第44話  Os Mutantes  『Jardim Eletrico』 (1971) Brasil

今夜の一曲  Tecnicolor


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 今から14年前でしょうか、ポリドールからオス・ムタンチス関連の日本盤が怒濤のようにリリースされたんですよ。恥ずかしながら、それで初めて彼らを知りました。楽器屋さんの店頭に置かれた小冊子には、ブラジルのロック・シーンの特集が組まれていて、食い入るように読みました。

 で、勿論(?)・・・全て購入しちゃいました。ヒタ・リー(Rita Lee)のソロや、トロピカリスモ(Tropicália / Tropicalismo)関連まで含めて、ごっそりと。何やってんですかね、わたくし。

  さて、ブラジリアン・サイケの旗頭とも言われるオス・ムタンチス。アルナウド・バプチスタ(Arnaldo Baptista)(key)、セルジオ・ヂアス(Sergio Dias)(g)の兄弟二人に、ヒタ・リー(vo,fl)を加えた三人を核に、盤石の体制を築いていきました。

 サイケ・ポップからプログレまで、カラフルで種々雑多な音楽性を貪欲に飲み込んだミュータント(ムタンチス)。カエターノ・ヴェローゾ(Caetano Veloso)や、ジルベルト・ジル(Gilberto Gil)らが主導した、当時の軍事政権に対するカウンター・カルチャーとも言える「トロピカリズモ運動」に色濃く関与する形で、実力をつけていきます。

 グループ名は、アルナウドとセルジオの二人が読んでいた、フランスのSF作家ステファン・ヴル(Stefan Wul)の小説にヒントを得ています。


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 そのタイトルは『La Mort Vivante』 (The Living Death)(1958)で、ポルトガル語訳の表題が『O Império dos Mutantes』(The Empire Of The Mutants)でした。フレンチ・プログレ愛好家には『Oms En Série』 (Oms by the Dozen, 1957; filmed as 『La Planète Sauvage / Fantastic Planet』 in 1973)で、お馴染みですね。


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 さて、今回取り上げた「テクニカラー」。この曲は本来、1970年11月にパリでレコーディングした『テクニカラー』に収録されるはずでした。『テクニカラー』は彼らのアンソロジー仕様で、既出曲の再録と新作の抱き合わせ盤。欧米での成功を狙って、多くの曲に英詩がつけられました。

 しかし、このアルバムは発売に至らず、お蔵入りになります。一説にはレコーディングの内容に彼らが納得いかなかったのが理由です。結局、1971年になって、その一部の曲だけが、4枚目『ジャルヂン・エレットリコ』(Jardim Elétrico)に収録される形でリリースされています。

 このアルバムは遅れてきたようなサイケ・アルバムですが、アナーキーで脳天気でぶっ飛んだ感があり、いかにもドラッグ・カルチャーの落とし子です。

 『テクニカラー』のオリジナル盤は、2000年になってようやく陽の目を見ます。曲中で歌われる、テクニカラー色の列車の窓から見える景色は、いかにもサイケデリックなんでしょうね。

 ザ・ビートルズの「Lucy In The Sky With Diamonds」の頭の文字をつなぎ合わされると「LSD」となる、というオモシロ話があります。ムタンチスも、リー(L)・セルヂオ(S)・ジアス(D)の三人の頭文字を合わせて「LSD」になるって話もあります。


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 1972年5月、5枚目『ボーレの国のムタンチスとその流れ星たち』(Mutantes e Seus Cometas no País do Baurets)リリース後、1972年9月に録音された、驚異の7分半越えのシングル曲(?)「Mande Um Abraço Pra Velha」もプログレ感満載で破天荒。

 その一方、ヒタはドラッグ漬けのアルナウドや、プログレ化するバンド・サウンドにストレスをため込んでいました。ミニムーグやメロトロンの扱い方がわからなくて馬鹿にされたこともシャクに触ってました。ヒタはバンドを脱退します。

 1973年にレコーディングされた『O A eo Z』は、ヒタが脱けた穴を埋めるべく、演奏面での凝ったアレンジで迫った渾身の一枚。英国のプログレへの憧憬がダイレクトに反映したアルバム。しかし、当然のように(?)レーベル側に拒否されてリリースされませんでした。陽の目を見たのは1992年。しかも700枚のみ。

 結局、当時の欧米のリスナーがブラジリアン・ミュージシャンに求めたのは、こうしたサウンドではなかったんです。ヒットするのは、セルジオ・メンデスのようなキラめくイージー・ポップなボッサ路線でした。

 現在も活発な活動ぶりが伝えられるオス・ムタンチス。こうして、彼らの過去に遡るタイム・ラインを追体験できる幸運に感謝したいものですね。


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Rita Lee / vocals, effects
Arnaldo Baptista / keyboards, vocals
Sergio Dias / guitars, vocals
Liminha / bass
Dinho Leme / drums

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 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

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