第87話  Rod Stewart 『Fly Me to the Moon』 (2010) U.K.

今夜の一曲 My Foolish Heart(愚かなり我が心)


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 ロッド・スチュワートの歌で「My Foolish Heart」を紹介するのは邪道かもしれません。しかし彼の歌は実に渋くて味わい深い。この『Fly Me To The Moon - The Great American Songbook Volume V』収録時、彼は65歳だったんだ。

 この曲は1949年の同名のアメリカ映画『愚かなり我が心』の主題歌です。監督はマーク・ロブソン(Mark Robson)、主演が時の銀幕スターであるスーザン・ヘイワード(Susan Hayward)とダナ・アンドリュース(Dana Andrews)でした。

 映画のあらすじはネタバレ・サイトも一杯あるので、そちらをご覧頂くこととして、このテーマ曲について少々・・・


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 第86話で、ビル・エヴァンス(Bill Evans Trio)のヴィレッジ・バンガード(Village Vanguard)における好演を紹介しましたが、実はこの曲を楽しむにはオリジナルの歌詞がカギになります。

 恋の予感に打ち震える女心。その予感が本物なのかどうか悩む女性。迷う彼女の心をよそに、いつものように白く輝く夜の月。この恋に懸けていいのか、それとも・・・。

 「大人ですね~」などと茶化してはいけません。映画の中のヒロインであるエロイーズ(Eloise)にとっては、火傷ではすまない恋の駆け引きですから。

 原曲は作詞がネッド・ワシントン(Ned Washington)、作曲がビクター・ヤング(Victor Young)となっています。「My Foolish Heart」は、映画中でマーサ・ミアーズ(Martha Mears)によって歌われました。翌1950年になると、数多くのカバー曲が雨後のタケノコ状態。


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 1950年2月、ゴードン・ジェンキンス(Gordon Jenkins)がビルボード(US Billboard)第3位。3月にはビリー・エクスタイン(Billy Eckstine)が第6位、5月にはマーガレット・ホワイティング(Margaret Whiting)が第17位。前に続けとばかりにカバー曲が怒濤のごとし。

 大ヒットの花火が連続して打ち上がり、この曲はスタンダードのタイトルを得ます。かくして「My Foolish Heart」は一世を風靡。ビル・エヴァンスの名演も『Waltz For Debby』(1961)のオープニングを飾ります。

 スタンダード曲の楽しみは、それをカバーするアーチストの歌唱を比べられる点です。オリジナルはオリジナルで尊重しつつ、お気に入りのアーチストを新たに見つけ出す楽しみは宝探しに似てわくわくします。また自分の好きなアーチストがそれをカバーしていれば、そのセンスを楽しむこともできます。

 この曲に限っても、名唱名演は星の数。原曲の面影をとどめていない名作(迷作)、快作(怪作)まで多々。私的にはキース・ジャレット、カーメン・マックレエ、メル・トーメあたりはハズせませんね。


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 それ以外にもトニー・ベネット、ジョン・マクラフリン、ロバータ・フラック、オスカー・ピーターソン、レスリー・ゴーア、レイ・ブラウン、カーリー・サイモン、ロン・カーター、アストラッド・ジルベルト、スタン・ゲッツ、ナラ・レオン、エセル・エニス・・・

 さて、J.D.サリンジャー(Jerome David Salinger)は、自著『九つの物語』(Nine Stories)収録の短編(Uncle Wiggily in Connecticut)の映画化に伴い、その映画版『My Foolish Heart』の出来ばえに相当落胆したようです。自分の意図とは別の解釈がなされた事に傷ついたとか。以後、自作の映画化をかたくなに拒むようになります。

 映画は忘れ去れた存在とされながらも、逆に高評価を与える人もいます。興味ある方はウェブ上で探してみるのも一興でしょう。


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 最後になりましたが、ロッド・スチュワートの「My Foolish Heart」。歌詞が男性バージョンになっています。とは言ってもこれは難しい話ではなく、オリジナルの"His lips"を"Her lips"に差し替えて歌っただけのことです。

 かつてロッドは、ヒョウ柄服のブロンド・ビューティに迫られるインパクトあるアルバム・ジャケットで勝負に打って出ました。そんな彼が重ねた齢を活かし、スタンダードの名曲をしみじみと歌い上げていきます。
※『Blondes Have More Fun』(スーパースターはブロンドがお好き)(1978)

 さすがにこれはヒットしましたね。柳の下のドジョウ狙いか、出るわ出るわ続編のオンパレード・・・(笑)。

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 ロッドも妙に内省的。大人になったものです。なのに私は・・・!?いいえ、私は十分に大人だと自負してますがね。ん? 自負はあっても自覚が足りん? ほっといてくれ。


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 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

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