第46話  Raspberries   『Fresh』 (1972) UK

今夜の一曲  Let's Pretend






 エリック・カルメン(Eric Carmen)の大ヒット曲「オール・バイ・マイセルフ」(All By Myself)(1975)。この曲は、「レッツ・プリテンド」(Let's Pretend)(1972)の「発展形」だそうです。エリック自身が、1991年のGordon Pogodaのインタビューで、そう語っていました。

 「All By Myself」は、最初に中間部のクラシカルなピアノ・ソロ(間奏)から書き始めたそうです。でも、最初の4小節が完成形に至るまでには、さらに2ヶ月を要したとのこと。


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 問題は、その間奏を歌の中に組み込むことでした。次に浮かんだのがヴァース(Verse)の部分。お気に入りのラフマニノフの『ピアノ協奏曲第二番』(Rachmaninoff's 2nd piano concerto)を聞いていた時のことです。

 では、どんなコーラス(Chorus)をつけたら良いのか。ヒントを求めてラズベリーズ時代に書いた「Let's Pretend」を聞き返していました。そのコーラスの最初の部分をヒントに、ようやく曲の原型が完成します。

 まだ、歌詞と曲のタイトルが決まっていません。最終的にタイトルが「All By Myself」に落ち着くまでには、三つの候補があったそうです。インタビュアはエリックに、「採用されなかったタイトルは何だったか」と尋ねています。その返答は、「今は思い出せないけれども、12歳からの作曲の記録は全て保管しているので、きっとどこか箱の中にある」というものでした。

 ちなみに、「恋にノータッチ」(Never Gonna Fall in Love Again)も、お気に入りの『ラフマニノフの交響曲第二番』(Rachmaninoff's 2nd symphony)をベースにしています。ラフマニノフの感動的なメロディーを知らないままでいる人々に、その感動を届けたいとの思いで曲を書いたそうです。



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 エリックは「Let's Pretend」は、今まで書いた中でもベスト・メロディの一つだと語っています。この曲を作っていた頃、『TIME』誌の最新号が発刊され、その表紙にティーンの男女の写真があったそうです。

 特集記事が "Teen Sexuality"。そのカバー・フォトのメッセージ性が強力で、そのイメージをベースに曲作りをしたかった、とのこと。そこで、『TIME』誌をピアノの譜面立てに置き、イメージを膨らませたと言います。

 当時、丁度聴いていたのがビーチ・ボーイズの『PET SOUNDS』。「素敵じゃないか」(Wouldn't It Be Nice)の曲のイメージも頭にあったそうです。そういう意味では、『TIME』誌のカバー写真と、ビーチ・ボーイズにインスパイアされたのが「Let's Pretend」だと言えそうです。



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 ラズベリーズ。ポール・マッカートニー(Paul McCartney)のメロディー・センス、ビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)のハーモニー、ザ・フー(The Who)のギター・リフ、という喩えもなるほど。セカンド・アルバム『FRESH』(明日を生きよう)からのカット曲がこの「Let's Pretend」。エリックの面目躍如と言える曲です。

 発売当時、ハードロック(Led Zeppelin / the Gratful Dead)や、ブラスロック(Blood Sweat & Tears / Chicago)、プログレ(EL&P / Yes)全盛の音楽界。エリックは60年代の理想の音楽の後継者たらんと奮闘、シングルヒットを連発しました。

 バッドフィンガー(Badfinger)らと並んで、彼らがレールを敷いたパワー・ポップは、その後、チープ・トリック(Cheap Trick)、ナック(The Knack)らに引き継がれます。


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 2歳半で就学前の幼児のための音楽レッスンを始め、5歳でバイオリンを習い始め、11歳にしてピアノで作曲を始めた早熟なエリック。

 15歳でビートルズ現象を体験しますが、当時彼が憧れたのは、レナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein)や、ヘンリー・マンシーニ(Henry Mancini)、バート・バカラック(Burt Bacharach)& ハル・デイヴィッド(Hal David)などでした。16歳でバンド演奏に憧れますが、ポータブルのキーボードがなかったので、ギターを学び始めます。

 必ずしも声量のあるシンガーではありません。けれども、その甘く鼻にかかったような声質を活かしたドラマチックな歌唱は、多くのファンを魅了しました。その後、ラズベリーズでの主導権争いやトラブルから、ソロ活動に転身し成功を収めます。

 余談ですが、メロトロンが気になる人にとっては、『FRESH』収録の「オン・ザ・ビーチ」(On The Beach)はハズせないところでしょうか。でも、地味に使ってますね。エリックは「SEを導入した作曲をしたかったそうですが、エンジニアからは「そんな陳腐な・・・」と難色を示されたそうです。エリックは「波の音とかのSEが好きだから」と語っています。

 ラズベリーズのステージにはメロトロンが二台あったという情報があります。一台はサイド・ミュージシャン用でしょうか。


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 というわけで、今夜の一曲は「Let's Pretend」。アルバムタイトルは何故か「I Wanna Be With You」の邦題に合わせて『明日を生きよう』でしたね。さあ、今夜はしっかり休んで、明日もまた頑張りましょうか。(笑)


Eric Carmen / vocals, rhythm guitar, piano
Wally Bryson / vocals, lead guitar
Dave Smalley / vocals, bass
Jim Bonfanti / drums


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テーマ : 洋楽ロック
ジャンル : 音楽

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 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

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