第117話 Ramases 『Space Hymns』 (宇宙賛歌) (1971)

今夜の一曲  Earth People


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<その2>ラマセス(Ramases)の巻


こちらは英国のグループ1971年作。邦盤にはRamases(ラマセス)と表記されています。

Ramasesという語ですが、辞書には載っていません。自称「ファラオの生まれ変わり」という事なので、本来はドイツのグループが引用したRamsesのスペリングの方が正確な表記と言えそうです。

ただし、Ramsesという語には変異体があり、Rameses、Ramesses、Raamsesなどがそれです。古代エジプト語がギリシャ語経由で英語に入ってきた関係で、様々な表記体が混在しているようです。Ramasesは辞書には載っていませんが、彼らは敢えて自らのアイデンディティとして、独自の表記体を作りだしたのではないでしょうか。


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ヴァーティゴ(Vertigo Records)からのリリース。しかも、ジャケット・デザインがロジャー・ディーン(Roger Dean)!と聞くだけで、コレクター垂涎のアイテム。おまけに、オリジナルは6面開き(six - panel fold out)の変形ジャケ(96cm×64cm)、とくれば卒倒ものですね。

このバンドは夫婦のデュオで、グレアム・ボンド(Graham Bond)とダイアン・スチュワート(Diane Stewart)並みにぶっ飛びのカップルです。

驚き情報なのは、バックバンドがホットレッグス(Hotlegs)。つまり、ケビン・ゴドレー(Kevin Godley)、グレアム・グールドマン(Graham Gouldman)、ロル・クレム(Lol Creme)、エリック・スチュワート(Eric Stewart)組。


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彼らは、直後に改名して10ccへと変態を遂げます。ホットレッグスに加えて、クレジットによると、夫のマーティン・ラファエル(Ramases)と、奥方のドロシー(Dorothy / Selket / Seleka)がVo担当。

そのサウンドを一言で形容するのは困難。「Acid Folk meets 10cc」と言いたい所ですが、これホントに10cc?という感じの謎めいた音に終始します。ある時には催眠的なトランス・ミュージック。ある時にはいかにもサブカルなヒッピー・フォーク。

かと思えば、メロウサイケや呪術的なマントラかコーランを思わせる詠唱。はたまたジーザス・フォークって感じに化けまくる。シタールが鳴り響いたかと思えば、ムーグがごにょごにょする曲もある。


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それにしても、ホットレッグスの才能豊かなこと。彼らは当時ムーディ・ブルース(The Moody Blues)のツアー・サポートにも入ったし、マインドベンダーズ(Mindbenders)がバックアップしたウェイン・フォンタナ(Wayne Fontana)ともコラボしているし、ニール・セダカ(Neil Sedaka)の『ソリテア』(Solitaire)でもプレイしながら共同プロデュースに当たっています。

彼らにとっては、ラマセスのために一肌脱ぎ、かくもいかがわしいアングラな音を紡ぎ上げるのはお茶の子さいさいの事だったでしょう。

そもそもラマセスの実態も正体不明でうさんくさい。首謀者はラマセス(Ramases)こと、マーティン・ラファエル(Martin Raphael)。しかし、これも変名のようで、本名はバーリントン・フロスト(Barrington Frost)という説もあります。


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彼は軍の体育指導員としてキャリアをスタートし、昼はセントラル・ヒーティングのエンジニア、夜はジャズ・シンガーで食いぶちを稼いでました。

そんなある日、彼に「おまえはファラオの生まれ変わりだ。」という御神託が降りたのです。奇しくも彼の妻も、同じく時を超えて生まれ変わった古代エジプトの女神である事が判明しました。

かくして彼は、宇宙の真理を人類に伝えるための伝導活動に専心します。1968年にはCBSからRamases & Selket名義で『Crazy One / Mind's Eye』をリリース。サウンドは、表面的にはアラビア音楽の域を出ない印象。CBSもよくぞリリースしたものですね。


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これは商業的には失敗。続く二枚目のシングルも敢えなく撃沈。でも、それにめげることなく、1971年にはとうとう(※)ハーヴェイ・リスバーグ(Harvey Lisberg)のメガネにかなってヴァーティゴとの契約を取り付けました。

※ハーヴェイはハーマンズ・ハーミッツ(Herman’s Hermits)、10ccの創設者グレアム・グールドマンを発掘したミュージック・マネージャー。他にマネージメントを担当したアーチストと言えば、バークレイ・ジェームス・ハーヴェスト(Barclay James Harvest)やサッド・カフェ(Sad Café)、ゴードン・ギルトラップ(Gordon Giltrap)などがあります。

かくして、ラマセスは待望のアルバムをリリースするという快挙を達成。まぁ、よくわからんヤツはヴァーティゴに任せとけって事なのか知りませんが、いかにも売れそうもないデュオと、よくぞ契約したものです・・・と、まぁ、これは賛辞ですけどね。


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しかも、あのロジャー・ディーンの意欲的な六面開きの変形ジャケ。英国本国だけでなく、スペインなど、ヨーロッパでもライナーを母国語に翻訳したりしてリリースしていたようです。勿論、日本でもリリース。リスクの多い中、ここまで大胆に莫大な金をかけた販促に出たわけで、これは七不思議の域です。

このアルバム、どれ程のセールスがあったのでしょう。1975年にはセカンド『Glass Top Coffin』までリリースしています。ただ、ラマセスの思うようなプロダクションではなかったようで、後付けのストリングスやコーラス、及びラマセスの意図を無視したスリーヴ・デザインには不満たらたらだったようです。

さて、本アルバム『Space Hymns』(宇宙聖歌)には、謎めいた賛美歌が一杯詰まっていますが、率直に書けば、ファラオとジーザスとシタールの関係は思いっきり不明です。


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10ccのグレアム・グールドマンは、後のインタビューでこう答えています。「全てはRamasesとSelketの考え出したこと。僕らは雰囲気を楽しんでただけ。」光陰矢のごとし。まぁ、今となっては、デュオとの間にあった化学反応の不可思議は、アングラ・ロック界のミステリーのひとつとなりました。

10cc(ホットレッグス)がバックバンドを担当するに至った経緯は、はっきり分かりませんが、レコーディングが行われたマンチェスターにあるストロベリー・スタジオ(Strawberry Studios)、ここのオーナーは10ccだったようです。

ラマセスこと、マーティン・ラファエルは1978年、心を病んで自ら命を絶っています。しかし、その事実は1990年代初期まで明らかにされませんでした。また、ラマセスが残した貴重な音源の大半は、残された奥方、シェルケットの新しい旦那によって焼却処分の憂き目にあってしまいました。

そんなわけで、2014年、突如としてリリースされた6枚組コンピ盤は驚きをもって迎えられました。奇跡はまさに、起こるためにあるんですね。


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Ramases and Sel - vocals
Eric Stewart - lead guitar & Moog synthesizer
Lol Creme - lead guitar & Moog synthetizer
Kevin Godley - drums & flutes
Graham Gouldman - guitar & bass guitar
Martin Raphael - sitar




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 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

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