第143話  Cressida 『Asylum』 クレシダ 『アサイラム』 (1971)

今夜の一曲 Munich

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悪女三題

<悪女その1>

実は、うちの近くの田んぼに、こんなかかしが立っているんです。そこを通るたび、ヴァーティゴ(Vertigo)の、かのバンドを思い出すわけです(笑)。そんなわけで私の日常と非日常は、境界線が非常にあいまいなのだ。全くめまい(!)がしますね。

クレシーダと聞いて、もひとつ思い出すのが日米貿易摩擦だったりする(?)。繊維、鉄鋼に端を発した日米の貿易戦争は、日本が国際競争力を高めるに従い、米国政財界をイラっとさせた。1970年代にはカラーテレビ、そして自動車輸出へと飛び火。その後ハイテク産業や農産品へと争点が移っていくわけです。

自動車に関しては、ビッグ3の苦境を尻目に日本車は快進撃を続け、集中豪雨的な輸出が争点となり、現地生産と輸出自主規制の荒波に激しく揉まれました。そんな中、クレシーダと言えば、トヨタが誇るマークⅡの海外仕様車のネーミングでしたね。

もちろん、グループ名の由来は、ウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare)の悲劇『トロイラスとクレシーダ』(Troilus and Cressida)から来ています。トロイの王子、トロイラスと永遠の愛を誓ったかにみえたクレシーダ。しかし、いとも簡単に他の男に寝返ってしまう彼女は、いかにも悪女のイメージそのものにみえます。

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恋愛の不条理は万古不易の摂理なのかもしれません。でも、クレシーダを悪女と称するのなら、現代ほど超「悪女」!の跋扈する戦慄の時代もないのかもしれません。

さて、我がヴァーティゴのクレシーダに話を戻しましょう。オルガンの比重が高いことで、ナイス(The Nice)の派生バンドのイメージが強いのですが、一聴して感じたのはムーディー・ブルース(The Moody Blues)やドアーズ(The Doors)だったりします。

デビュー前にはハンブルグ(Hamburg, Germany)のスター・クラブ(Star-Club)でコラシアム(Colosseum)やイースト・オブ・エデン(East of Eden)とギグに明け暮れました。その後もヨーロッパを舞台にブラック・サバス(Black Sabbath)やブライアン・オーガー(Brian Auger)、バークレイ・ジェームス・ハーヴェスト(Barclay James Harvest)とツアーに出ています。

当時の何でもありの実験的でクロス・ジャンル&ハイブリッドなサウンドを、自分流に仕上げた結果がクレシーダのサウンド。それが極上の英国然たる気品に満ちた音に仕上がった。それは当然の帰結か、それとも予想外の副産物だったのか。

<悪女その2>

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キッシング・スペル(Kissing Spell)(1992)、アカルマ(Akarma)(1999)が再発したダーク(Dark)の『ラウンド・ジ・エッジ』(Round the Edges)。こいつにはビビりました。ダークは1000枚程度のプライベート・プレス。それがゆえに不遇をかこってきたヘヴィ・サイケなレア・アイテム。

なんたってロジャー・ディーン(Roger Dean)ジャケで知られるクリア・ブルー・スカイ(Clear Blue Sky)(1970)にチビった恥ずべき過去のある私ですからね。ヒプノシス(Hipgnosis)に対バン張るようなヤバいジャケットを擁するダークの唯一作。その遅れてきた再発には、感きわまって思わずコブシを握り締めたものです。

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悪女ウィキッド・レディ(Wicked Lady)はそのダーク絡み。ハーフ・ブートだろうがスリー・クォーター・ブート(?)だろうが、思わず悶絶!失禁!!キッシング・スペル(Kissing Spell)(1994)再発が先行しましたが、その後Guerssenが正式に再発(2012)にこぎ着けました。

ウィキッド・レディの『サイコティック・オーバーキル』(Psychotic Overkill)。仕掛け人の一人は、ダークでセカンド・ギターを務めていたマーティン・ウィーヴァー(Martin Weaver)。彼がダーク以前にギターを担当していたのがウィキッド・レディです。

ところが、歯切れの良いダークに比べると、こちらはワウとヘヴィ・ファズにまみれた混沌たるハード・サイケなパワー・トリオ。

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それでも、時代を先取ったかのようなメタリック感が印象に残る曲もあったりして。邪悪なブルー・チア(Blue Cheer)と評した人もいますが、なるほどです。サイコティック・オーバーキル(psychotic overkill)というよりもナーコティック・オーバードーズ(narcotic overdose)って感じにも聞こえる。ドラマーは後に28歳で精神病院(アサイラム)行きになってしまったし、泣けます。

ウィキッド・レディはキッシング・スペルのジャケットの聖母然たる女性の印象が強かった。こんな美しい女性が「悪女」かと思うにつけ、「それはないでしょ」って感じだー。

マーティン・ウィーヴァーはGuerssenでの再発(2012)にあたり、彼なりの悪女のイメージをジャケ絵にしましたが、こちらの女性にならダマされても文句は言うまい(笑)。

<悪女その3>

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最後にもうひとり「悪女」を紹介しましょう。こちらも強烈です。ナンシー・シナトラとリー・ヘイゼルウッド(Nancy Sinatra & Lee Hazlewood)のコラボした「サマー・ワイン」(Summer Wine)。

ナンシーは父親(Frank Sinatra)のご威光にもかかわらず、パッとしないポップコーン・オールディーズ(Popcorn Oldies)を地で行く、かわい子ちゃんシンガーでした。ところが、「レモンのキッス」(Like I Do)(1962)や「イチゴの片想い」(Tonight You Belong to Me)(1962)をかなぐり捨て、悪女路線へとイメーチェン図ったのが「サマー・ワイン」(1967)でした。

その仕掛け人はプロデューサー、ソングライターのリー・ヘイゼルウッド。この男、これがなかなかデキる男。フィル・スペクター(Phil Spector)にだって負けちゃいない。

ポップ・センスの中に、なんでテープの逆回転が挿入されるのかって不思議感満載の「Sand」、七変化する弦やデュアン・エディ(Duane Eddy)のギターが心に響く「No she won't」など・・・サッカリン・アンダーグランド? カウボーイ・サイケデリア? どう呼んでも彼らの本質には届かない。

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その「サマー・ワイン」ですが、
Strawberries, cherries and an angel's kiss in spring
My summer wine is really made from all these things

・・・と女にダマされて丸ハダカにされてさえ、

And left me craving for...more summer wine
Oh..oh..summer wine

と言わせるなんて、ナンシーの「悪女」ぶりは筋金入りです。誰ですか?どうせ、ダマされるのなら、こんな女がいいなんて言ってるのは(笑)?古典落語の『鰍沢(かじかざわ)』はいかにも作り事に思えるけど、こちらはありそで、もっともっと恐いなぁ。

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 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

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