第43話  Herbie Hancock  『MWANDISHI』 (1971) US

今夜の一曲   You'll Know When You Get There


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 『エムワンディシ』(Mwandishi)収録の曲。ハービー・ハンコックの悟りを開いたように瞑想的なフェンダー・ローズに、ベニー・モウピン(Bennie Maupin)の思索的なフルートが絡むスピリチャルな作品。

 それもそのはず。本作はハービーの信奉する宗教歌そのもの。Mwandishiとは、彼の信仰上のホリー・ネーム。メンバーそれぞれに、こうしたスワヒリ名がついている。宗教観を音の世界に具現化する例は、チック・コリア(Chick Corea)のサイエントロジー(Scientology)などの例が思い浮かぶ。

 それがいいとか悪いとかでなく、彼らの創作活動が、多分にこうした精神世界からインスピレーションを得ていた、という事実。ハービーが入信したのは、バスター・ウィリアムズ(Buster Williams)の勧めだった。

 ガーディアン電子版(The Guardian)によると、ハービーは現在でも(2008年11月7日付け)厚い信仰心を持っているようだ。ホテルのドア越しからも "nam myoho renge kyo" の読経が聞こえるほど。このセレブな日蓮Buddhistは携帯用の祭壇も用意していた。

 当時のハービーのインスピレーションの源泉は、こうした内的宇宙に依存する部分と、最先端のサウンドやテクノロジーをどう取り込むという執着にあった。


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 マネージャのデヴィッド・ルビンソン(David Rubinson)の助言で、シンセ・プログラマーのパトリック・グリースン(Patrick Gleeson)を起用。シンセの可能性に賭けて、彼に新しいサウンドのフロンティアを開拓するライセンスを与えた。自らのキーボードにもリヴァーブ・ユニットやステレオ・トレモロ、エコープレックス等のエフェクトを駆使する。

 この後、All-Buddhist Band "Mwandishi" を離れ、1973年にヘッド・ハンターズ(Head Hunters)で大ブレイク。その一方、ジェームス・ブラウン(James Brown)やスライ・ストーン(Sly Stone)をハービー流のフィルターにかけた、ファンキーでダンサブルな音にとまどいを覚えるファンも多かった。

 1983年『Future Shock』の"Rockit" では、ビル・ラズウェル(Bill Laswell)のプロダクションに任せて大成功。そういう意味ではエムワンディシにせよ、ヘッド・ハンターズにせよ、ロックイットにせよ、外部刺激をうまく取り込んで進化する姿は、往年のマイルス・デイヴィスを想起させる。

 ジャズからファンクへの架け橋ともいえるワーナー時代の『Mwandishi』『Crossings』『Sextant』三部作。これらはアブストラクト過ぎて、人々の理解を拒絶する部分もあるが、それはそれで捨てがたい。


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 さて、この曲。サウンド的には『スピーク・ライク・ア・チャイルド』(Speak Like A Child)(1968)を電化したイメージ。ハービーは、1963年以来在籍したマイルス導師によるレッスン最終章『イン・ア・サイレント・ウェイ』(In A Silent Way)(1969)で多くを学んだ。

 その後、新婚旅行の不在中に解雇される形で、チック・コリアに首をすげ替えられる。1969年には、古巣ブルーノートを離れてワーナーへ。結果的に『ビッチェス・ブリュー』(Bitches Brew)(1969)には参加しなかった体験が、彼を突き動かす原動力となり、マイルスをも凌駕する勢いを得て高みを目指した。

 1974年、ハービーはヘッド・ハンターズの成功により、何とあのマイルスを前座の席に据えて、コンサート・ツアーを挙行した。


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Mwandishi (Herbie Hancock) / Fender Rhodes piano
Mchezaji (Buster Williams) / Bass
Jabali (Billy Hart) / Drums
Mganga (Eddie Henderson) / Trumpet, flugelhorn
Mwile (Bennie Maupin) / Bass clarinet, alto flute, piccolo
Pepo Mtoto (Julian Priester) / tenor trombone,bass trombone

with

Ronnie Montrose / guitar
Leon 'Ndugu' Chancler / drums and percussion
Cepito (Jose Areas) / congas and timbales

Sandra Stevens / vocals
Joe Farrell / alto and tenor saxophone
Joe Henderson / tenor saxophone, alto flute
Johnny Coles / trumpet, flugelhorn
Joe Newman / trumpet
Ray Alonge / French horn
Eric Gale / electric guitar
Jerry Jermott / electric bass



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 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

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