第15話 Argent  『Circus(サーカス幻想)』 (1975)  UK

今夜の一曲 Circus


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 メロトロンのコードがダイナミックに高鳴り、ジャジーなローズ・ピアノが縦横無尽に駆け巡ると、もう頭の中が真っ白。

 寄せては返すメロトロンの波に、新加入のグリマルディのテクニカルなギター・ソロが絶妙に絡んでいく。アコピのアルペジオによるインタルードを挟んで、最後の最後にヴァースが入ってくると、心拍数が限界値を越えそうになる。

 主要メンバーのラス・バラード(Russ Ballard)が脱退し、それを補うために新たに加入したのはジョン・ヴァリティ(John Verity)とジョン・グリマルディ(John Grimaldi)の二人でした。

 ラス・バラードはアージェントのヒット・メイカーであり、ギタリスト、シンガーとしても腕利きでした。その穴を埋めるため、ロッド・アージェント(Rod Argent)は相当に戦略を巡らします。ロッドはライブ・レコーディング『Encore』(1974)で、ラスの残り香を払拭します。

 ラスはストレートなハード・ポップ路線の騎手であり、テクニカルで精緻なプログ・ヘッドなロッドとは対極に位置していました。その巧妙なバランスがアージェントの売りでした。

 ロッドが探してきた二人は、確かに才能あるミュージシャンです。ヴァリティはセカンド・ギターとヴォーカルを担当し、グリマルディはリード・ギター、ヴァイオリン、チェロ、マンドリンもこなすマルチ奏者で、本作のスリーブ・デザインも担当しています。

 しかし、ロッドとラスが絶妙なバランスで組み上げた寄木細工のような『Nexus』(1974)路線を期待したファンは大きく裏切られました。「AOR入ってんじゃないの?」とか「何てこった!ロッドがハモンド・オルガンを捨てやがった」とか「ブギウギ聞くために高い金払ったんじゃないぞ」みたいな罵詈雑言が吹き荒れたんでしょうか。

 しかし、Argentの文脈を切り離せば、プログレッシブ・マインドに満ちた、火の出るようなギターとムーグのデュエル(決闘)や、ジャズ・ロック的な熱く手に汗握る展開は応えられませんね。定番のハモンド依存を脱したトライアルも悪くない。

 問題は、アージェントのワンマン・バンドになったことで、ロッドとラスが尖ってた頃のピリッとした緊張感がなくなった寂しさがある。しかし、いくらArgent & Co.となじられようが、いいものはイイ!突き抜けてプログレッシブな感覚がご機嫌だし。

 もともと、Zombies の『Odyssey & Oracle』がミリオン行っても、ロッドは頑として再編のオファーを拒否ったほど。ミュージシャンに限らず、芸術家ってのは自分のスタイルを失ったら、サラリーマンと変わらないと思う。そんなわけで、自分はロッドのこだわりと気概に「粋」を感じますね。

 サーカスとは人生のメタファ。軽業師の綱渡りのカバーアートが人の孤高と孤独をよく表現しています。ロック界にあって「サーカス」は月並みなテーマかもしれませんが、ロッド会心のコンセプト・アルバムに仕上がりました。

 でも、セールス的には大失敗。ま、それもよかよか。自分の買ったのはファクトリー・シールのかかった安モノ盤。でも、ターンテーブルから流れてきた音は、まごう事なき一級品。私の流した感動の涙は、ざっと一リットルは越えてるはず。


Rod Argent - Fender Rhodes, Mellotron, Moog Synthesizer, Hammond organ, Piano, Vocals
John Grimaldi - Lead Guitar, Cello, Mandolin, Violin, cover art
Robert Henrit - Drums, Percussion
Jim Rodford - Bass, Vocals
John Verity - Rhythm Guitar, Bass, Vocals


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 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

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