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第6話 Vashti Bunyan 『Just Another Diamond Day』 (1970) UK

今夜の一曲  Just Another Diamond Day 


vashti bunyan


 ああ、これを手に入れた時の胸のときめきは、初恋のそれに似てあまりに神々しかった。 2000年に Spinney から公式に再発されるまでは、海賊版まがいのCDを丁重に神棚に祀りながら、朝晩手を合わせては拝んだものです。

 カルト・フォークの最高峰の一つという表現は、ちっとも誇張ではないとは思いますが、ヴァシュティが望んでいたのは、そんな肩書きではなかったでしょうね。

 アート・スクールのドロップ・アウトだった彼女を見いだしたのは、ストーンズのマネージャだった Andrew Loog Oldham。彼の手を離れてしまったマリアンヌ・フェイスフルの後釜というよりも、アンドリューがヴァシュティの中に見いだした才能は、ジュリエット・グレコやマリー・ラフォレ、フランソワーズ・アルディに通じるものだったと言います。

 彼女が最初にデッカに残した曲「Some Things Just Stick In Your Mind」(1965年)は、ジャガー/リチャーズのペンになる曲のカバー。私のようなミーハーには鼻血モノのビデオ・クリップが奇跡的に残っていて狂喜乱舞です。

 しかし、ヴァシュティはシンガーとして、そんな位置づけに満足していたのでしょうか。彼女は New Marrianne Faithful でもなかったし、Female Bob Dylan でもなかった。かくして彼女は、自分の夢との現実との齟齬に苦しむことになります。

 1968年、ヴァシュティは馬と馬車を手に入れて、パートナーの Robert Lewis (スリーブ・デザイン担当)と、魂の自由を求めて旅に出ます。目的地としたのは、スコットランドの Isle Of Skye にある、ドノヴァンが作ったコミューンでした。二年近くかけて目的地に赴いたものの、既にドノヴァンの姿はありませんでした。

 彼らは旅を続けます。このヘブリディーズ諸島への旅の経験を活かして出来上がったのが、「Just Another Diamond Day」(1970年)でした。プロデュースは、ピンク・フロイドのアーノルド・レーンや、フォーク系の大御所たちを手がけていたジョー・ボイド(Joe Boyd)です。彼が引っ張ってきたのは、そうそうたるバックアップ・ミュージシャンたち。

 フェアポート・コンヴェンションの Robin Williamson、インクレディブル・ストリング・バンドの Dave Swarbrick と Simon Nicol。ストリングス・アレンジが Robert Kirby。カービーはまだ駆け出しだったが、既に天才ぶりを発揮しています。

 ほどなくヴァシュティは自分が身ごもっている事に気づき、音楽活動から手を引くことになりました。ろくにプロモーションも行われなかった本作は、音楽界に一石を投じることもなく、秘やかに歴史に埋もれる運命となりました。まもなく彼女は息子 Leifを 出産し、子育てに専念することになります。

 その後は歴史の語る通りです。インターネット時代になり、ヴァシュティが自分の名前をパソコンで検索してみたら、自分がレジェンドになっている事実に気づくことになったのです。

 『ジャスト・アナザー・ダイヤモンド・デイ』が素晴らしいのは、ひたすらピュアで儚い世界観が封じ込められていることでしょう。まるで、匂い立つような愛くるしい人生賛歌。そこには屈折した人生観もないし、鬱屈した無常観もありません。そこにあるのは、自然と一体となったような、まどろむようなパストラルな陶酔。

 この陶酔感を味わいたくて、私は何度、あの怪しげな海賊盤CDを大切に大切に聴いたことだろうか。アナログ起こしの出来損ないCDであっても、それだけで十分、人里離れた山間の岩屋に隠遁する世捨て人の気分だった。それが、正規発売されて未発表曲入りの本作に包まれた時には、思わず夢と現実の区別がつかなくなりかけました。加えて、LPサイズの復刻に際しては、ひがな一日眺めては、よだれを押さえるのに必死でした。

 eBayで$2000の値をつけたからと言って不思議はないオリジナル。ヴァシュティ・バニアン・・・何と罪なアルバムを作ってくれたことか。私は今夜も、廃人街道まっしぐらである。

Vashti Bunyan / Vocals, Guitar
John James / Keyboards [Dulcitone]
Christopher Sykes / Piano, Organ
Robet Kirby / String, Recorder Arrangements
Robin Williamson / Fiddle, Whistle, Harp [Irish]
Banjo – Simon Nicol
Dave Swarbrick / Fiddle, Mandolin








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 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

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