第99話 The Who 『Who's Next』 (1971) U.K.

今夜の一曲  Baba O'Riley 「バーバ・オライリィ」


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イースト・オブ・エデン(East Of Eden)のデイブ・アーバス(Dave Arbus)絡みの名曲。『Who's Next』(1971年8月 全英1位)に収録されていた曲ですが、何と2012年ロンドン五輪の大トリで演奏するくらい、思い入れたっぷりの曲だったようです。

この曲は、デイブ・アーバスの名を全世界に知らしめた曲でした。「バーバ・オライリィ」に先だつ1970年5月、イースト・オブ・エデンは「ジグ・ア・ジグ」(Jig-a-Jig)をチャート・エントリー(全英7位)させています。

この曲、「Jig-a-Jig」は、偶発的に出来上がったもののようです。コンサートのトリでアーバスがジグ(実際には伝統舞踊のリール)を演奏したところ、他のメンバーも追随し、聴衆に大受けしたとか。これはアーバスが2010年12月にMojo Magazineに明かした秘話。


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※Songfactsより抜粋/アーバスは自分たちがやりたい音楽を奏でたかったが、観客もプロダクションもそれを許さず、結局、「Jig-a-Jig」の大ヒットによってイースト・オブ・デンのアイデンティティは崩壊したと言う。アーバスはシングル・ヒットをフォローアップするのではなく、アルバムで勝負したかった。バンドは決裂して主要メンバー脱退、という憂き目に会う。

ともあれ、このケルティック・ロックによって注目を浴びたアーバスに声がかかり、「バーバ・オライリィ」でのバイオリン演奏につながった。

それにしても、「バーバ・オライリィ」とは妙なタイトル。それでいて、曲中に一言たりとも「バーバ・オライリィ」なんてラインは登場しない。一聴して、曲中で何度もリフレインされるのが「Teenage Wasteland」。これが曲のタイトルかと思い込むファンがいてもおかしくありません。


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この曲を理解するには、ウッドストックでピート・タウンゼントらが目にした光景と、幻に終わったロック・オペラ『ライフハウス』(Lifehouse)についての理解が必要かも知れません。この未発のオペラ企画は、1969年の『トミー』(Tommy)に次ぐロック・オペラ第二弾として、企画が持ち上がりました。

タイトルについてですが、バーバというのは、インド出身の思想家・宗教家のメヘル・バーバ(Meher Baba/1894-1969)。タウンゼントの敬愛するスピリチャルな導師(グル)だということです。

バーバは貧者やハンセン病に苦しむ人々への慈善を含め、人々が神からのメッセージに近づくための啓蒙に、その生涯を捧げた人でした。1925年から、没する1969年までの44年間、彼は信仰上の理由で文字通り沈黙を守り、一切の会話はアルファベット板を利用するという徹底した手法をとりました。


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一方、ライリーとは、ミニマル・ミュージックの寵児(ちょうじ)、テリー・ライリー(Terry Riley/1935- )を指しています。こちらもタウンゼントが音楽的に多大な影響を受けた作曲家です。

実際、「バーバ・オライリィ」のシンセサイザーの使い方は当時、革新的でした。これまではリード楽器としてのシンセの用法は一般的でしたが、ここではオルガン・サウンドをシンセを通した上でシークエンサでドライブし、リズム楽器としての用法に特化させた使い方をしています。以後、多くのフォロワーが出現しました。ただし、ライブでの再現は困難なので、ギグではテープ同期の手法がとられています。(※Songfactsによる)

この曲にデイブ・アーバスが参加するきっかけとなったのは、キース・ムーン(Keith Moon)のアイデアでした。もともと二人が友人関係だったこともあり、「バーバ・オライリィ」のコーダにバイオリン・ソロを挿入するプランは、すんなり決まったようです。


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しかし、コンサートでは、コーダ部分はバイオリンではなく、ロジャー・ダルトリー(Roger Daltrey)のハーモニカ演奏で代用されました。コンサートは盛り上がりを見せますが、正直なところ個人的には寂しい思いもありました。

それでも、2000年のロイヤル・アルバート・ホール(Royal Albert Hall of Arts and Sciences)のチャリティー・コンサートの映像を見てみると、バイオリン・ソロが再現されていて、これがちょいと興奮モノでした。

バイオリニストに選ばれたのは、ナイジェル・ケネディ(Nigel Kennedy)。彼はクラシック畑のバイオリニストで、ポール・マッカートニー(Paul McCartney)やケイト・ブッシュ(Kate Bush)との共演でも知られています。


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「バーバ・オライリィ」は、不思議なことに欧州の一部の国でしか、シングル・カットされませんでした。それでも認知度は非常に高く、ロンドン五輪では「See Me, Feel Me」や「My Generation」と並んでメドレー演奏され、大きな喝采を浴びたのです(2012.8.12)。

キース・ムーンもジョン・エントウィッスル(John Entwistle)も、共に故人となってしまったのが惜しまれます。けれども、彼らのロック・スピリットの健在ぶりと絶大な人気を、改めて認識させられたロンドン五輪閉会式でしたね。

Roger Daltrey – vocals
Keith Moon – drums, percussion
John Entwistle – bass, brass, vocals, piano
Pete Townshend – guitar, VCS3, organ, A.R.P. synthesiser, vocals, piano

plus;
Dave Arbus – violin
Nicky Hopkins – piano
Leslie West – lead guitar
Al Kooper – organ (alternate version)




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テーマ : 洋楽ロック
ジャンル : 音楽

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No title

こんばんは。

この曲は大変好きな曲なのですが、題名についてあまり知りませんでした。
バーバのことはなんとなく知っていましたが、ライリーの方は今日初めて知りました。
情報ありがとうございました。

バーバ・オライリィ

バニーマンさん、こんばんは。
学生時代、まだまだロックの入口にいた頃、『トミー』や『四重人格』を聞いている友人がいて、この世界の深さに驚いた記憶があります。テリー・ライリーは、当時の音楽界にかなり影響力を与えたようですね。
英国のグループ、カーヴド・エアがライリーのリリースしたアルバムからの命名だという話も伝わっています。
気まぐれなブログを読んで下さって、大変ありがとうございます。


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 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

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