第26話  Lift  『Caverns Of Your Brain』  (1974) US

今夜の一曲 Simplicity


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 ディープ・サウスなプログ・ヘッド(proghead)と聞くと構えてしまうが、これが侮れない。Babylonと並び、私がUS Progを見直すきっかけになった作品の一つ。1974年にひっそりとレコーディングされていた。リリース・デイトは不明ながら、プリントされたのは500枚のみという。

 一聴するとFoxtrotやYours Is No Disgraceのイメージ。そうした意味ではGenesisやYesのフォロワーだが、独特のドライな感覚に包まれている。華麗なヴィンテージ・キーボード群の彩りや、リッケンバッカーのファットなベース・サウンドの疾走感がたまらない。

 1973年以前、ショーのオープニング曲はジェネシスの "Watcher of the Skies"だったという。彼らのカバー曲は、Yes, ELP, King Crimson, Moody Blues, Led Zeppelin, Beatles, Uriah Heap, Robin Trowerに及んだと聞くにつけ、バンドのルーツがうかがえる。

 当時最新鋭のムーグ・タウラス(ベース・ペダル)を使用するなど、メンバーたちは機材に贅を尽くした印象があるわりに、あまねく知られる事なく消えてしまった歴史がうらめしい。これほどテクとセンスに恵まれているのに。

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 その点、アメリカ南部におけるプログレの成功者の筆頭はカンサス(Kansas)でしょう。彼らも米国南部、カンザス州の州都トピカ出身。デビュー作もリフト(Lift)と同期の1974年。その後もコンスタントにアルバムをリリースし続け、NYのマジソン・スクウェア・ガーデンでヘッドライナーを務めるほどの実力者になった。

 カンザス州出身の著名人と言えば、デニス・ホッパー(俳優)やチャーリー・パーカー(ジャズ・ミュージシャン)、ジョー・ウォルシュ(ロック・アーチスト)、ウィリアム・バロウズ(小説家・画家)などが頭に浮かぶが、カンサスもそれに劣らぬ代表株にのし上がった。

 それに対し、我がリフトを負け組と称するには抵抗があるものの、知名度には格段の差があるのは否めない事実。その運命を分けたのは一体、何なのか。

 1974年のレコーディング・セッション時、リフトのバンド・メンバーは19歳。1975年、拠点をニューオーリンズ(ルイジアナ州)からアトランタ(ジョージア州)へ。ルイジアナやジョージアと言われても、一般的にはジャズやカントリー、ケイジャンのイメージでしょうか。

 しかし、実際は南部と言えども、サラダ・ボウル文化。十把一からげにラベル貼ってわかった気になるのは危険だ。彼らの志向を受け入れる土壌はきっとあったはず。

 彼らは、なぜか北米のフィラデルフィア(ペンシルバニア州)で、キャヴァーンズ・セッションの二曲を再録もしています。

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 しかし、その後ヴォーカリストとベーシストの二人が相次いで脱退。メンバー募集の広告を見て応募してきた新ヴォーカリストのローラ・ポピー・ペイト(Laura "Poppy" Pate)を含む新加入組の新しい血を入れて蘇生。しかし、ローラの私事に伴う突然の脱退で活動は先細りに。

 1977年にはブートLP (Guiness Records) が出回るが、メンバーは誰一人としてその事実を知らなかった。1990年に至って、Syn-Phonicのグレッグ・ウォーカー(Greg Walker)がマスター・テープから起こして正規再発。

 かくして、リフトは全世界に知られることになった。そしてようやく正当な評価をものにする。

 やれやれ。世の中、捨てたものじゃない。


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Chip Gremillion / Hammond B-3, Mellotron 400, electric & acoustic pianos, Moog Sonic Six, ARP Odyssey
Cody Kelleher / Rickenbacker bass and Taurus bass pedals
Chip Grevemberg / Rodgers drums, chimes, gongs, bells, percussion
Richard Huxen / lead guitar, electric & acoustic guitars, steel slide guitar
Courtenay Hilton-Green / lead vocals, flute

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テーマ : プログレ
ジャンル : 音楽

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 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

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