第58話  The Millennium 『Begin』 その2 (1968)  U.S.

今夜の一曲  5 A.M.

<その2>カート・ベッチャー/栄光と挫折


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 さて、ザ・ミレニアムだ。このバンドはカート・ベッチャー(Curt Boettcher)が1966年に組んでいたザ・ボールルーム(The Ballroom)を母体とするバンド。厳密な表現ではないが、このバンドがサジタリウス(Sagittarius)とザ・ミレニアム(The Millennium)に分派する。いずれもカートを中心とするスタジオ・プロジェクトだった。

 カートはアッシャーの紹介でコロンビア(Columbia Records)に移籍し、アソシエーション(The Association)や、人気ポップ・シンガーのトミー・ロウ(Tommy Roe)のプロデュースで成功を収めていた。


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 1967年、彼が声をかけたメンツも才能豊かな人物ばかり。マイケル・フェネリー(Michael Fennelly)を含め、これまで彼がコラボしてきた有能なソング・ライターやLAトップ・レベルのセッション・マンたち。作曲やヴォーカルもお手の物。後に作家としてデビューする人物もいる(Sandy Salisbury)。かくして、カートのプロジェクトが始動した。

 しかし、こいつは難産だった。最新鋭の機材を駆使し、複雑なヴォーカル・ハーモニーを織り上げていく。注ぎ込んだ膨大な時間と資金。導入されたばかりの16chのMTRを使い倒したらしい。コロンビアは、よくも惜しげもなく資金を提供したと思う。それだけ、カートの才能を買っていたのだろう。

 この布陣で、悪いものが出来ようはずもない。だが、セールスは芳しくなかった。サンシャイン・ポップにカテゴライズするには、あまりに屈折していて難解でSEまみれ。時代が追いついてこなかったのか。


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 みずみずしい感覚で彩られたオープニング曲「Prelude」からステック&フェネリー作曲の「To Claudia On Thursday」への流れから、もう釘付けだ。

 続くカートの「I Just Want To Be Your Friend」は、非の打ち所のないサンシャイン・ポップ。彼にしてみれば、こんなのはお手の物だったに違いない。

 サリスベリーの書いた「5 A.M」は、初めて聴いた時、まさにピーター・ハウエル(Peter Howell)とジョン・フェルディナンド(John Ferdinando)のアジャンクール(Agincourt)のプロトタイプ(原型)だと感じた。ここにリー・メネラウスのボーカルが響くと、いかにもだ。ヘヴンリーで極上のポップスに思わず、うるうるしてしまう。

 カート&マロリーの「Karmic Dream Sequence No.1」では、突然琴の音色が飛び出してぶっ飛ぶ。

 商業的な成功には見放されたザ・ミレニアム。だが、シングル・カットされたステック&フェネリーの「It's You」は、本国でこそチャートに登場しなかったものの、フィリピンではNo.1ヒットになった。


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 まめにツアーをこなしていけば人気に火が付いただろう、という見方もある。しかし、彼らは南カリフォルニアの大学で、一度ギグをこなしただけだった。その辺がワン・ショット的なスタジオ・バンドの限界だったのかもしれない。

 カートはレーベルからの集中的な非難を一身に浴びた。食いぶちを稼ぐため、シングル「Just About the Same / Blight」など、ワン・オフ的な活動に取り組んだ。けれども、当時はビートルズの「Hey Jude」(1968)(9週連続でBillboard No.1)や、メリー・ホプキンの「Those Were The Days」(1968)(Billboard No.2)(UKでは2週連続No.1だった「Hey Jude」を蹴落として6週連続No.1)など、モンスター級のヒット曲が目白押しの時代だった。


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 主流にはなりきれずに、傍流に留まったカート・ベッチャーの足跡。彼を中心として、共同プロデューサで、その後一時代を築くキース・オルセン(Keith Olsen)(The Music Machine出身)や、ザ・ミレニアムの一人一人のメンバーの系図を追いかけると、実にわくわくする。

 時代の脇役を追いかけることでシーンの全体像が見えてくるというのは、あながち大げさとは思えない。それがこの時代の奥深さなのだろう。


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<その1>ブライアン・ウィルソンとカート・ベッチャーをめぐる謎へ


Curt Boettcher / Vocals, guitar,
Lee Mallory / Vocals, guitar
Sandy Salisbury / Vocals, guitar
Joey Stec / Vocals, guitar
Michael Fennelly / Vocals, guitar
Doug Rhodes / Bass, harpsichord, piano
Ron Edgar / Drums, percussion
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 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

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 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

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