第75話  Mellow Candle 「Feeling High / Tea With The Sun」(1968)U.K.

今夜の一曲 Feeling High


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③<メロウ・キャンドル ~ 光と影>

 第72話で棚上げだった「クロダー・シモンズ(Clodagh Shimonds)がヴァージン・レコードの社長秘書をしていたかどうか」の答えですが、正解はYesでした。

 当時クロダーは心身ともにズタボロ状態だったようです。でも、これは彼女に限った事ではありません。

 メロウ・キャンドルの歴史をひも解いてみましょう。1968年8月、1st シングル『Feeling High / Tea With The Sun』リリース。1971年12月に『Swaddling Songs』をレコーディング。1972年4月リリース。そして1973年には解散に至っています。


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 解散に先立ち、フランク・ボイランが脱退したという話をしましたが、その理由は、実は宗教がらみでした。チック・コリアの記事(第29話)でも触れましたが、サイエントロジー(Scientology)への入信です。

 宗教が人を結びつけることもあれば、逆に、人を分かつこともある。メンバーがディープに信仰にのめり込む中、ボイランは、それを嫌って脱退の道を選んだのです。その代役がスパイロジャイラ(Spirogyra)のスティーヴ・ボリル(Steve Borrill)だったわけです。バンドは再起を図ろうとしてメロウ・キャンドルの名を返上し、Grace Before Spaceと改名します。

 しかし、デラム(Deram)はバンドを後押しするでもなく、ただただ放置。おまけにメンバーの音楽性の違いも表面化してきます。マネージャを欠き、ギグもなく、活動をプッシュしてくれるはずのレーベルにも見放され、バンドは借金まみれで火だるま状態。この段階に至っては、メンバーはそれぞれの道を歩むしかなかったのでしょう。


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 アリソンは後に「10歳から共に音楽活動を共にしてきたクロダーと別れねばならなかった悲しみは、計り知れないものだった。」と述べています。

 クロダーもメロウ・キャンドルでの活動に疲れ、傷ついていました。「自分の信念や情熱に忠実でありながら、同時に誰も傷つけないことは可能なのでしょうか?」と彼女は自問しています。

 音楽業界から離れたいという無気力の中、クロダーはヴァージン・レコード(Virgin Record)の代表であるリチャード・ブランソン(Richard Branson)の個人秘書を務めます。

 そんな中、マイク・オールドフィールド(Mike Oldfield)の『ハージェスト・リッジ』(Hergest Ridge; 1974)や『オマドーン』(Ommadawn; 1975)にヴォーカリストとして招かれます。オマドーンという造語もマイクと共に考えました。こうした活動を通じ、クロダーは重い腰を上げ、音楽を続ける勇気を得たようです。


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 メロウ・キャンドル解散前後の72~76年の彼女の活動をまとめてみると、マイク・オールドフィールド以外では、シン・リジーの2nd『Shades of a Blue Orphanage』(1972)(クロダーはharpsichord, keyboards, mellotron)(当時のメンバーはPhilip Lynott、Eric Bell、Brian Downey)(このあたりの人脈は面白くて、3rd『Vagabonds of the Western World』(1973)には、2曲にJan Schelhaasが参加している)、ジェイド・ウォリア(Jade Warrior)の『Kites』(1976)等への参加など。

 1976年には音楽活動の場を求め、元メロウ・キャンドルのウィリアム・マレイ(ds)とニューヨークへ。その後1986年まで、10年間に渡ってニューヨークで活動します。

 再び英国に戻ってからは、マイク・オールドフィールドの『アマロック』(Amarok; 1990)や、Fovea Hexとして3枚のEPをリリースし、ブライアン・イーノ(Brian Eno)、ロバート・フリップ(Robert Fripp)らとコラボしていいます。

 ウィリアム・マレイはメロウ・キャンドル解散後、ケヴィン・エアーズ(Kevin Ayers )、アメイジング・ブロンデル(Amazing Blondel )、マイク・オールドフィールドの『オマドーン』、マイク・オールドフィールド & デヴィッド・ベッドフォード(David Bedford)の『オーケストラル・チューブラー・ベルズ』(The Orchestral Tubular Bells; 1975)、ポール・コゾフ(Paul Kossoff)などと活動。


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 1976年にはクロダーと共にニューヨークへ。彼の場合は、その後現地に20年滞在することになりました。

 前回まとめたように、フランク・ボイラン(b)はゲイリー・ムーア・バンドへ。アリソンとデイヴ・ウィリアムス(g)夫妻は、南アフリカでフリバーティジベット(Flibbertigibbet)を結成することになる。

 アイルランド、ダブリン出身の愛くるしいプログ・フォーク・バンド、メロウ・キャンドル。彼らのキャリアには幾多の浮沈がありました。けれども、その幽玄で儚(はかな)いサウンドは、かげろうのゆらめきに似て、かけがえのない存在に思えますね。


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 さて、次回の音楽夜話は、ライオンの赤ちゃんに授乳してしまうという、強烈な女子が登場します。

第72話 ①<ゲイリー・ムーアとメロウ・キャンドルを結ぶ糸> へ
第73話 ②<アリソンの四つの姓の謎を解く> へ 
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 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

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