第88話  East Of Eden 『Mercator Projected』 (1969) U.K.

今夜の一曲 Bathers 「水浴する人びと」


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 ジャン・リュック・ポンティ(Jean-Luc Ponty)のパリ公演を目の当たりにして、胸を射抜かれるような感銘を受けた男がここにいる。イースト・オブ・エデンの立役者デイヴ・アーバス(Dave Arbus)だ。

 East Of Edenの結成は1967年に遡る。英国西部の港湾都市ブリストル(Bristol)出身の彼らは、1968年にロンドンに拠点を移し、デッカ(Decca)傘下のデラム・レーベル(Deram)と契約を取りつける。その過程においてグループの方向性を決定づけたのが、ジャン・リュック・ポンティとの出会いだった。

 1969年『Mercator Projected』(世界の投影)をリリース。アーバスの理想の音のイメージが形になったデビュー作であった。Mercator Projectionとは「メルカトル図法」を意味し、それを図案化したデビッド・ウェッジベリー(David Wedgbury)の秀逸なアートワークが素晴らしい。

 裏ジャケに目を転じると、古代エジプト風の装束に身を包んだメンバーが写真に収まっていて、これがまた怪しすぎる。彼らのサウンドを敢えてビジュアル化すれば、まぁこんな感じなのか。そのサウンドは、いわゆるサイケデリック・ロックに分類される。


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 でも、本質的にはブルース・ベースの食材をオリエンタル風味に仕上げたって感じでしょう。ただ、あくまでも西欧から見たオリエンタル趣味なので、ちょっとフィルターかかってますね。もっと限定的に中東フレーバーと言ってもよさそう。

 これがSE、サウンド・コラージュ、サイケ定番のアレンジや音像処理により、ここにロック・サイケデリアの花がぽつんと咲いた。サウンド・イメージとしてはジャズやブルース、ヘヴィ・ロックの形を借りたサイケ・ロックという表現も当たらずとも遠からずや。

 今夜の一曲「Bathers」(水浴する人びと)は、ニコルソン(Geoff Nicholson)のメランコリックなヴォーカルが魅力の一つですが、ドリーミーなヴァイオリンや、波打つようなオルガンの起伏がエキゾチック。アーバスはこのアルバムでマルチ・インストゥルメンタリストの才を存分に発揮。担当楽器は、ヴァイオリン、フルート、バグパイプ、リコーダー、サックスなどと実に絵になっています。

 アーバスのクレジットにはPerformer(Lavatory)というのもある。これって、ひょっとしてアレでしょうか。曲間で水洗トイレの「ジャー」って音のSEが挿入される・・・アーバス氏が厠(かわや)で何やらコトを為したのでしょうか。これも中東の風吹く、神聖なる秘儀の一つかもしれません。


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 スティーヴ・ヨーク(b)の活動をよーく(-_-;)調べて見るとGraham Bond Organization, Manfred Mann Chapter Three, Vinegar Joe などなど。

 East Of Edenの『世界の投影』は攻撃的な曲でさえ、アグレッシヴさとは無縁の虚脱に支配されています。目を引くようなインタープレイがあるわけではありません。なのに、アルバム全体を包む尋常ならぬフニャけた空気は、他の追随を許さぬ存在感です。

 翌1970年、セカンド・アルバムに当たる『Snafu』(錯乱)がリリースされます。アーバス、ケインズ、ニコルソンの布陣はそのままながら、ベーシストとドラマーがあっさり交代。サウンドはアヴァン・ジャズに転身。ミンガス(Charles Mingus)を素材にしたり、テープ・ループ回したり、新しいチャレンジに身を焦がした記録が、英国ロック史の一隅を彩る。

 ジェフ・ブリットン(ds)が、後にPaul McCartneyの『Venus And Mars』(1975)でドラムスを叩いていることを知ってぶ(り)っ飛んだ(-_-;)。しかも三曲のみ。あっという間にWingsを脱退してJoe Englishが後任を務めている。


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 彼らは「Jig-A-Jig」を1971年4月にシングル・リリース。実はこれがUKチャートの7位に浮上。ただし、その内容はサイケ・ファンが見て見ぬふりしたくなるアーシーで素敵すぎるトラッド。

 猫の目のように変わりゆくEast Of Edenのサウンド。一体、彼らがやりたかった事は何でしょうか。この後、ケインズもニコルソンもグループを脱退。サウンドを大きく変えたサード以降はEMI傘下のハーヴェスト(Harvest)に移籍してのリリース。しかし、人気に火がつくことはなく、ついにはアーバスも背を向ける・・・

 その後East Of Edenは、比較的人気のあったヨーロッパに活動の場を移し、リリースもヨーロッパ発とします。1996年には再編されて話題となったようですが、往年の輝きは望むべくもありません。時代の申し子は、その時代その時代で気を吐いてこそ、ひときわ輝きを見せるのですから。


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Dave Arbus /Electric violin, Flute, Bagpipe, Recorders, Saxophones
Ron Caines / Soprano & Alto saxophones (acoustic & amplified), Organ, Vocals
Dave Dufont / Percussions
Geoff Nicholson / Guitars, Vocals
Steve York / Bass guitar, Harmonica, Indian thumb piano

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 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

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