第91話  King Crimson 『Live In USA』 (1975) U.K

今夜の一曲  Lament


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 第三問を解く糸口はエディ・ジョブソン(Eddie Jobson)にありそうです。けれども、キング・クリムゾン(King Crimson)の『Live In USA』を酒の肴に、デヴィッド・クロス(David Cross)ならぬエディ・ジョブソン(Eddie Jobson)を語るのは反則技でしょう。なので、その前段として、今回の夜話ではクロスに「清き同情票」を投じたいと思います。

 『Live In USA』のスタジオ・ワークでオーバー・ダブを引き受けたのは、エディ。既にクリムゾンを脱退していたクロスのピンチ・ヒッターというわけです。

 ではなぜエディに?恐らくフリップ、或いはE.G.Recordsのマネージメント・サイドの意向で、ウェットンと共にロキシー・ミュージックでプレイしていたエディに声がかかったのでしょう。私の推測ですが、E.G.RecordsのディストリビュートがRoxy Musicが所属するIsland Recordsだったという関連もありそうです。

 でも、エディの演奏に差し替えるほどの理由とは何だったのか。これについては、2005年のDGMからの有料配信(Ronan Chris Murphyによるミックス)で明らかになりました。そこには何とエディのオーバー・ダブのないオリジナル音源が収録されていたのです。
※翌年、『The Collectable King Crimson Volume One』(2006)の「Live In Asbury Park, NJ (1974)」としても販促ルートに乗る。


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 確かにクロスはハードなツアー日程に疲れ果てていました。しかし、彼のプレイが集中力を欠いていたとか、精彩に欠けていたとまでは言いたくありません。しかし、『The Greatest Deceiver 1973-1974』のライナーには、クロスの生々しい証言が収められています。(Jul. 17.1992)

 クロスはもともと、「バルトークとコルトレーン、それにビートルズとの狭間には世界を変えるほど人々を夢中にさせる音楽がある」と信じて、ロックの世界に飛び込んできました。

 クロスの証言を続けましょう。「私のロック・バイオリンのプレイはフリップのギターに渡り合っているうち、着実に進歩した。ただ、ギグを重ねるにつれ、ウェットン=ブラフォードのリズム・マシーンが突出してきて、ますます騒がしいものになってきた。」

「ショーの半分はElectro-Voice社のモニター・システムに耳を凝らし、フリップが何を弾いているか聴くために必死だった。あとの半分は大音量の渦の中で、どれが自分の音なのかを懸命に捉えようとしていた。」


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「そんなわけで、私の技量は次第に低下していった。とにかく音がうるさすぎた。テンポはハズさないまでも、調子っぱずれのまま。私が何を言っても大抵無視される。特にビルとジョンはロックやジャズ以外のことには耳を貸そうとしなかった。」

「互いの音に耳を傾ければ素晴らしい音楽が生まれるが、相手の音を聴こうとしなければ結果は目に見えている。」

「ロックとは何か、十分にわかってきた。グループ演奏では互いのエゴを排除して音楽そのものに主導権を与えるべきだが、もしロックでそんなことをやったら君の存在は無に等しくなる。」

「クリムゾンでの活動はエキサイティングで楽しかったけれども、他のメンバーの共通の言語を私が理解できなかったことや、ギグの大音量のせいで、私はとことんフラストレーションがたまってしまい、身も心もズタズタだった。」


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 こうした証言を読むと、CrossがまさにCross(形;不機嫌な、怒りっぽい、~に腹を立てて)になるのも無理からぬことでしょう。

「『Red』(Nov.1974)のレコーディングに先立つ全米ツアーが予定された時、私はツアーに同行しないことにした。その結果、三人は私抜きで『Red』のレコーディングに臨むことになった。」

 当初ミックス・ダウン前のオリジナル音源では、クロス自身のプレイがフリップ、ブラフォード、ウェットンという凶暴なトリオの音圧に没した感があったのでしょう。それが、2005年のローナン・クリス・マーフィーの手がけたリミックスにより、クロスのプレイの存在感は増したものの、クロスの証言を知る身にとっては、痛々しい思いが募ります。

