第76話  Mama Lion 『Preserve Wildlife』 (1972)U.S.

今夜の一曲 Mr Invitation


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 レコードを買うのに対面販売が基本だった時代、私のような純情な青少年にとっては、女性店員からはどうしても買えないブツがあった。ボクサー(Boxer)の『Below The Belt』(陶酔のボクサー)(1976)や、スコーピオンズ(Scorpions)の『Virgin Killer』(狂熱の蠍団)(1976)の二枚などは、タイトルまでイヤらしかった。

 ママ・ライオンの『Preserve Wildlife』は、インナー・スリーヴがむき出しだったら絶対買えなかっただろう。ママ・ライオンが赤ちゃんライオンにミルクをあげるのは当たり前の行為だろうが、これはちょっと嬉しい反則技である。『Preserve Wildlife』というタイトルのイメージを安直に絵にしただけだが、それも楽しい70sだった。


Mama Lion - Preserve wildlife(1972)


 ブルージーなヘヴィ・ロックを得意とするママ・ライオンだが、このリン・ケアリー(Lynn Carey)(vo)と、ニール・メリーウェザー(Neil Merryweather)(b)の共作曲はちょっと違う趣で迫る。ジェームス・ニュートン・ハワード(James Newton Howard)のピアノに導かれるハードな曲想だが、プログレッシヴなキーボード・ソロや、ヘヴィなギター・リフに絡むリンのシャウトが心を揺さぶる。

 ママ・ライオンは、メリーウェザーのヘヴィ・クルーザー(Heavy Cruiser)にリンを加えた編成で、本作『Preserve Wildlife』を発表。翌1973年には2nd 『Give It Everything I've Got』をリリースしている。

 リンの本名はキャサリン(Catherine)で、60s半ばからTVショーや映画の女優、サントラの歌手、モデルとして華々しく活動してきた。ママ・ライオンの活動時期と重複する時期、ペントハウス・ペット(Penthouse誌のPet Of The Month)に選ばれるほどのブロンド・ビューティだった。

 彼女の音楽活動はCKストロング(C.K. Strong)(1969)に遡る。この時期の彼女の唱法は、ジャニス・ジョプリン(Janis Joplin)や、キャシー・マクドナルド(Kathi McDonald)のクローンだった。それはそれで魅力なのだが、真価を発揮するのは、後年ジャズに傾倒して円熟味を増してからかもしれない。

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Front Cover copy


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 ママ・ライオンは、カナダ国籍のニール・メリーウェザーが顔役のバンドだったが、看板娘のリンなくしては成立しえなかった。また逆に、リンの個性にメリーウェザーのプロデュースによるサイケ感とドライブ感のあるサウンドがドロリ絡んでこそ、初めてリンの歌唱も映える。

 日本盤のママ・ライオン『消えゆく太陽』は、むき出しスリーブだった。早熟な友人のCHさんは、店頭のお姉さんから普通に(?)これを買ったそうだが、半熟な私ではとても買えなかっただろう。


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 そんなむきだし日本盤シングルも価値あるけど、オリジナルのアルバム・カバーが気になる存在。動物の檻がダイ・カット(くりぬき)になったゲート・フォールド仕様がその理由だ。CHさん情報だと、日本盤はシングル・スリーブだった。

 私はお子ちゃまなので、ダイ・カットがゆえに、ますますオリジナル仕様にそそられる。困ったもんだ(私は変態か!?)。だが、ファミリー(Family)の『Bandstand』とか、レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)の『Physical Graffiti』にしても、あれじゃなきゃ価値が減じてしまう。

 さて、本作のクレジットを見てみると、裏面の集合写真は名うてのEd Caraeff。問題のインナーがMaria Del Réのフォト。そしてもう一つ気になるのが檻枠のデザインだ。クレジットにはArt DirectionとDesignの二つの記載がある。前者はBill Levy。後者はあのFred Marcelllinoだ。

 私の想像ではマルセリーノが檻枠のデザイン担当だったのではないか。そして全体のアルバム・デザイン構想がレヴィ。マルセリーノと言えばジュリアン・ジェイ・サヴァリン(Julian Jay Savarin)の『Time Before This』US Decca盤のイラストを担当した人だった。
<第20話 Julian's Treatment 『A Time Before This』  (1970) UK 参照>


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 いずれにしても、安易なシングル・スリーヴ化は、アルバム自体のコンセプトを台無しにしてしまう。これでは、Art Directionのレヴィも、Designのマルセリーノも、そして当の本人達、ママ・ライオンも涙の海に沈むだろう。

 さて、You Tube恐るべし。こんな映像がある・・French TVのジルベール・ベコー・ショー(Gilbert Bécaud Shoiw)に出演した時のものだが、これってまさかリン本人のアカウントなんだろうか。

 リンが赤ちゃんライオン抱っこしてる。あれだけダイナミックにシャウトしているのにライオンちゃんは不動の姿勢を崩さない。ライオン君は果たして何デシベルまでの騒音に耐えられるかの社会実験である。いやはや、世の騒音・雑音に動じぬ姿は、さすが百獣の王にふさわしい。最初は「ぬいぐるみかよ」って思ってたけど、最後にもぞもぞ動き出してびびった私。

 でも、ピアノ以外の奏者不詳のキーボードも聞こえるし、やっぱり今はやりの口パク疑惑か?まぁ、話題提供に事欠かない人たちですよね(笑)

 対面販売じゃなくても、今や通販で音が買える時代。顔を赤らめてレジに向かっただろうあの日のノスタルジア。遠い彼方の物語である。




Neil Merryweather - bass, backing vocals
Lynn Carey - vocals, backing vocals
James Newton Howard - backing vocals, keyboards
Rick Gaxiola - guitar
Coffi Hall - drums




 次回の音楽夜話は、全世界で1億枚以上のアルバム・セールスをあげながらも自己破産してしまった「悲劇のディーヴァ」がヒロインです。
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 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

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