第28話  Chico Science & Nação Zumbi 『CSNZ』(1998) / 『Afrociberdellia』 (1996) Brasil

今夜の一曲  Amor De Muito





 30歳にして自動車事故で亡くなったシコ・サイエンス(Chico Science)。あまりに短い音楽人生。他界したミュージシャンを殊更に美化するつもりは毛頭ありませんが、良いものは良いですね。

 ブラジル音楽と聞いて、サンバやボサノヴァ、MPBを思い浮かべる人は多いでしょう。ちなみにMPBというのは、ムジカ・ポプラール・ブラジレイラ(Música Popular Brasileira)の略です。

 これは、英米のロックの影響を受けたプラジリアン・ポップスで、その起源はトロピカリア(Tropicália)の時代に遡ります。代表的なアーチストはカエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジル、ガル・コスタやエリス・レジーナ、ミルトン・ナシメントなどで、カウンター・カルチャーにどっぷり浸かっていました。

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 現在のブラジリアン・ロックシーンは、他ジャンルと活発に融合して多彩です。伝統音楽のみならず、ジャズ、ソウル、ロック、エレクトロニクス、パンク、ヘヴィメタ、レゲエ、ダブ、ヒップホップなど。

 その代表的な存在がシコ・サイエンス(本名フランシスコ・デ・アシス・フランサ/Francisco de Assis França)& ナサォン・ズンビ。彼はマンギ・ビート (Mangue Beat) の創始者であり、その旗頭と言える存在です。

 彼が実践したのは、出身地のレシーフェ(Recife)の伝統音楽である「マラカトゥ」(Maracatu)をベースに、意欲的に異種のジャンルとの融合を試みたことでしょう。その超雑食で凶暴なサウンドは類をみないユニークさ。

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 もともとブラジルの北東部(ノルデスチ)はアフリカ系住民が多く、レシフェ(ペルナンブーコ州の州都)も例外ではありません。思い切りアフロ&ラテンでプリミティヴなリズムに乗って、Chicoの歌唱が炸裂する様は圧巻。

 告白すると、曲によっては守備範囲外のジャンルとのハイブリッドもあって、こっそりスキップボタンを押してます。それを割り引いたとしても、アルバムに満ちあふれる渦巻くエネルギーはすさまじい。

 1994年夏NYのセントラル・パークでは、ジルベルト・ジルと共演。1995年にはモントルー・ジャズ・フェスにも出場するなど、勢いに乗ります。

 そんな中、今回取り上げたのは「Amor de Muito」。オリジナルは1996年の2nd『Afrociberdellia』収録。これがオリジナルのサウンドです。



 この曲は冒頭で紹介したように、Chicoの追悼コンピ盤『CSNZ』にリミックス・ヴァージョンが公開されています。この曲の幽玄なフルートと土着のリズムの呪術的な響きが脳裏を巡って離れません。

 『CSNZ』のリミックスのクレジットには、アート・リンゼイ(Art Lindsay)やデヴィッド・バーン(David Byrn)、マッド・プロフェッサー(Mad Professor)らの名前があります。Chicoがいかに注目されていたかがわかります。

 そして「Amor de Muito」のリミックスに関与したのが、マリオ・カルダート(Mario Caldato Jr.)でした。私にとってマリオのイメージは、単にビースティ・ボーイズ(Beastie Boys)のプロデューサーでした。

 ところが、調べてみると、彼はビョーク(Björk)やヨーコ・オノ(Yoko Ono)、マリーザ・モンチ(Marisa Monte)、バベル・ジルベルト(Bebel Gilberto)と言ったアーチストのプロデューサーやエンジニアとして活躍しています。これは、新鮮な驚きでした。

 1997年2月、人気絶頂のさなか、レシーフェの公演に向かう途中で命を落としたChico Science。早すぎるカリスマの死を惜しみつつ、改めてこの曲を聴いています。胸に去来するこの思い。これこそ、まさにサウダーヂ(Saudade)なのかも知れませんね。

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Chico Science & Nação Zumb 
Stuart Wylen / Guitar, Bass, Flute, Synthesizer
Danny Frankel / Percussion
Mario Caldato / Remix



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テーマ : 洋楽ロック
ジャンル : 音楽

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 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

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