第14話 Stackridge 『Extravaganza』  (1975)  UK

今夜の一曲 No One's More Important Than The Earthworm


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 スタックリッジの通算第四作目『エクストラヴァガンザ』は難産でした。オリジナル・メンバーがごっそり抜け、残ったのはアンディ・デイヴィス(Andy Davis)とムター・スレイター(Mutter Slater)のみ。まさにバンド解散の危機でした。

 何しろマイク・エヴァンス(Mike Evans)のヴァイオリンが、これからは聞けなくなるなんて、そりゃもう、さめざめと泣くしかないですね。でも、キース・ジェメル(Keith Gemmel)とロッド・ボウケット(Rod Bowkett)が加入して、希望の灯がほのかに見えた気がします。

 ジェメルはあれですよ、元オーディエンス(Audience)。これでスレイターとの二管編成ってヤツですぜ、旦那。それにしても新加入のボウケットはめっけもの。本来はレコーディングのためのマテリアル不足を補うための起用だったにせよ、彼が担当したB面の流れを決定づける、きらりと光るザッパ風のジャジーな展開は勲章ものですよ。

 そしてアルバムに彩りを添えたのがゴードン・ハスケル(Gordon Haskel)の「No One's More Important Than The Earthworm」。ハスケルは短期間のみバンド・メンバーとして活動したものの、リハーサルの段階で、正式メンバーにとどまる事を見合わせました。

 ハスケルがセカンド・ソロ『It Is And It Isn't』(1971)に収録した「Worms」を『Extravaganza』でカバーしたのも、両者のそんな接点があったようです。ハスケルの置き土産というか、デイヴィス&スレイターのハスケルへの恋文というべきものか。

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 この曲は『BBC Radio 1 Live In Concert』にも収録されてますが、ライブでありながら、比類なき完成度。収録データは1975 Jan 7 / The Paris Theatre, Londonとなっています。

 ハスケルが何故Stackridgeに加入しなかったかはわかりません。彼の嗜好はフォーク・ルーツだったし、あこがれのシンガーはNat King ColeやRay Charlesだったそうです。Stackridgeのプログ・フォーク/シンフォニック・フォーク路線とは方向性が違ったのでしょうか。

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 ハスケルはフリップとの腐れ縁(League Of Gentlemen)から、クリムゾンの『In The Wake Of Poseidon』『Lizard』にも参加しますが、器用なだけに、どんなバンドスタイルにも合わせられる。それだけに、ストレスをためる事が多かったのでしょう。お気の毒に。

 エクストラヴァガンザというのは、スリーブ・デザインから分かるように19 世紀の米国で流行した奇抜なコミック・オペラみたいなケッタイなショーらしいです。そのあたりがスレイターとデイヴィスのバンド復活劇のスラップ・スティックとオーバーラップします。いずれにせよ、本作の奇妙に洗練されたプログ・ポップ感覚は英国でしか生まれない質感を備えています。

 彼らは本作リリース後、因縁の『Mr. Mick』のプロジェクトに取りかかります。才能のきらめきを見せたボウケットが脱退してしまいますが、代役に迎えられたのが何と、デイヴ・ローソン(Dave Lawson)でした。オリジナル・ベーシストのジム・クラン・ウォルター(Jim "Crun" Walter)も出戻ります。

 かくして孤高を守った一大コンセプト・アルバム『Mr. Mick』は完成します。しかしスタックリッジの気宇壮大な思惑をよそに、売れないサウンドに対するRocket Recordのバンドへの仕打ちはむごいものでした。

 オリジナル・フォーマットはズタズタに引き裂かれました。2000年にDAP Recordsがオリジナル盤のリリースを敢行するまで、『Mr. Mick』はビートルズ・カバーの「Hold Me Tight」の印象が一人歩きするイメージに留まりました。

 やれやれですね。しかし、こんな事でめげてはいけません。人は打たれ強くなければ。人生、捨てたもんじゃない。そのうち、いいことありますからね、きっと。

Andy Davis / guitar, keyboards, vocals
Keith Gemmell / saxophone, clarinet, flute
Rod Bowkett / keyboards
Paul Karas / bass, vocals
Roy Morgan / drums
Mutter Slater / Vocals, flute

Michael Evans - violin
James "Crun" Walter - bass



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 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

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 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

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