 1974年の『Live In USA』リリース時には、クロスは既にクリムゾンを脱退していました。それがために、エディにお呼びがかかったわけです。


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 エディが関わった曲は「Larks' Tongues In Aspic Part II」と「21st Century Schizoid Man」にバイオリンで、「Lament」にはエレピで、合計三曲に関与しました。エディは後に、凶暴な三人に対して繊細な楽器で対決せねばならかなかったクロスに、同情のコメントを寄せています。

 『Live In USA』のオリジナル・アナログ・リリースはThe Casino Arena, Asbury Park, New Jersey(June 28 1974)公演の演目を中心として、「21st Century Schizoid Man」についてはThe Palace Theater, Providence, Rhode Island(June 30, 1974)の演奏と差し替えられていました。

 その後、『30th Anniversary Remaster版』(2002)では、「Fracture」「Starless」が追加されます。先に触れた2005年ミックスでは曲順が修正され、「21st Century Schizoid Man」も晴れてAsbury Parkバージョン(June 28 1974)に差し戻されたのに加え、エディのオーバー・ダブも一切、排除されました。

 現時点では『40th Anniversary Series』 (2013 Mix)が最終版となっています。内容は従来のミックスを網羅しながら、ハイレゾ・サウンド(24bit/96kHz)が提示された点がウリ。でも、『USA』はサラウンド・ミックス未収録(涙;)


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 考えてもみれば、『Live In USA』は長らくCD化の波に乗りませんでした。当時にあってはライブ盤と言えば二枚組は普通だったし、いかにも中途半端なシングル・アルバム仕様の実況盤という印象がぬぐえなかった。ファンへの求心力はひとえにクリムゾンにあってはレアなライヴ体験というだけだったのかも。

 レアな擬似ライヴ体験とはいえ、消化不良の感は否めず、かつては$7とか$8とかの安価なステッカー・プライスを目にしてもスルーしてきたのに、原盤は年々レア度が増加。ですから、満を持しての2002年CD化はファン心理をうまくついたものと言えます。

 結局その後、トラック割りが変わったり、演目が追加されたり、曲順が移動したり、他日の演奏が当日のものへと先祖返りしたり、オーバー・ダブが排除されたり、フェード・アウトされていた曲が延長されてコンプリート収録になったり、DVDがバンドルされたりと、このあたりはフリップの確信犯ぶりが突出していますね。「偉大なる詐欺師」とはフリップのことだったのです。


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 自称クリムゾン通の『Live In USA』裏聴きテクをご紹介しましょう。

①「Walk On...No Pussyfooting」冒頭の「Brudford!」「Fripp!」の気色悪い嬌声を堪能する。
②「Asbury Park」における「Play some ENO!」のわがままリクエストに拳を握りしめて頷く。
③「Lament」で「Who made your violin?」と叫ぶオネエさまに微笑む。Steve Hoffman Music ForumsのThose "famous" audience members on live lps who will be forever anonymous.....(Aug 25, 2014 )(永遠に匿名であり続ける、ライヴ盤の知る人ぞ知る「名」オーディエンスたち)でも取り上げられてますよ。
④「Easy Money」が何故FOされたのかの理由を推測して「フリップもやはり人の子だった」とニヤつくこと。
⑤アンコール前の観客の拍手をミックスごとに聞き比べる分析すること。
⑥終演後のランナウト・グルーヴのエンドレスな狂騒に揉まれ、ラリパッパの発狂寸前になること。
⑦スリーヴ・デザインの謎に独善的な解釈を加えること。


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 あ、デザインはニコラス・デ・ヴィル(Nicholas De Ville)。彼のデザインは、Roxy Musicの諸作『Roxy Music』(1972)『Stranded』(1973)『Country Life』(1974)『Siren』(1975)。それ以外ではSparks『Kimono My House』(1974)『Young Persons' Guide To King Crimson』(1975)『801 Live』(1976)『UK』(1978)などなど。

 久々にクリムゾン聴きまくると、またまたあの心地よい悪夢(One More Red Nightmare)にうなされそうです。そこに登場するのはあの久米宏似の偉大なる詐欺師(Great Deceiver)でしょうか。あ、これは例のwikiネタでしたね。今ではフリップ翁のニセ画像は(残念ながら)修正されてしまいました(笑)。


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Bill Bruford - Drums, Percussion
David Cross - Violin, Viola, Mellotron, Electric Piano
Robert Fripp - Guitar, Mellotron
John Wetton - Bass Guitar & Lead Vocal


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 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

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 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

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