第92話  Curved Air  『Phantasmagoria』 (1972) U.K.

今夜の一曲  Marie Antoinette


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◆以下の設問に答えよ◆

問題1;ロックのバンド編成にバイオリンが導入されるようになった背景は何か?
問題2;ロック界におけるバイオリンの巨匠(マエストロ)を挙げなさい。 
問題3;ロック界において、バイオリニストであることの長所は何か?
問題4;ロック界に初めてバイオリンを導入したのは誰か?
問題5;ロック史におけるイースト・オブ・エデンの業績を評価せよ。
(各20点 計100点)


 エディ・ジョブソンをネタに、祝!いよいよ第三問です。もっとも彼を引き合いに出すのは極端な例と言えるかも。というのも、バイオリニストとしてだけでなく、マルチプレイヤーであること、そしてテクとセンスの三拍子が揃っていますからね。

 友人のHanakoさんなどは、「エディは三拍子どころか、類い稀なる美貌と、お得意の変拍子を遭わせて五拍子ですよ。」とおっしゃっていました。なるほど(笑)。

 エディはキャリアのスタート時点で、ローカル・バンドのFat Grappleでプレイしています。持ち歌は当時のヒットのカバー曲が中心でした。余談ながら、レパートリーの一つがEast Of Edenの最大のヒット曲「Jig-A-Jig」だったというのは興味深い必然ですね。


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 当時のFat Grappleのレパートリーにはカーヴド・エア(Curved Air)や、フェアポート・コンベンション(Fairport Convention)の曲が含まれていました。エディのことなので、「打倒ダリル・ウェイ!」とか「デイヴ・スワブリック粉砕!」のハチマキ巻いて、驚愕のスーパー・プレイを披露していたのでしょう。

 そんな折、Redcar Jazz ClubでのギグにペアリングされたのがCurved Airでした。メイン・アクトがCurved Air、オープニング・アクトがFat Grappleという構成かな。ここでCurved Airはエディの天才を見抜いた・・・という出来すぎたシナリオ。

 振り返ってみると、もともとCurved Airはメンバーチェンジの激しいグループ。3rdの『ファンタスマゴリア』(Phantasmagoria)(1972)までに、ベーシストは二転三転。3rdリリース後には、グループ最大の危機に見舞われます。サウンドの要だったフランシス・モンクマン(Francis Monkman)とダリル・ウェイ(Darryl Way)を相次いで失ったのです。
※『Phantasmagoria』はSideAがウェイ、SideBがモンクマンが主導権を握った。

 さらにドラマーのフロリアン・ピルキントン・ミクサ(Florian Pilkington-Miksa)も脱退してしまいます。ツアーの途中でしたが、残されたソーニャ・クリスティーナ(Sonja Kristina)とマイク・ウェッジウッド(Mike Wedgwood)は、さっそくグループを蘇生させる方策に打って出ます。


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 ドラムスにはジム・ラッセル(Jim Russell)。フランシス・モンクマンの担当していたギター・パートにはグレゴリー・カービー(Gregory Kirby)、そして、モンクマン&ウェイのキーボードのパートとダリル・ウェイのバイオリンの穴を埋めたのが、エディ・ジョブソン(Eddie Jobson)だったのです。

 こうしてツアーを成功裏のうちに終えます。そして満を持してリリースされたのが『エア・カット』(Air Cut)(1973)。

※2008年のBelle Antique盤CDのObiには「'73、ダリル・ウェイの後釜として、当時17歳だったエディ・ジョブソンが加入、美貌と技巧(微妙に韻を踏んでますね)を兼ね備えた天才の記念すべきプロ・デビュー作品が、国内プレス・オリジナル紙ジャケットで遂に登場!」って書いてありましたね。

 Curved Airを新しい魅力で甦らせたエディですが、彼の超然たる魅力のとりこになった男が、ここにまた一人。ロキシー・ミュージック(Roxy Music)のブライアン・フェリー(Brian Ferry)です。エディの神がかり的なプレイに感銘を受け、フェリーはエディに自分のソロ作への協力を願い出ます。


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 そこでエディはフェリーが望んだ以上の活躍を見せました。楽器演奏のみならず、作曲・アレンジを含めて・・・

 もともとエディの姉(妹)とフェリーの姉(妹)とが同じ大学のルーム・メイトだったという縁もあったようですが、そうでなくともフェリーはエディの実力に横恋慕した末のヘッド・ハント。

 しかし、エディのロキシー加入は出血を伴いました。それはイーノ(Eno)の脱退です。正確に言えば、イーノとフェリーとの間には確執があり、「イーノはフェリーに解雇された」という表現の方が正しいかもしれません。

 結果として、エディはロキシーでも面目躍如。キーボードとバイオリンを完璧にこなしただけではありません。フェリーにとっては、これまでステージで演奏してきたピアノ演奏をエディに任せる事で、自分がフロントマンとしての役割に集中できるというメリットがありました。かくしてロキシーは快進撃。
Go, Go, Go!


