第16話 Earth & Fire 『Atlantis』  (1973)  Netherlands

今夜の一曲 Maybe Tomorrow Maybe Tonight


atlantis


 ヒッピー・ムーブメント華やかなりし頃、ヒッピーたちが聖地と崇めた街がありました。サンフランシスコのヘイト=アシュベリー地区、地中海のイビザ島、インドのゴア、ネパールのカトマンドュ、オランダのアムステルダムなどなど・・・

 そこに行けば何かがある、と思われていた時代。アース&ファイヤはアムステルダムではなくオランダ第三の都市デン・ハーグ出身でしたが、サイケなイメージに乗って1968年クリス(Chris)とヘラルト(Gerald)のクルツ(Koerts)兄弟によって結成されました。ベースにハンス・ズィーヒ(Hans Ziech)、ドラムスにトン・ファン・ダー・クレイ(Ton van de Kleij)。ヴォーカルはジェーネイ・カーフマン(Jerney Kaagman)で確定。

 似てると思ったらクリス・クルツ(g)とヘラルト・クルツ(key)の二人は双子ちゃんでしたか。

 もともとサイケ・ポップを得意としていた彼らですが、セカンド『Song Of The Marching Children』(1971)で飛躍的な進化を遂げました。しかし、今回取り上げたサード『Atlantis』(1973)は、サウンド面でもコンセプト面でも、前作のカーボン・コピーにとどまりました。

 でも、煮詰まっていようが焦げ付いていようが、イイものはイイ。重厚なリズム隊に乗って強烈に吹き荒れるメロトロンの嵐。時に切り裂くように、時にメランコリックに浮かんでは消えるジャーネイ・カーフマンの妖艶なヴォーカル。メロトロン狂患者やフィーメイル・ヴォーカル・マニアにとっては、それだけでもう昇天です。

 サウンド的にはジェネシスの『Foxtrot』(1972)や、イエスの『Close To The Edge』(1972)を相当聞き込んできたのがわかります。単なる物まねに終わらずに、英国の大御所たちとの差別化が図れたのは、二代目ヴォーカリストのジャーネイの存在感でしょう。幸いにも彼らの映像が随分残されていますが「百聞は一見に如かず」とは、まさにこの事ですね。

 本作のコンセプトは、A面を柱とする「アトランティス大陸」の隆盛と消失を扱った神話的でオカルティックな組曲。サイケデリアと失われた大陸との関連は、いくら説明しようとしても無理がきます。しかも、極彩色のスリーブ・デザインに、どうして「ガネーシャ」が描かれているか首をかしげてしまいます。

 よくわかんないですけど、そのハチャメチャさが最高にあっぱれ。脳の髄までメロトロン漬けになりながら、アース&ファイヤのペテンに騙されてみるのも愉快ではありませんか。

 しかし、それをペテンと言うなら、アトランティスを記録に残した哲人プラトンも同様にペテン師になるので、滅多なことは言ってはいけません。口は災いのもとですから。

 さて、今回取り上げたのはアルバムからカットされたシングル曲「Maybe Tomorrow Maybe Tonight」です。これはDutch Top 10で第三位にランクされ、繰り返しラジオでオンエアーされました。

 プログレッシブな感性とキャッチーなポップネスとが、バランス良くミックスされた名曲です。この曲に欠点があるとするならば、夢中になって聞きまくると腰が抜けるのが難点でしょうか。


Jerney Kaagman / lead vocals
Ton van de Kleij / drums, percussion
Chris Koerts / acoustic & electric guitars, backing vocals
Gerard Koerts / organ, piano, flute, Mellotron, synthesizers, virginal, backing vocals
Hans Ziech / bass

Producer – Jaap Eggermont (ex - Golden Earrings)


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 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

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