第93話  Don "Sugarcane" Harris, Jean-Luc Ponty, Nipso Brantner & Michał Urbaniak  『New Violin Summit』 (1972) Germany

今夜の一曲  Valium


NVS.jpg


◆以下の設問に答えよ◆

問題1;ロックのバンド編成にバイオリンが導入されるようになった背景は何か?
問題2;ロック界におけるバイオリンの巨匠(マエストロ)を挙げなさい。 
問題3;ロック界において、バイオリニストであることの長所は何か?
問題4;ロック界に初めてバイオリンを導入したのは誰か?
問題5;ロック史におけるイースト・オブ・エデンの業績を評価せよ。
(各20点 計100点)

<前編>

 まぜっ返すようですがね、正直なところ問題4の答は、あってないようなものでしょう(笑)。その理由は、ロックの範疇(はんちゅう)を定義づけることが難しいからです。音楽のジャンル分けなんて、そんなものでしょう。

 あるバンドがバイオリニストをメンバーに据えているからと言って、そのバンドが果たしてロック・バンドなのかどうか、グレイ・ゾーンの場合もあるでしょうし。それに、アルバム内の曲想にバラエティがあれば、ロックっぽい曲にバイオリン演奏がなくて、他ジャンル臭ぷんぷんの曲でバイオリン演奏が聴ける、といったケースもあるでしょう。

 これまで例に挙げてきたバイオリンの巨匠たちは、意図したわけではないにせよ、ほとんどが1970年代に活躍したアーチストでした。もっと時代を遡ってみると、ロック系のどんなアーチストがバイオリンを使ってきたのでしょうか。


Duke-Ellington-Duke-Ellingtons-J-542550.jpg


 第89話The Beatles『Revolver』(1966)で触れましたが、バッキングとしてのストリングスの導入はビートルズの「Yesterday」(1965)まで遡ります。でも、これはロックと言うより、あくまでも室内楽タッチのラヴ・バラード。

 「Eleanor Rigby」(1966)にしても、弦楽器が楽曲をリードするというより、サポートの意味合いが強かったですね。以降、ロック・バンドがオーケストラ・パートの一部としてストリングスを起用する例も、枚挙にいとまがありません。

 ただ、純粋なロックの文脈の中、積極的なリード楽器としては・・・と考えると先駆者が誰だったのかは気になるところです。

 当然、バイオリニストを起用した他ジャンルの音楽はいくらでもあります。たとえば、ケイジャン、ブルーグラス、ジャズ、カントリー、ブルース、ケルト音楽などなど。


violinsummit.jpg


 ジャズにおけるバイオリンの歴史も長い長い。ロック人から見たジャズ・バイオリニスト筆頭の一角はジャン・リュック・ポンティ(Jean-Luc Ponty)あたりでしょうが、彼も60年代初期から息の長い活動をしていますよ。

 ジャズ・バイオリニストと言われて頭に浮かぶのは、やはりステファン・グラッペリ(Stephane Grappelli)あたり? 他にも、巨匠と言われたのが、スヴェン・アスムッセン(Svend Asmussen)、ジョー・ヴェヌーティ(Joe Venuti)、スタッフ・スミス(Stuff Smith)あたりかな。

 個人的に好きなのは、もっと新しいところでノエル・ポインター(Noel Pointer)だったりする。渋いところでは、ジャンゴ・ラインハルト(Django Reinhardt)と共演したクラシック→ジャズ畑のミッシェル・ワーロップ(Michel Warlop)も忘れられません。

 デューク・エリントン(Dule Ellington)が企画した『Jazz Violin Session』(1963)がスポットを当てたのはStephane Grappelli、Svend Asmussen、そしてペット兼務のRay Nance。


6952.jpg


 そんな流れもあってか1966年9月、スイスのバーゼル公演を捉えた『Violin Summit』では、エリントンの「 It Don't Mean A Thing」が熱演されました。Stephane Grappelliを中心に、Stuff Smith、Svend Asmussen、Jean-Luc Pontyが一同に会した名演の興奮を、余すこと無く伝えてくれる名盤。ちなみにピアノはケニー・ドリュー(Kenny Drew)さま。

 忘れてはならないのが、ロック・サイドから語るに燦然と煌めく『New Violin Summit』。1971年11月、ドイツのベルリンにおける公演収録となっています。こわ~いメンバーが揃ってますよ。

 Jean Luc Ponty、Michal Urbaniak、Don "Sugarcane"”Harris、Nipso Brantnerの四人のバイオリニスト+Robert Wyatt(ds)、Terje Rypdal(g)、Neville Whitehead(b)、Wolfgang Dauner(key, SE)。

 ※ロバート・ワイアット「ステージではドラムがとんでもない所に置かれていて、バイオリンの音が聞こえなかった。悪夢だよ。」(Wrong Movements; A Robert Wyatt Historyより)


8268317.jpg


 しっかし、考えてもみれば、ワイアットはソフツを脱けてアヴァン・サイケの真骨頂『End of an Ear』(1971)のリリース直後。同作にはホワイトヘッドも参加していたし、ダウナーはユーロ・アヴァン・サークルにどっぷり。このリズム陣+αをバックに四人のバイオリニストを配するクソ度胸ある人物って一体、何者・・・?

 しかもだよ、一見まともそうに見えるポンティですら、フリー・ジャズ作『Open Strings』(1971)をレコーディングしたばかり。こうした符牒を考え合わせれば、鬼が出るか、蛇が出るか、悪霊に取り憑かれるか、魔性の者に魅入られるかだ。

 ジャズ+サイケ+アヴァンギャルドの地獄の闇鍋がぐらぐら煮え立つような、そんなイベントに、そもそも誰が金を注ぎ込むのか。今では考えられないような悪しき良き時代だぜ。

 実は、仕掛け人はヨアヒム・ベレント(Joachim E. Brendt)。MPS-BASFレコードのプロデューサだった人。この男がイベントを企画し、一手に人選を担った。四人のバイオリニストに声をかけ、サポートのメンバー集めに狂走した。


etcetera01.jpg


 そんな流れでワイアットに白羽の矢が立つ。リピダルにしても、透明感あふれる栄光のECM時代前夜だった。当時はまだまだ熱にうなされるように、サイケ発、ジャズ・ロックとフリー・ジャズの狭間を行き来していた。

 ベレントの気まぐれはワイアットらにとっては魅力的なオファーと映り、イベントに向けてメンバーたちを突き動かす。10月末から本番の11月7日にかけて、ワイアットはハリス、ダウナー、ホワイトヘッドらと、ドイツ短期ツアーに出る。たとえば、11月4日にはハリス、ダウナー、ホワイトヘッド、ワイアット、リピダル(フォルカー・クリーゲル?)らと怪しいギグに走っている。

 抜け目ないベレントのおかげで、こうして二枚組アルバムとしての記録が残っているんでしょう。何はともあれ、感謝・感謝ですね。

 さてさて、ジャズに限らず様々なカテゴリーで重宝されてきたバイオリンの音色。当然ポップスにも流用されていきます。その勢いに乗って、ロック・サイドでもバイオリニストに熱いラヴ・コールが送られるようになっていく。


openstrings.jpg


 テクノロジーの進化はバイオリンのエレクトリック化とも呼応し、それはとりもなおさずロックの大音響に対抗するための追い風になりました。同時に、PAに通す前にエフェクターをかますのも容易になり、フェイザー、ワウ、リヴァーブ、ファズ、ディストーションなどの音の加工のみならず、ボリューム・ペダルとも連動してメリハリのある音宇宙が出現したのです。

 そんなわけで(どんなわけで?)次回はいよいよ問題4<中編>に突入ですよ。期待しないで待って頂ければ、僥倖(ぎょうこう)に巡り会うかもですよ・・・(笑)


MI0002470769.jpg



Don 'Sugar Cane' Harris - Violin
Jean-Luc Ponty - Violin
Michal Urbaniak - Violin
Nipso Brantner - Violin
Neville Whitehead - Bass
Robert Wyatt - Drums
Terje Rypdal - Guitar
Wolfgang Dauner - Keyboards



スポンサーサイト

テーマ : プログレ
ジャンル : 音楽

コメントの投稿

非公開コメント

ゲスト・ブック
Profile

ticca

Author:ticca
 音楽ネタを中心とした雑記帳です。

 60年代後半から70年代にかけてのワールドワイドなロック、ポップス、プログレ、アシッド、サイケ、フォーク、ジャズロック、ジャズなどの話題を主に、ひっそりメモってます。

 それぞれの記事はその時々のフィーリングで書いていますが、基本形はある曲をきっかけに感じた雑感が題材になっています。

 私は単なる音楽愛好家ですので、記事に関しては、思い込みや勘違いがたっぷりあることかと思います。その点はご容赦願います。もし、お気づきの点があれば、ご指摘下さい。

 個人的に思い入れのあるものを主に綴っていますので、マイナーかつ気まぐれなセレクション、お許し下さい。

 それでは、今宵の音楽夜話におつきあい下さい。

カレンダー
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
カテゴリ
最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR