第97話 The United States Of America 『Same』 (1968 )U.S.

今夜の一曲  The Garden Of Earthly Delights


USA (9)


◆以下の設問に答えよ◆

問題1;ロックのバンド編成にバイオリンが導入されるようになった背景は何か?
問題2;ロック界におけるバイオリンの巨匠(マエストロ)を挙げなさい。 
問題3;ロック界において、バイオリニストであることの長所は何か?
問題4;ロック界に初めてバイオリンを導入したのは誰か?
問題5;ロック史におけるイースト・オブ・エデンの業績を評価せよ。
(各20点 計100点)

<後編>

それでは、ロック系バンドでバイオリンが使われた例を「1968年代以前」というくくりで洗い出してみましょう。

前回話題にしたシュガーケイン・ハリス(Don "Sugarcane" Harris)を再び取り上げます。彼はジョニー・オーティス・ショウ(The Johnny Otis Show Featuring Mighty Mouth Evans & Shuggie Otis)の『Cold Shot!』にサイドマンとして参加。タイトル曲でバイオリンを弾いていることがわかりました。1968年作ですが、残念ながらリリース月までは不明。

ここで、第92話で話題にしたダーティ・マックに話を戻します。The Dirty Macとは、ローリング・ストーンズ周辺で持ち上がったスタジオ・ライブ企画、『ロックンロール・サーカス』(Rock and Roll Circus)のために結成されたワン・ショットのスーパー・グループでした。

メンバーはジョン・レノン(John Lennon)、キース・リチャーズ(Keith Richards)、ミッチ・ミッチェル(Mitch Mitchell)、エリック・クラプトン(Eric Clapton)の御仁。


USA (3)


演奏曲目は「Yer Blues」、そして「Whole Lotta Yoko」。実は、その「Whole Lotta Yoko」にはバイオリニストが合流しているんです。ジョン・レノンはあまり記憶にないらしく、後年「なんだか頭の狂ったようなバイオリニストがいたなぁ」くらいの発言をしていましたよ。OMG!

その「狂ったような」バイオリニストの正体はイブリー・ギトリス(Ivry Gitlis)。クラシック畑から参戦したバイオリニストでした。

ロックンロール・サーカスの収録は1968年12月。けれども、この震っちゃうような音源が陽の目を見ることはなく、あっけなくお蔵入り。TV放映すらありませんでした。その封印がようやく解かれたのが1996年。2004年に満を持してのDVD化。それまで世に知られることもなかったなんて、勿体なさすぎ。どうしてくれよう!

先を急ぎましょう。続いて、アル・クーパー(Al Kooper)とスティーヴ・カッツ(Steve Katz)のイメージの濃い、ブルース・プロジェクト(The Blues Project)。二人はオリジナル・メンバーの中ではニュー・フェイス。ブルース・プロジェクトへは後追いで加わったメンバーでした。


USA (8)


この二人が、1967年10月、突如として脱退を表明します。二人はそのままブラッド・スウェット・アンド・ティアーズ(Blood, Sweat & Tears)を結成して、表街道を歩みます。

残されたブル・プロ(勝手に省略すんなって?)は自然消滅かと思われましたが、置き去りにされたメンバーのうち、アンディ・カルバーグ(Andy Kulberg)(fl)とロイ・ブルメンフェルド(Roy Blumenfeld)(ds)の大黒柱を中心に、1968年4月、バンドは再編されます。こうして発表されたのが『ブルース・プロジェクト・ラスト・アルバム』(Planned Obsolescence)。1968年12月のことでした。

このアルバムに起用されたのが、バイオリニストのリチャード・グリーン(Richard Greene)。グリーンは「ブルーグラス界にその人あり」と謳われた才能の持ち主です。ブル・プロのバイオリンとフルートの掛け合いを軸とした不思議な音世界は、初期作とはまた違う魅力を放っています。

ブルース・プロジェクト名義ではあるものの、実際はヴァーヴ(Verve Forecast)との契約を履行する関係でバンド名を継承したのであって、『Planned Obsolescence』はシー・トレイン(Sea Train)の事実上のデビュー作として捉えた方が良さそうです。


USA (2)


さて、1968年7月リリースの、あるアルバムに目を向けましょう。今度はリック・グレッチ(Ric Grech)絡みです。骨の髄まで英国くさいバンド、ファミリー(Family)。『ミュージック・イン・ア・ドールズ・ハウス』(Music in a Doll's House)がそれです。リックはbass, violin, cello, vocal担当となっています。

※ちなみに、その後グレッチはブラインド・フェイス(Blind Faith)に引き抜かれ、唯一作を1969年8月にリリース。さらに1970年3月にはジンジャー・ベイカーズ・エアフォースのデビュー作『Ginger Baker's Air Force』に乱入。また、トラフィック(Traffic)には、1971年11月リリースの『ザ・ロウ・スパーク・・・』(The Low Spark of High Heeled Boys)から参加しています。

さて、お次。1968年6月リリースのブルースブレイカーズの『Bare Wires』。バイオリン&コルネット(トランペット)に、ジャズ畑のヘンリー・ロウザー(Henry Lowther)の名前があります。


USA (6)


USA (1)


ロウザーは器用・多才で、多くのアーチストと共演しています。60年代にはマイク・ウェストブルック(Mike Westbrook)(1963)、ジョン・ダンクワース(John Dankworth)(1967)、グラハム・コリアー(Graham Collier)(1967)、ジョン・ウォーレン(John Warren)(1968)、ニール・アードレイ(Neil Ardley)(1968)、ボブ・ダウンズ(Bob Downes)(1969)、キーフ・ハートレイ(Keef Hartley)(?)、マイク・ギブス(Mike Gibbs)(1970)、ケニー・ホイーラー(Kenny Wheeler)(1972)などなど・・・

しかし、純粋にロック系かと言えば「?」でしょうか。

ちょっと寄り道して、トラッド寄りのグループですが、フェアポート・コンベンション(Fairport Convention)はいかがでしょう。

フェアポートのバイオリニストというと、個人的にはデイブ・スウォブリック(Dave Swarbrick)ですが、彼は三枚目の『Unhalfbricking』(1969年7月)からの参加なんです。

けれども、フェアポートの初期作には、バイオリニストとしてマーティン・ランブル(Martin Lamble)がメンバー入り。デビュー作『Fairport Cinvention』のリリースは1968年6月ですよ。ちなみに、2ndの『What We Did』になると、1969年1月リリース。

さてさて、ロック寄りにせよ、トラッドやジャズまで食指を伸ばしていると夜が明けてしまうので、これくらいで勘弁して頂きましょう。


USA (4)


もっと以前のものはないか、と目を皿にして探していたら、まだまだあるじゃないですか!たとえば、1967年12月録音、1968年3月リリース作。鬼才ジョセフ・バード(Joseph Byrd)率いる、必殺ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ(The United States Of America)です。

このエクスペリメンタルなアヴァン・サイケ・バンドの残した怪作が、2004年、なんとサンデイズド(Sundazed Records)からデモ、別テイク、アウトテイクスを含む拡張版として発売されたのです。世も末ですね!

このノー・ギタリスト・バンドはバイオリニストとしてゴードン・マロン(Gordon Marron)を擁しています。担当楽器はバイオリンとリング・モジュレータというから生唾ものです。マロンだなんて可愛い名前のバイオリニストは、現在ではカウアイ島でブルー・ハワイでも飲みながら、ハワイアン・ミュージック・サークルにどっぷりでしょうか。

ニコ(Nico)のお姉さまがUSAに加わろうとしたという逸話もあり、ニューヨークのアングラ・シーンってのは超ミステリアス。ニコもいいけど、私にとっては、ドロシー・モスコヴィッツ(Dotothy Moskowitz)嬢「命」ですから(笑)。

じゃ、The United States Of America以前は・・・? 先ほど取り上げたヘンリー・ロウザーとマンフレッド・マン(Manfred Mann)の共演が1967年という記録があります。


USA (5)

USA (7)


また、ジェントル・ジャイアント(Gentle Giant)のシャルマン兄弟が結成していたサイモン・デュプリー&ザ・ビッグ・サウンズ(Simon Dupree and the Big Sound)。彼らのファースト・リリースは1966年のシングル曲「I See The Light」に遡ります。

バンド解説を見ると、レイ・シャルマン(Ray Shulman)がguitar, violin, trumpet, vocals担当となっています。唯一のアルバムが『Without Reservations』(1967)。その他にもおびただしい数のシングルや、16曲にも及ぶアンリリースト・マテリアル(セカンド・アルバム用のマテリアルか?)が後年発売になり、マニアを悦楽の園へと誘いました。

2004年にリリースされたアンソロジー(CD二枚組コンピ)『Part Of My Past』。そこに収められた未発表曲「Stained Glass Window」(1967)「Kindness」(1968)などには、ストリングス(バイオリン)が導入されています。ただ、それがレイによる貢献なのかははっきりしません。いずれにしても、1969年の解散までの間に、実際にレイが、いつどの曲でバイオリンを弾いていたかは、検証が必要です。

同様に、リック・ダンコ(Rick Danko)にしても、ザ・バンド(The Band)結成前夜の活動については、未確認だったりします。

さてさてさて。以前、話題にしたドン・シュガーケイン・ハリスの古いディスコグラフィを見ていると、リトル・リチャード(Little Richard)の『Little Richard is Back』が1964年ですね!(※未聴)


USAA.jpg


まだまだロック系の音源へのバイオリニスト参加の事例は一杯ありそうです。メンバーなのか、ゲストなのか、はたまた、どういう貢献の仕方なのなのか。それを調べていくのはわくわくドキドキですね。さて、ここからがいよいよ佳境。

ですが、そんな検証の楽しみを、私ごときが奪っては申し訳ないので、ここから先は、あなたにバトンタッチです。わっはっは(笑)。


Edward Bogas - Bass, Calliope, Organ, Piano
Joe Byrd - Arranger, Calliope, Harp, Organ, Piano
Gordon Marron - Violin, Strings, Ring Modulator
Dorothy Moskowitz - Vocals
Craig Woodson - Drums, Percussion




スポンサーサイト

テーマ : サイケデリック
ジャンル : 音楽

コメントの投稿

非公開コメント

ゲスト・ブック
Profile

ticca

Author:ticca
 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
カテゴリ
最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR