第64話  Soft Machine 『Live At The Paradiso 1969』 (1995) U.K.

今夜の一曲  Have You Ever Bean Green?


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 第37話・第38話に引き続き、またまたソフト・マシーンの登場です。今夜の一曲は「Have You Ever Bean Green?」。実は、この曲、これ迄いくつかの疑問点を感じていました。歌詞はこうです。

Thank you Noel and Mitch(ノエル、ミッチ、ありがとう)
Thank you Jim for our exposure to the crowd(ジミ、大観衆の前で演奏させてくれてありがとう)
And thank you for his coattails Mike you did us proud (マイク、おかげで自信が持てたよ)
Didn't you? (ほんとだよ)

①まず、歌詞の背景にあるもの。
②次に、タイトルの謎。
③最後に、歌詞中のMikeとはラトリッジのこと?


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 ①最初の疑問はたやすく解けますね。1968年、ソフト・マシーンはジミ・ヘンドリクス(Jimi Hendrix)の前座としてUSツアーを敢行。歌詞にあるように、多くのオーディエンスの前で演奏する栄誉に預かっています。歌詞にノエル・レディング(Noel Redding)、ミッチ・ミッチェル(Mitch Mitchell)、ジミ・ヘンドリクス(Jimi Hendrix)が実名で登場します。

 ②次に「Have You Ever Bean Green?」のタイトルの謎。本来はbeanではなくbeen。でも、beanはgreenの縁語なので、恐らくユーモアでbeanと表記したのでしょう。発音も全く同じですから。

 さらに、green =「未経験の・未熟な」を意味します。これはexperienced =「経験を積んだ・経験済みの」の反意語ですね。この曲がジミ・ヘンドリクスに感謝を捧げる歌である事を考えると、すぐに連想するのは「Are You Experienced?」です。なるほど、この曲は名実共にジミの持ち歌に対するアンサーソングだったんでしょう。


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 この曲の作者はヒュー・ホッパーです。クレジットには、アレンジがロバート・ワイアットで、ロバートが歌詞を書いているようです。

 友人のN98さんから有力な情報を頂きました。驚愕のCDリリース『Robert Wyatt '98』(ロバート・ワイアット '68)(2013)のライナーによると「Have You Ever Bean Green?」は、ヒュー・ホッパーがワイルド・フラワーズ(The Wilde Flowers)時代に書いた「Have You Ever Been Blue?」という未発表曲に、ロバート・ワイアットが歌詞を付け加えて「Rivmic Melodies」の一部としてデモ録音したものだそうです。へぇ、blueとgreenの言葉遊びもあったとは深い!ちなみに「Thank You Pierrot Lunaire」も、ヒューがワイルド・フラワーズ時代に書いた「When I Don't Want You」にロバートが手を加えたもの。

 ロバート・ワイアットは、二度目のUSツアーの後、一人米国に残り、TTGスタジオ(LA)やレコード・プラント(NY)で、ひっそりと「Rivmic Melodies」を含めたデモ音源を残していました。レーベルがソフト・マシーンの継続を強く望んだのも、「Rivmic Melodies」のデモを聴いたためだとか。N98さん、ありがとう!


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 ③さて、最後の疑問点です。歌詞中のMikeとは誰なのか。ひとつ前のトラックは「Thank You, Pierrot Lunaire」で、これは間違いなく、マイク・ラトリッジの事を歌っています。それで私は「Have You Ever Bean Green?」 のMikeというのは当然ラトリッジ(Ratledge)の事だと思ってました。

 でも、そうすると歌詞に一貫性がないように思われます。Noel, Mitch, Jimと来て、最後に「Mikeのおかげで」と言っているので、これはひょっとしたらジミ・ヘンドリクスのマネージャだったマイク(マイケル)・ジェフリーズ(Michael Jeffreys)のことかも知れません。

 ソフト・マシーンとジミは、一緒にUSツアーを組んでいたので、ソフト・マシーンはマイケル・ジェフリーズと何らかのマネージメント契約を結んで、ロードに出ていたものと思われます。そう考えれば歌詞に整合性があります。マイケルはアニマルズ(The Animals)のマネージングも担当した人物です。

 さて、次回は、そんなマイケル・ジェフリーズにつきまとう黒い噂と、ジミ・ヘン暗殺の真相に迫りたいと思いますが、迫りきれないかもしれません(笑)。まぁ、自分に甘いのが自分の取り柄なので、看板倒れになってもお許しを。


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<補足①>
『Live At The Paradiso 1969』は、『Third』(1970)でジャズ・フォーマットに移行する前夜の、アムステルダム(Amsterdam)、Paradiso Clubにおける貴重なアーカイヴ。Blueprint(Voiceprint)が正式再発する以前から、ブート音源が数多く流出。ツアー時には、まだ『Volume Two』はリリースされていなかった。

 SMフリークのための聞き取りのポイントは、
①演奏が『Volume Two』の曲順と入れ替えられたのは、どれとどれ?
②クレジットの曲順に間違いがありますが、どこ?
③アルバムの演目から削られた曲は、何と何?


<補足②>
時系列にピックアップすると、
①1969年2月~3月;ロンドンのオリンピック・サウンド(Olympic Studios)にて『Volume Two』のためのリハ&録音。
②1969年3月29日;オランダ、アムステルダムのパラディソでのギグ。キャプテン・ハドック(Captain Haddock)がライヴ盤を企画して録音したが、グループは非承認。だが、約束は反故にされ、限定100枚(Michael King『Wrong Movements』に依拠)のブート『Soft Machine 69』(1971年?)(UK盤?)が市場に出回る。1989年のドイツ盤ブート『Turns On Paradiso』にも同じマスターが使われた。
③1969年4(5 ?)月;「Moon In June」後半がトリオで演奏され、ロバートの1969年秋のデモに編集される。
④1969年9月;プローブ(Probe)からSoft Machine『Volume Two』リリース。


<補足③>
公式のVoiceprint盤以外に、筆者が確認しているものは、
①『Soft Machine '69』- limited edition (Priscilla Records, UK, date unknown 1971? 1972? ) LP
②『Turns on Paradiso』- (Amazing Discs, Germany, 1988) CD
③『Live in Amsterdam 1969; Il Dizionario Del Rock - (Curcio, Italy, 1992) CD
④『William』- (Aulica, Italy, 1992) CD
⑤『Soft Machine』- (Movieplay Gold, Portugal, 1999) CD
⑥『Live at the Paradiso』- (Turning Point Music, UK, 2002) CD

上から上記<補足③>①~⑥のスリーヴ・デザイン

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Hugh Hopper / Bass
Mike Ratledge / Keyboards
Robert Wyatt / Vocals, Drums

<第37話 Soft Machine 『Volume Two』 Dedicated To You But You Weren't Listening へ>
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No title

おじゃまします。
とても興味深く拝見しました。30年以上前にこの曲を初めて聴いた頃には、情報もあまりなくてエクスペリアンスとソフトマシーンのツアーの事も知りませんでしたが、ジミファンかつワイアットファンなので歌詞の事がずっと気になっていました。ありがとうございます。

ご存知かもしれませんが、YouTubeのこの曲のコメント欄に歌詞の最後の部分についてこんな指摘がありますね。

The last of the lyrics is not "Didn't you".. it's "Lady June", adding thanks to their friend June Campbell Cramer, known as Lady June.. (see Wikipedia regarding the album "Lady June's Linguistic Leprosy").

Lady June

tttさん、こんばんは。

ご指摘の通り、Tom Macanさんが、コメントでLady Juneについて書かれています。
あの記事を書く際には、それも念頭に置きながら書きましたが、決定的な裏付けが取れなくて、この件には敢えて一切触れませんでした。

記事を書くにあたり、どうにも気になって、ネット上の歌詞サイトをいくつも訪問してみました。
が、例外なくDidn't you?の記載になっていました。
耳を澄ませると、そうとも聞こえるし、ソラ耳かもしれないしで、迷うところです。

もし、Lady Juneであるなら、もっと話題になっていいのにとも思いながらも、結局は真相は不明です(笑)。
それでも、面白い解釈だとは感じました。

Lady Juneの企画した誕生パーティーでワイアットが背骨を折る大けがをしたわけですが、二人の交流がいつ始まったかというのも、興味深いところですね。

コメントありがとうございました。


No title

はじめまして、わたくしソフト・マシーンのライヴ音源レビューをブログ上でしております。

http://softmachinelive.blog.fc2.com/blog-entry-3.html
パラディソのライヴに関する情報について当ブログ上で引用させていただきました。
事後報告になり申し訳ありませんが、素晴らしいレビューをありがとうございます。

しかしCaptain Haddockって何者なんでしょうね?

Captain Haddock

こんばんは。hyonohさんの骨太のブログ、見せていただきました。
ソフト・マシーンへの愛情の感じられるブログ、感心して読ませていただきました。
私もソフト・マシーンの大ファンで、彼らの音楽は掘り起こせば掘り起こすほど深い世界ですよね。
引用の件、承知しました。
丁寧にリンクまで貼り付けていただき、光栄です。
私もトップ・ページにリンクを貼らせて頂きたいと思いますが、よろしいでしょうか。
それにしても、キャプテン・ハドック・・・音楽業界の実業家であり、プロデューサーかと思われますが、結構危ない仕事(笑)をしていたのかもしれませんね。
ベルギー生まれのエルジェのマンガの登場人物にちなんで、かなりの酒好きだったのかもしれません(笑)
hyonohさんの今後のご活躍を楽しみにします。

No title

トップページのリンクの件、お願いします。

もともとZepやフロイドのブート漁りが趣味だったんですが、ソフツにハマって誰も子細なブートレビューをしてるファンがいなかったので始めたブログです。
キャプテンハドック、酒代を稼ぐためにしばらく前に録音したソフツの音源で小銭稼ぎ。十分ありうる話かもしれません(笑)

Re: No title

こんにちは。
それがソフツにはまるきっかけだったんですね。
確かに、ZepやFloydのブート集めはキリがないというか、際限なく続きますね。
私も、ZepやSofts、Crimson、Floyd、Genesis、Yes、Beatlesなどなど、救いようのないブート中毒者でした(笑)。
今では多くを処分してしまいましたが、かと言って身ぎれいになったわけでもなく、いつまたあの底なし沼に引きずり込まれるかわからない危うい状態なんです(笑)。


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 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

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