグループ参加は両バンドとも1970年のことでした。


bombay (1)


 次に思い浮かんだのが、ローリング・ストーンズ(Rolling Stones)の『レット・イット・ブリード』(Let It Bleed)。「カントリー・ホンク」(Country Honk)で演奏したバイオリニストはバイロン・バーリン(Byron Berline)。彼はブルーグラス出身。アルバムのリリースは1969年12月です。これでは候補からはずれてしまいますねぇ。

 続いて、強烈な個性を放つシュガーケイン・ハリス(Don "Sugarcane" Harris )。彼はフランク・ザッパ&ザ・マザーズ(Frank Zappa & The Mothers of Invention)への参加で知られるブルース&ジャズ畑のバイオリニストです。

 ザッパとの交流において、最初にコラボしたアルバムが、ザッパのソロ名義の『ホット・ラッツ』(Hot Rats)。これは1969年10月リリース。シュガーケイン・ハリスが2曲、ジャン・リュック・ポンティ(Jean Luc Ponty)が1曲、それぞれバイオリンの妙技を披露しています。

 ですが、シュガーケイン・ハリスのマザーズへの参加はそれ以降です。『Burnt Weeny Sandwich』(バーント・ウィーニー・サンドウィッチ)が1970年2月、『Weasels Ripped My Flesh』(いたち野郎)が1970年10月と、70年代に入ってしまうのです(両者はバンド解散後の未発表音源集)。ちなみにハリスがジョン・メイオールと合流したのも70年代に入ってからでした。

※シュガーケイン・ハリスのディスコグラフィを見て見ると、同じく1969年にJohn Mayall & Bluesbreakersの『The Best of John Mayall』がリスト・アップされていますが未確認。


bombay (6)


 米国人画家マックスフィールド・パリッシュ(Maxfield Parrish)の「Ecstasy」(1930)にインスパイアされたスリーヴ・デザイン(Bruce Steinberg作)で知られる、イッツ・ア・ビューティフル・デイ(It's a Beautiful Day)。

 まさにパリッシュ・ブルー(パリッシュお得意のコバルト・ブルー)の映える気品あふれる作風は、ノーマン・ロックウェル(Norman Rockwell)、アンディ・ウォーホール(Andy Warhol)など、多くの信奉者を抱えています。

 ※ロックウェルは「パリッシュは自分のアイドルだ」と公言していたし、ウォーホールはパリッシュの絵画のコレクターだった。

 パリッシュの作品はムーディ・ブルース(The Moody Blues)やエルトン・ジョン(Elton John)のアルバム・カバーでもお馴染みですね。


bombay (5)

bombay (9)


 もともとこのバンドは、バイオリニストのデビッド・ラフレイム(David LaFlamme)が結成したグループです。彼の出自はオケのソロイスト。つまり、クラシック畑。後にジェリー・ガルシア(Jerry Garcia )やジャニス・ジョップリン(Janis Joplin)とも共演したことでも知られています。

 彼らの活動は1967年に遡ります。ところがマネージャーとの関係につまずき、アルバム・リリースは1969年9月までもつれ込みます。ですから、バイオリンの導入が1967年だったとしても、公式音源として周知されるのはかなり後のことです。

 すがすがしいグループ名とは裏腹に、厳しい下積み生活を余儀なくされたシアトルでの日々。天候にも恵まれず、皮肉にもそれが彼らのシグネチャー・ソング(代表曲)を産みます。代表曲の「ホワイト・バード」(White Bird)がそれです。

 ところで、ディープ・パープル(Deep Purple)の『In Rock』(1970)に収録されたA③「Child In Time」。このメロディがIt's a Beautiful Dayのデビュー作B①「Bombay Calling」からの借用だというのはよく知られた話です。


bombay (2)


 It's A Beautiful Dayは、それを訴訟沙汰にしませんでした。その代わり、お礼参りとしてDeep Purpleの『The Book Of Taliesyn』(詩人タリエシン)(1968)収録の「Wring That Neck」からアイデアを借用したのです。それが、第二作『Marrying Maiden』(1970)に収録された「Don And Dewey」だったのです。

 It's A Beautifu Dayの「Bombay Calling」は、ラフレイム参加の前身バンドOrkustraによってマーチング・バンド風の演奏が残されています。1967年のことです。もし、パープルがこれに倣(なら)ったならば、アルバム・タイトルは『In Rock』ではなく、『In March』だったと推測されます(笑)。

 もともと、Bombay Callingは、ヴィンス・ウォレス(Vince Wallace)が1962年に作曲した曲です。ネット動画にあるのは、その1975年再録でしょうか。


bombay (8)


 ヴィンス・ウォレスはジャズ畑のサクソフォン奏者。ウォレスはこの曲を1966年、It's A Beautifu Dayのラフレイムに聞かせた、といいます。その後ラフレイムは、シーンで脚光を浴びます。

 それに対して、ウォレスはその才能にも関わらず、当時の音楽の時流に乗れませんでした。レコード会社はBS&TやChicagoの売り出しに夢中で、ウォレスの才能は過小評価されたとも言います。

 さて、Deep Purpleの「Child In Time」はメンバーの共作になっていて、ラフレイムの名前はノー・クレジットです。盗用の可能性はあるのでしょうか。確かに、テーマ・ソロ・テーマ・エンディングの構成もそっくり。パープルの曲のイントロは、よりブルージーな迫り方をしていますね。

 1988年6月、イアン・ギラン(Ian Gillan)は、ラジオ・ショー「Rockline」で興味深い発言をしています。ギランは、アルバム『Nobody's Perfect』のプロモートのためにラジオ出演しました。そこで、ギランは盗用の事実を容認する発言をしたそうです。(未確認)。


bombay (7)


 2002年のイラン・ギランのインタビューが参考になるかもしれません。ある日、Bombay Callingを聞いたジョン・ロード(Jon Lord)がキーボードでこの曲を弾いていました。それを共感をもって聞いたメンバーたちは、オリジナル曲は聞いたことはなかったものの、みんなで曲想を膨らませて歌詞をつけ、ようやく出来上がったのがChild In Timeだったそうです。

 ※Ian Gillan, Mumbai, India, 3rd May, 2002 (Courtesy of Narendra Kusnur, Mid-Day Newspaper, Bombay)

 『In Rock』発表の数年後、空港でラフレイムと会った時、ラフレイムは「いいよ、僕らもWring That Neckを拝借したし」と返して和解が成立したとのことです。何だか、寛容なのか豪放なのか、まさに鷹揚(おうよう)な時代を象徴するような話ですよね。

 さてさて、これまで取り上げてきたロック・バイオリニストたちは、どれもこれも1969年以降のものばかりでした。次回はイースト・オブ・エデンの『世界の投影』(1969年2月)に先立つ1968年以前に遡ってみたいと思います。

Linda Laflamme - Organ, Piano, Electric Piano, Celesta, Harpsichord
David Laflamme - Violin, Vocals
Mitchell Holman - Bass
Val Fuentes - Drums
Hal Wagenet - Guitar
Bruce Steinberg - Harmonica
Pattie Santos - Vocals, Tambourine, Bells, Percussion





スポンサーサイト

テーマ : サイケデリック
ジャンル : 音楽

コメントの投稿

非公開コメント

ゲスト・ブック
Profile

ticca

Author:ticca
 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
カテゴリ
最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR