第69話  Tito Schipa Jr 『Io Ed Io Solo』 (1974) Italy

今夜の一曲 Alberto, Un Millennio Se Ne Va


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 ポップ・オペラの前作『オルフェオ9』(Orfeo 9)のスタイルを離れ、カンタウトーレのスタイルで歌い上げる1974年作。プログレッシブな感性がみずみずしい。落ち着いていて、それでいてシアトリカルな表情も見せる組曲が際立つ。

 ティート・スキーパ・ジュニアのメランコリックなヴォーカルを、心を解き放つようなオーケストレーションがしっとり包んでいく。さすが、ビル・コンティ(Bill Conti)。各楽器が自己主張しすぎず、バランスよく配置されていてアレンジの妙に舌を巻く。

 バックを固めるミュージシャンが技巧派ぞろい。一例を挙げるとdsのルジェッロ・ステファーニ(Ruggero Stefani)は、ルオヴォ・ディ・コロンボ(L'uovo di Colombo)、サマディ(Samadhi)でプレイ。もう一人のdsのウォルター・マルティーノ(Walter Martino)は、レアーレ・アカデミア・ディ・ムジカ(Reale Accademia di Musica)、ゴブリン(Goblin)、リブラ(Libra)でプレイした腕利き。


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 ギタリストのロベルト・ガルディン(Roberto Gardin)は、ラコマンダータ・コン・リチェブータ・ディ・リトルノ(Raccomandata con Ricevuta di Ritorno)、ベーシストのクラウディオ・バルベラ(Claudio Barbera)は、リブラ(Libra)でもプレイしています。

 キーボードのファビオ・リベラトーリ(Fabio Liberatori)の好演も見事だ。ファビオは映画音楽の世界でその鬼才ぶりを発揮しただけでなく、イタリア音楽界の重鎮、ルチオ・ダルラ(Lucio Dalla)のアルバムにも抜擢されています。

 本作『Io Ed Io Solo』(1974)は、前作と比べ、商業的な成功こそ収めませんでしたが、ティートの珠玉のメロディ・センスが楽しめる名篇となっています。個人的には、彼の主要な作品群の中でも、苦労の末に手に入れたという点で、最も印象深いアルバム。ピエトロ・パスクッティーニ(Pietro Pascuttini)のジャケットがこれまた渋い。

 この後、ティートはオペラ様式に戻った3枚組の大作『Er Dompasquale』(1980)をリリース。これは、19世紀前半のイタリアを代表するオペラ作曲家、ガエターノ・ドニゼッティ(Gaetano Donizetti)の「ドン・パスクワーレ」(Don Pasquale)をティート風に解釈したフォーク・ロック・バージョン。ルチオ・ダルラ参加。


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 第4作『Concerto Per Un Primo Amore』(1982)も私のお気に入り。うっとりするような色香に充ち満ちています。ティートがようやく自身のオペラ作品をモノにしたという印象。加えて、バックを固めているのは、あのHorusですから。


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 Horusは、その活動時期にはリアル・タイムでアルバム・リリースに至らなかったグループです。イタリアン・ロックがほぼ解明されてから、昔レコーディングされながらお蔵入りになった音源の発掘が始まりましたね。これもその一つで、メロウ・レコード(Mellow Records)から1993年に陽の目を見た、Horusのシングル+demo曲集(1978)です。


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 現時点での最終作『Dylaniato』(1988)は、ボブ・ディランの8曲の歌をティート自身がイタリア語に翻訳した企画ものです。アポテオージ(Apoteosi)のマッシモ・イダ(Massimo Idà)のサポートを得ています。批評家によっては1988年のベスト・ヨーロピアン・アルバムに選定されたと、ティートのHPに紹介されています。


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 その後彼は、作曲家、アレンジャーとしても活躍。映画音楽やロック・オペラを書いたり、オペラのディレクタのみならず、俳優までも務めています。また、ボブ・ディランやジム・モリソン関連本の翻訳、ラジオ作家、父でもある大御所、ティート・スキーパの伝記を手掛けたりと、まさにマルチ・タレントぶり。

 20代にして、既に免許皆伝の腕前だったティート。驚くべきは、いまだ涸れぬ創作への衝動だ。




Tito Schipa Jr. / vocals, piano
Fabio Liberatori / keyboards, Moog
Nicola Di Stasio / electric guitar
Roberto Gardin / classical guitar, bass
Mario Fales / acoustic guitar
Carlo Civilletti / bass
Claudio Barbera / bass
Roberto Cimpanelli / sax
Walter Martino / drums
Ruggero Stefani / drums


 さて、次回の音楽夜話。1968年、殺伐たるアメリカ社会に射した一条の光。私の好きなバンドの一つをご紹介します。

第35話 Tito Schipa Jr. 『Orfeo 9』 (1973)へ
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 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

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