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 エディはロキシー以外でも、各方面で引っぱりだこ。クリムゾンの『Live In USA』に関しては先に触れた通りですが、それ以外にも、フィル・マンザネラ(Phil Manzanera)の『ダイヤモンド・ヘッド』(Diamond Head)。これは74年12月 ~ 75年1月録音。ザ・フー(The Who)のベーシスト、ジョン・エントウィッスル(John Entwistle)の『マッド・ドッグ』(Mad Dog)これは75年2月リリース。この時期はロキシーの活動と並行して大車輪の活躍。
Go, Go, Go, Go!

 そんな折、前座Roxy Music、メイン・アクトMothers of InventionのギグでFrank Zappaにツバつけられるわけですね。ロキシーの活動が頓挫した時、エディは次の活動の場を探す必要に迫られました。勿論、引く手あまた。エディはプロコル・ハルム(Procol Harum)からのオファーを蹴ってZappaに合流。

 後は端折りますが、UKを経て参加したジェスロ・タル(Jethro Tull)の『A』(1980)(実際にはイアン・アンダーソンのソロ名義がグループ名義になるという顛末)も聞き所満載でしたね。

 その後、エディは短期間ながらも、イエス(Yes)のメンバーに名を連ねます。丁度『ロンリー・ハート』(90125)(1983)録音後、トニー・ケイ(Tony Kaye)が一時イエスを離れた時期に当たります。


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 エディは、結局トニーとのダブル・キーボードをよしとせず、レコーディングにもライヴにも参加することなく、イエスを離れます。今となってはプロモ・ビデオでご尊顔が確認できるくらいです。

 エディは、栄光のキャリア街道まっしぐら。こうした弱肉強食の世界で成功するためには図抜けたセンスや技量をはじめとする不可欠な要素は幾多。でも、彼がことさら重宝されたのはバイオリンがプレイできた事に加え、テクとセンスを持ち合わせたマルチプレイヤーだった点につきます。

 バイオリニストというのは、ピアノなどのクラシック楽器を導入楽器としている人がほとんどなので、クラシックの素養もあるし、マルチプレーヤーとしての資格十分というわけです。

 実際、サイモン・ハウス(Simon House)はサード・イヤー・バンド(Third Ear Band)、バークレー・ジェームス・ハーヴェスト(Barclay James Harvest)、ホークウィンド(Hawkwind)、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)、マイク・オールドフィールド(Mike Oldfield)と引く手あまたの大奮闘。


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 他にも例をあげるならば、ベーシスト&バイオリニストのリック・グレッチ(Rick Grech)。彼の場合は、ファミリー(Family)やブラインド・フェイス(Blind Faith)、トラフィック(Traffic)などで活動。

 もともとバイオリニストの人口はギター・プレイヤーとかキーボード・プレイヤーに比べて多くありません。そうした意味で、人材バンクに登録している奏者自体に限りがある。それゆえ、ニーズがある限り失業する心配は他のプレイヤーに比べて少ない、という長所はあるかもですね。

 ここで、思い出すのが、ロックンロール・サーカス(Rock and Roll Circus)。ジョン・レノン(John Lennon)、エリック・クラプトン(Eric Clapton)、ミッチ・ミッチェル(Mitch Mitchell)、キース・リチャーズ(Keith Rchards)という錚錚(そうそう)たるメンツを集めたスーパー・グループ、ダーティ・マック(The Dirth Mac)(1968)が編成された時のこと。

 何らかの必然があって集まったメンバーたちですが、「ギターの席は決まっているから、あんたはウチにはいらないよ」的な事が起こっています。キース・リチャーズは、勿論ギタリストですが「ギタリストはいらないから、バンドに入りたいんだったら他の楽器に回ってね」って感じ?


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 そこで、彼はベースに回ることになる。他の楽器が出来るなら、それはそれで雇用は確保されるってわけですね。

 ま、こうしたことが起こりにくいのがバイオリニストの世界でしょう。とりわけ、実力とセンスがありさえすれば、バイオリニストは、実に重宝される花形ポジションなわけです。

 ってなわけで、先を急ぎましょうか。Go, Go, Go, Go, Go!


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Sonja Kristina – lead vocals, acoustic guitar
Francis Monkman – keyboards, electric guitar, percussion
Florian Pilkington-Miksa – drums, percussion
Darryl Way – violin, keyboards
Mike Wedgwood – bass, vocals, acoustic guitar, electric guitar and percussion



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 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

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